わくわくヒューマンスキルコラム
第51回:緊張への対処法
執筆:高橋 俊樹
「どうしよう、なんか緊張する」
「のどがとても渇くんですよね」
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
「上手く行くかどうか不安で・・・」
このセリフ、私達インストラクターがコース開始直前にオフィスで同僚と交わしている会話の一例です。これをご覧になった皆さんは、まだ講師経験が少ない講師同士の会話だろうと思ったかもしれませんが、実は全員ベテランの講師なのです。
皆さんも仕事を進めていく中で、緊張してしまう場面がたくさんあることでしょう。お客様先での大掛かりな提案やプレゼンテーション、社内での大勢が参加する会議や勉強会での発表。プライベートでは知人の結婚式で依頼されたスピーチなど。
そのような場面で、「緊張しなければいいのに」「自分は必要以上に緊張して困ってしまう」と言う方も多いと思います。そして緊張した結果、以下のようなことが起こりがちです。
・ 一番言いたいことを忘れてしまった
・ 聞き手の反応を見ることができず、資料ばかり見てしまった
・ 話し方がたどたどしくなり自分でも何を言っているのか分からなくなってしまった
私達が開催していているプレゼンテーション・スキルの研修を受講される方もほとんどが、上記のような悩みを持っています。「どうすれば緊張しないで済むのか、その方法を知りたい」とおっしゃっています。緊張しないで済めば、提案も落ち着いてできるでしょうし、大勢の前で自分の言いたいことを漏らさずに伝えることもできるからです。
受講された方に、緊張に対してどのようにしているのかを尋ねると、様々な工夫をされているようです。
・ 手のひらに人と書いて飲み込む(おまじない系)
・ 深呼吸をする(リラクゼーション系)
・ 喝を入れてもらう(気合系!)
これらも確かに効果的です。しかし、問題は「緊張」をしてはいけないもの、悪いものと考えて「なくそう」としていることにあります。大切な考え方は「緊張はなくすものではなくコントロールするもの」だと言うことです。
大勢の前でも落ち着いて話している人を見ると驚かれるかも知れませんが、話し慣れている人でも緊張は大なり小なりするものなのです。慣れていない人との一番の違いは、緊張をコントロールできるか、できないかと言う点です。
ではどのようにしたらコントロールできるのでしょうか?ポイントは2つあります。
まず1点目は「緊張」の捉え方です。そもそも緊張すること自体は悪いことではありません。緊張するのは、「うまくやりたい」「成功させたい」などの気持ちがあるからこそ、生じるものです。ですから、自分が緊張しているなと感じたら、「なくそう」と捉えるではなく「緊張しているってことはちゃんとうまくやりたいと思う気持ちの表われなんだ!」と捉えることが大切です。
2点目は自分にとっての緊張の原因を明らかにして本番でのリスクを軽減できるような対策を講じることです。例えば、分からないことを聞かれたらどうしようということが緊張の原因なら、出来る限りの想定される質問をあげて練習することも大切です。うまく話せないことが原因なら、何度もリハーサルを重ねることで不安の要因を減らすことができます。ただ漠然と「緊張してしまう!どうしよう?」と思うのではなく、自分は「何に対して緊張するのか」という視点で原因を考えてみましょう。
上記2点に加えて、あとはできるだけ場数をこなすことです。大勢の前で話すチャンスがあったら「自分は緊張するとうまく話せないので遠慮します・・・」と断るのではなく、積極的に買って出て、緊張の場面をたくさん経験するとコントロールする術も身に付きます。経験を積むことで最初はできなかったことも徐々に慣れてきてできるようになります。千里の道も一歩からと言われるように諦めずに経験を積み重ねて行くことが大事です。
「プレゼンテーション・スキル実践演習 ~説明力を身につけ、説得力あるビジネスパーソンになる~」
「プレゼンテーション・スキル 企画・作成編 ~ロジカルな構成と説得力ある資料作成~」
「プレゼンテーション・スキル 実施編 ~わかりやすい話し方と相手を動かす説明力~」
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実はこれを書いているのは今年最後の研修の前日です。すでに緊張でドキドキして冒頭のようなセリフを私も周囲につぶやいています。しかし、この緊張を上手にコントロールしてお客様の期待に応えられる研修になるように準備をして今年を締めくくりたいと思います!
