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わくわくヒューマンスキルコラム
第4回 母に理解された日
執筆:田中淳子

  研修の仕事というのは、「人と人とのつながり」で成り立つものだと常々考えています。講師も一生懸命進行しますし、受講されている方もできるだけ多くを学びとろうと必死になってくださる、そういう相互作用があった時に期待以上の成果が生まれるように思うのです。


  さて、人と人とのつながりといえば、研修内容が講師と受講者との関係だけではなく、受講された方とそのご家族といったつながりにまで広がることがあります。
  「まさか企業の研修でそんなことが?」とお思いになるかもしれませんが、本当にそういうことが時々起こるのです。


  「プレゼンテーション・スキル実践演習」という研修をある会社様向けに実施した時のことです。入社3年目くらいの若手SEの方たちが、顧客先で上手にプレゼンテーションできるようにという意図で企画された研修でした。講義は少なく、ひたすらプレゼンテーション演習を行い、何度もビデオ撮影をしてはフィードバックするというスタイルをとりました。1日目に撮影したビデオテープは、その場で見ることができなかったため、研修時間終了後に会議室で見るか、自宅に持ち帰って見てくることをお願いして解散しました。2日目の朝、「ビデオはご覧になりましたか?何かご自分で気づいた点、発見した点はありましたか?」などと振り返りコメントを拾っていきました。以下のような感想が出てきました。


  「自分で思った以上に堂々としゃべっていたので、安心した。」
  「アイコンタクトを取ったつもりだったけれど、左の方しか向いていなかった。」


  そんな中で、お一人が照れくさそうに微笑みながら、こんな話をしてくださったのです。


  「会社で見る時間がなかったので、自宅に持って帰って見ました。両親と一緒に暮らしているので、親が寝静まるのを待って居間でそーっとビデオを見ていたら、母が起きてきて、一緒に見る羽目になったんです。」


  彼女は、自分の担当しているシステムについて顧客に提案するという設定のプレゼンをしました。


  お母様がお部屋に入ってこられてもやめるわけにはいかず、最後まで二人でビデオを見たそうです。「恥ずかしいなあ」と思っていた彼女に、お母様はこうおっしゃいました。


  「あなたも頑張っているのね。いつもどうしてこんなに夜遅くに帰ってくるのかしら、と思っていたけど、ホントに頑張っているのね。」と。


  顧客に難しいことを説明することも仕事の一つで、これだけの技術や知識を得るために日々頑張っていること、遅くまで仕事に打ち込んでいることをお母様なりに理解なさったのでしょう。
  この話を聞いてほろっとしました。プレゼンテーションの研修は、プレゼンテーション・スキルを向上することが目的ですが、こんな風に親子の会話のきっかけになったり、家族に自分の仕事を理解してもらう材料になったりすることもあるのだなと嬉しく思いました。


  「プレゼンテーション・スキル実践演習」(X510J)では、仕事関連の話題でプレゼンテーションをしていただきます。必ず、ビデオ撮影もします。お一人分ずつ別々に収録するので、ご自分のビデオテープを持ち帰ることができます。
  このテープを封印してしまい、お蔵入りにしてしまう方もいるようですが、講師としては、是非、早いうちにご覧いただきたいと考えています。というのは、研修に参加した直後にフィードバックの効果が最も出やすいからです。時間が経てば経つほど見る気持ちも薄れます。また、随分後になって見ても、「どこがよかったか、どこが改善点として指摘されたか」を思い出すのも難しくなります。
  時々、「こんな恥ずかしいものは見られない」とおっしゃる方がいらっしゃるのですが、人に普段見せている姿なのですから、一度自分の目でチェックすることは意味のあることだと思います。もしどうしても"しらふ"で見るのがイヤだとおっしゃるなら、ワイン片手に見てもよいのです。


  気をつけているつもりのことはきちんとできていて、まさか自分はこんなことしていないだろう、と思うような意外な行動や動作をしている姿に驚くこともあります。
  でも、ビデオの中の自分を客観的に眺めて新たに気づくことも多いのです。
  家族との会話の材料になるかもしれないビデオです。一度挑戦してみませんか?


*「プレゼンテーション・スキル実践演習」では、ビデオ撮影をいたします。

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[プレゼンテーション][2006年1月23日配信]

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