尚、少し早いご挨拶になりますが、この「わくわくヒューマン・スキル」コラムをお読みくださっている皆様、ありがとうございました。また来年も「わくわくヒューマン・スキル」コラムをどうぞよろしくお願いいたします。
高橋 俊樹(たかはし としき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。
1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、2001年より現職。プレゼンテーション、ネゴシエーション、コーチングなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
ITpro skillup 2007年3月より連載中「コミュニケーション・スキル講座」
[プレゼンテーション][2009年12月18日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第44回:人を動かし効果を生み出すプレゼンテーション
執筆:岩淺こまき
以前、4社から同種製品のプレゼンテーションを受けたことがあります。コンペです。その時、こんな風に思ったことが記憶に残っています。
「A社の内容は理解できなかったが、気持ちだけは伝わった」
「B社の内容は理解できたが、検討しようとすら思わなかった」
「C社の内容は何が言いたいのかさっぱりわからなかった」
「D社の内容はぜひ検討しようと思った」
もう少し具体的にあの時のことを思い出してみると、4社の違いは以下のように整理できることがわかりました。
A社は論理的な説明ではなかったものの、「何か伝えたいのだな」という一生懸命さは感じました。B社は、資料も大変論理的に作ってありましたし、説明もとても論理的でした。しかし、「ぜひ!」という気持ちを感じ取ることが出来ませんでした。C社の場合、気持ち以前に「何を言いたいのか全くわからない」プレゼンテーションでした。資料もありものを組み合わせたようなつくりでしたし、話し方も洗練されていません。
「ぜひ検討しようと思った」D社は、論理的な資料で説明も論理的であっただけでなく、プレゼンタ自身の「ぜひやりたい」「採用してください」という思いや一生懸命さがひしひしと伝わってきました。内容もわかりやすかったのですが、それ以上に「そんなに思ってくれるなら」と心が動かされるようなプレゼンだったのです。
「内容も気持ちも伝わらなかった」C社は論外として、提案者の立場になった場合、D社のように「ぜひ検討しようと」思わせるプレゼンテーションをしたいと私も思います。
私が担当するプレゼンテーション研修の受講者からはよく、「論理的な資料を作りたい」「論理的に説明したい」という声を聞きます。確かに、論理的な資料を作成し、プレゼンタも論理的に話すことは、必要条件です。 ただし、論理的でさえあれば良いか、というと、そうではありません。
B社の「内容は理解できたが、検討しようという気持ちにならなかった」という結果を考えてみます。私はプレゼンタの話を「聞き」、話の内容を「理解」しました。それなのに、そこから「思い」を感じ取ることができなかったため、「検討しようという気持ちになれなかった」のでした。たしかに、「実績例が示された」り「具体的データが提示された」りしていて、内容面は明確に理解することができました。しかし問題は、プレゼンタの熱意や人柄といった部分です。声の力や表情、「自分の言葉で語っているか」といった部分からプレゼンタの思いを感じ取ることができなかったのです。その結果聞き手であった私たちは「うーん・・B社のプレゼンは心に響かないね」と思い、お断りすることになりました。
気持ちだけが全面に出ているならよいというわけでもありません。
A社の「内容は理解できなかったが、気持ちは伝わった」というケースです。資料にプレゼンタ側の思いが記載されていたり、熱意を込めた説明をしたりしたので、「何とかしたいのだな」「協力しよう、いいものを提供しよう」と思っているのだな、ということだけは伝わりました。ところが、残念なことに、内容そのものを理解できませんでした。具体的な例や私たち聞き手の立場に立った解説(私たちにとってのメリットは何かなど)といった肝心の内容が薄かったため、内容が理解できぬまま、気持ちだけが先走る結果になったのです。
聞き手をプレゼンタの意図する方向に動かそうと思ったら、資料もプレゼンタも「論理的」であることが求められます。さらに相手の心に響く「気持ち」が欠かせません。「論理」と「気持ち」は、どちらも揃っていて初めて結果につながります。
プレゼンテーションを準備する場合は、まず「論理的」に内容を組み立てます。資料を作るだけでなく、論理的に話せるよう練習を重ねます。 その上でさらに自分の気持ちがきちんと伝わるような工夫も必要です。
「論理」と「気持ち」。両方を伝えられるプレゼンテーションが、D社のように「ぜひ検討しようと思った」という結果を生み出すのです。
弊社の関連コース
・ プレゼンテーション・スキル企画・作成編(HSC0032G)
・ プレゼンテーション・スキル実施編(HSC0033G)
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岩淺こまき(いわあさこまき)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育トレーナー。
1997年、システム販売会社に就職し、営業技術支援および導入企業向けの研修を担当。
人材紹介会社にて中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て2007年より現職。
プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
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[プレゼンテーション][2009年5月25日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第16回 聞き手のこと、考えていますか?
執筆:森 美緒
私が利用している駅前には毎朝入れ替わりで、各政党の方が立っています。
看板を出したり、マイクで演説をしたり、新聞のようなものを配ったりしています。出勤前の通行者は私も含めて、「いつも政党の人たちがいるな」と思いつつも、演説に耳を傾けることもなくどんな人物か見ることもせず通り過ぎて行きます。
活動をしている人は皆、大音量で何かを訴えているのに、その中にたった一人、目の前を通る人へ「おはようございます」と挨拶だけをする人がいます。一人ひとりに声をかけるような調子なので、思わずそちらへ顔が向くと、視線を合わせて「O O です。」「よろしくお願いします。」等、一言二言、さらに声がけがあります。
控えめな活動だなと思いつつ、週に2回くらいの割合で朝の挨拶を交わすため、顔と名前をすっかり覚えてしまいました。
先日たまたまいつもより早く家路につき駅に降り立つと、O O さんがマイクをセットし、演説を始めようとしているところでした。5分にも満たない短い演説でしたし、どんな人物なのかなんとなく興味があったので、ついつい最後まで聞いてしまいました。演説を終えて小冊子を配り始めた彼に、「なぜ朝は演説しないのか」と思い切って尋ねてみました。
すると、「朝は道が混んでいて、邪魔になりますよね。皆さん急いでいらっしゃるから足を止めていただける訳でもないですし。夕方はそんなに混まないし、バスを待っている人や、会社帰りに駅前で買い物をする人に5分くらいの話なら聞いてもらえますからね。」と明確な回答をいただけました。なるほどと思いました。
「朝は顔と名前を覚えてもらう。夕方は話を聞いてもらう。」さらに、「話を聞いてもらいやすいように、5分以内に話を終わらせる」というのは聞き手の状況をよく理解した上での工夫だったのです。
人に何かを伝えたい。分かってもらいたい。
そう思って私たちは、説明や話をしています。
その際、説明する内容をどれだけ熟知していて、どれだけ思い入れがあったとしても、
聞き手の視点を考慮に入れなければ、伝えたいことはなかなか伝わりません。
プレゼンテーション研修の中で、私は受講者にこう問いかけることがあります。
「話しても理解してもらえないとき、聞き手のせいにしてしまっていないでしょうか?」
聞いてもらえないなら、聞いてもらうために何をするのか。
理解してもらえないなら、理解してもらえるようにどう話すのか。
そのためのポイントはたくさんありますが、重要なことはやはり『聞き手の視点で見たら・・・』を考えることです。
たとえば、速いテンポでスピード感を持って話すのが好きだからと、自分のペースで話したとします。ところが、早口過ぎて、聞き手に聞き取れていなかったらどうでしょう。
聞き手は「もう一度言ってください」と何度も話を中断するかもしれません。
または、聞き取れないあまり、途中で聞くことをやめて立ち去ってしまうかもしれません。伝えたいことがきちんと伝わらなくても、話し手自身が満足したのだから、これでよかったと言えるでしょうか?
相手に何かをきちんと伝えたければ、自分がどんな話し方を好きか嫌いかではなく、どんな話し方をすれば伝わるかを考慮して話す必要があるのです。
私たちが普段ビジネスで話す相手については、たいていの場合、どの企業のどのようなポジションの方なのか、といった情報を持っているものです。冒頭でご紹介した街頭演説の場合と比べると、聞き手の状況を、より細かく考慮することができます。聞き手の視点で考え、自分が伝えたいことを相手に聞きやすく、理解しやすいように話す工夫ができれば、伝えたいことがよりスムーズに相手に伝えることができるのです。
「プレゼンテーション・スキル実践演習」(X510J)
プレゼンテーションコースでは、話し方を体系的に学びながら、受講者も講師も一緒になってフィードバックを交換します。お互いの話し方のよいところ、改善の必要なところを見つけ合いブラッシュアップしていきます。
森 美緒(もり みお)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育トレーナー。
1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。商社での秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。
2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
[プレゼンテーション][2007年1月19日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第4回 母に理解された日
執筆:田中淳子
研修の仕事というのは、「人と人とのつながり」で成り立つものだと常々考えています。講師も一生懸命進行しますし、受講されている方もできるだけ多くを学びとろうと必死になってくださる、そういう相互作用があった時に期待以上の成果が生まれるように思うのです。
さて、人と人とのつながりといえば、研修内容が講師と受講者との関係だけではなく、受講された方とそのご家族といったつながりにまで広がることがあります。
「まさか企業の研修でそんなことが?」とお思いになるかもしれませんが、本当にそういうことが時々起こるのです。
「プレゼンテーション・スキル実践演習」という研修をある会社様向けに実施した時のことです。入社3年目くらいの若手SEの方たちが、顧客先で上手にプレゼンテーションできるようにという意図で企画された研修でした。講義は少なく、ひたすらプレゼンテーション演習を行い、何度もビデオ撮影をしてはフィードバックするというスタイルをとりました。1日目に撮影したビデオテープは、その場で見ることができなかったため、研修時間終了後に会議室で見るか、自宅に持ち帰って見てくることをお願いして解散しました。2日目の朝、「ビデオはご覧になりましたか?何かご自分で気づいた点、発見した点はありましたか?」などと振り返りコメントを拾っていきました。以下のような感想が出てきました。
「自分で思った以上に堂々としゃべっていたので、安心した。」
「アイコンタクトを取ったつもりだったけれど、左の方しか向いていなかった。」
そんな中で、お一人が照れくさそうに微笑みながら、こんな話をしてくださったのです。
「会社で見る時間がなかったので、自宅に持って帰って見ました。両親と一緒に暮らしているので、親が寝静まるのを待って居間でそーっとビデオを見ていたら、母が起きてきて、一緒に見る羽目になったんです。」
彼女は、自分の担当しているシステムについて顧客に提案するという設定のプレゼンをしました。
お母様がお部屋に入ってこられてもやめるわけにはいかず、最後まで二人でビデオを見たそうです。「恥ずかしいなあ」と思っていた彼女に、お母様はこうおっしゃいました。
「あなたも頑張っているのね。いつもどうしてこんなに夜遅くに帰ってくるのかしら、と思っていたけど、ホントに頑張っているのね。」と。
顧客に難しいことを説明することも仕事の一つで、これだけの技術や知識を得るために日々頑張っていること、遅くまで仕事に打ち込んでいることをお母様なりに理解なさったのでしょう。
この話を聞いてほろっとしました。プレゼンテーションの研修は、プレゼンテーション・スキルを向上することが目的ですが、こんな風に親子の会話のきっかけになったり、家族に自分の仕事を理解してもらう材料になったりすることもあるのだなと嬉しく思いました。
「プレゼンテーション・スキル実践演習」(X510J)では、仕事関連の話題でプレゼンテーションをしていただきます。必ず、ビデオ撮影もします。お一人分ずつ別々に収録するので、ご自分のビデオテープを持ち帰ることができます。
このテープを封印してしまい、お蔵入りにしてしまう方もいるようですが、講師としては、是非、早いうちにご覧いただきたいと考えています。というのは、研修に参加した直後にフィードバックの効果が最も出やすいからです。時間が経てば経つほど見る気持ちも薄れます。また、随分後になって見ても、「どこがよかったか、どこが改善点として指摘されたか」を思い出すのも難しくなります。
時々、「こんな恥ずかしいものは見られない」とおっしゃる方がいらっしゃるのですが、人に普段見せている姿なのですから、一度自分の目でチェックすることは意味のあることだと思います。もしどうしても"しらふ"で見るのがイヤだとおっしゃるなら、ワイン片手に見てもよいのです。
気をつけているつもりのことはきちんとできていて、まさか自分はこんなことしていないだろう、と思うような意外な行動や動作をしている姿に驚くこともあります。
でも、ビデオの中の自分を客観的に眺めて新たに気づくことも多いのです。
家族との会話の材料になるかもしれないビデオです。一度挑戦してみませんか?
*「プレゼンテーション・スキル実践演習」では、ビデオ撮影をいたします。
田中 淳子
(たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[プレゼンテーション][2006年1月23日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第1回 フィードバックの思い出
執筆:田中淳子
私、田中淳子は、1990年にアメリカで「インストラクター・スキル」という研修を受講したことがきっかけとなり、現在のような"ヒューマンスキル"分野の研修を本格的に手がけるようになりました。
これは、研修インストラクタ向けに「教え方」「プレゼンテーション方法」「教材作り」などを5日間で教えるもので、私はそのクラスに唯一の日本人として参加しました。当然英語は下手で、講義についていくのもやっと。必死に辞書を引き、講義やディスカッションについて行きました。最終日には、一人15分のプレゼンテーション演習があり、ビデオ撮影もありました。「OSのオペレーション」の講義をした私は、文法も完全に無視して、なんとかしゃべり終わったという状態だったのです。
研修の最後に、講師が「この5日間の参加について、ジュンコにフィードバックしよう」と声をかけました。何人かの手が挙がり、私に対するフィードバックが始まりました。
講義中も言葉を調べるのに必死で、辞書にくびっぴきでしたので、発言などほとんどしていませんでした。プレゼンテーションにおいては、英語はめちゃくちゃで、何を言っているのか、アメリカ人の受講者にはわからなかったと思います。なので、フィードバックでも「英語が下手だった」「言葉が通じないので、ディスカッションにも参加していなかった」など、否定的なコメントが多く寄せられるだろうと、身を硬くして構えていました。すると・・。
アメリカ人のクラスメイトは、口々にこう言いました。「ジュンコは、5日間ずーっと辞書を引いていた。」「ジュンコは、なんでもノートに書いていた。」「ジュンコのプレゼンでは、ホワイトボードに沢山書いてくれたので、理解しやすかった。」
5日間の緊張がさーっと解けた瞬間です。
「ああー、フィードバックというのは、"ここが悪い"と指摘するだけではなく、"何をしていた"と感じるままを、それも、ポジティブに表現するものなんだ。」と目からウロコが落ちました。アメリカで苦労した甲斐があったと思い、こういう「気持ちがよくなる」研修を日本の企業人向けに開催したいと強く思いました。
この出張後、私は、いくつかのヒューマンスキル研修を開発し、開催し始めました。研修の基本精神として決めたのは、「決してネガティブなフィードバックをすまい。人は、認めてほしい生き物だし、認めることでその人が伸びるのだ」ということです。
この時、受講したコースは、日本に持ち帰り、「トレイン・ザ・トレーナー」(ON258.4日間)として、今でも実施しています。これ以外でも「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「コーチング」など様々なヒューマンスキルの研修を開講しています。どの講師もすべてのコースにおいて、一貫して、「ポジティブなフィードバック」を心がけています。
人は、「その行為を認められ、褒められる」ことで成長する---。
グローバルナレッジのヒューマンスキル研修の根底には、この精神があります。
ヒューマンスキル研修に参加することを躊躇している方、抵抗を感じる方、心配することなく、是非一度参加してみてください。
田中 淳子
(たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[コミュニケーションコーチングプレゼンテーションリーダーシップ][2005年9月27日配信]