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わくわくヒューマンスキルコラム
【OJT茶話会】特別レポート:応募者数が多いのはよいことか?「三幸製菓によるカフェテリア採用」に学ぶ
執筆:田中淳子

田中淳子の「OJT茶話会レポート」を掲載します。

「OJT茶話会」とは、2011年からグローバルナレッジで主宰している人事・人材開発者向けコミュティ活動です。2015年6月17日(水)開催時のテーマは「新卒採用」。

ユニークな採用で有名な三幸製菓のユニークな採用についてお話を伺った上で、「自社ならどうする?」「何が課題?」「何が活かせる?」を参加者の皆さんで議論しました。茶話会の進行役を務める田中淳子が、「これからの新卒採用」」について考察します。




就職活動の解禁日が変更になったことで、かえって学生にとっては活動が長期化したのではないか。学生も企業も疲弊しているように思う。――― こういう声をよく耳にする。よかれと思って変更した制度や取り組みも最初からそう意図通りにいかないことはある。これからも新卒採用は、様々に試行錯誤を繰り返すのだろう。


ところで、「日本一短いES」をご存じだろうか。ESとは「エントリーシート」のことである。日本一短い、とにかく、短いのだ。→ コチラ


第15回「OJT茶話会」(2015年6月17日(水)開催)では、この「日本一短いES」の仕掛け人でもある 三幸製菓の杉浦二郎さんから、同社のユニークな採用の取り組みについて話していただいた。

目から鱗、「え?それありですか?」なお話の数々に参加者も私も「目から鱗」がたくさん落ちた。順を追ってレポートしていこう。


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三幸製菓と採用


三幸製菓は昭和37年(1962年)創業の「あられ・おかき・おせんべいの製造販売」企業である。7人の人事担当者で人事業務全般を担当している。

杉浦さんはこう切り出した。


私が人事に入った頃は、経営側に「採用が大事」という考えがなかった。採用の予算枠は少なく、採用に関心を示さなかった。「採用が大事」ということを経営に向けてプレゼンした。

三幸製菓はコンシューマー製品を作っている企業。イメージは大事だ。そういう意味では、採用もそもそもPR、広報である。三幸製菓がいかに成長しているかも「採用」で知ってもらう。採用はブランディングだしポジショニング。戦略を立てて世間に訴えていかないとダメでしょう?」こう訴え、ようやく経営にも理解してもらえた。


「採用」というのは、学生に会社を知ってもらうだけではなく、上手に行えばブランディングにつながる活動なのだ、と杉浦さんは経営に訴えていった、という。そういえば、この日、杉浦さんは段ボール1箱分の「三幸製菓」の「おせんべい」も提供してくださったのだが、この日以来、参加していた私たちは、コンビニやスーパーで「三幸製菓のおせんべい」を探すようになったし、意識して手にするようになった。ブランディングの一つと言われたら、なるほど~と実感する。


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※おせんべいを事前に1箱送ってくださり、参加者全員でいただきながら、お話をお聴きしました。とてもおいしいおせんべいでした。



「採用」って何だろう


一般的に採用は、「なんとなくこういう人を採用したい」という感じになりやすい。具体的には「能力」と「会社とのフィット」を見たいと考える。ところが、「能力」は「学歴」に、「会社とのフィット感」は、「面接官とのコミュニケーション能力」に置き換わりやすい。


「学歴」と「面接官とのコミュニケーション能力」という測り方となれば、結局、すべての企業が「共通の評価軸」で学生を見ることになる。どの企業も同じ評価軸で競ったら、大手有名企業に負けるに決まっている。この採用戦略では、自社のポジショニングをあえて劣勢に持って行ってしまう。


そもそも私は「面接」にも疑問を持っている。できれば「面接」をしたくない。極論すれば、面接には意味がないと思っている。質の高い面接をするには、アセッサーとしての訓練が必要。採用担当全員にその能力をインストールするのは非常に困難になる。未熟な面接担当者の面接は、「好き嫌いの熱量交換」になりがちである。だから判断も「感じいいね」といったものになりやすい。


「面接」なんか不要だ。「面接官のスキルが高くなければ、"感じよい"とか"私にとって好印象"という点で評価してしまいやすい」と言われれば、納得する。


一方、「感じよい、いい印象だ、という感覚での採用が問題だろうか」という声も参加者からは挙がっていた。 


どちらがよい悪いではなく、それぞれの企業にとっての「評価軸」を定めればよいのだと思う。



三幸製菓の採用のポイント


三幸製菓では「スキル=行動特性」と「会社とのフィット感」は「性格適性」と「経営とのフィット感」で見ようと考えた。


いかに自分たちの会社に合って、自分たちの会社で成長・活躍できる人材を定義して、採用していくかを考えることにする。このやり方であれば、他社とぶつからない。自分たちなりの戦略を立てて、採用をしていくこととした。


採用については、こういう公式があると思う。


「企業知名度や規模×採用設計力=採用力」


● 知名度が高ければ、採用設計力が高くなくても採用力は高くなる
● 会社の知名度が高くなければ、採用設計力がものを言う


「採用担当者」は「採用をプロデュースする力」が求められる。ところが、一般に、採用担当者は、エントリー数をKPIにしたがる。たとえば、三幸製菓の過去最高のエントリー数は13,000人。「うわー、13000人も来た!」とその時は思った。でも、よく考えてみれば、採用するのは、その中の数人。

選考しているのではなく、落とすことにエネルギーを費やしていて、むなしい。だったら、「エントリー」という考え方そのものをやめてしまい、「選考」について考えればよいのではないだろうか。大事なことは、その人がいかに活躍するか、ではないか。


「社長! 3000人もエントリーシートが届くんですよ」
「おお、凄いなぁ」

という風に「応募者数で喜んでいていいのか?」と杉浦さんはおっしゃる。

「大半を採用しないのに、そこにエネルギーを費やしている。でも、そこじゃないだろう」というのだ。



「採用」で何を見ていくか


三幸製菓では、採用のゴールは「2年後」とした。つまり、採った人の「2年後のパフォーマンスが上位であること」


「2年以内に辞める、2年経ってもパフォーマンスが上がらない、周囲からの評価が低い」とすれば、採用の仕方が悪いのだ。2年後活躍しなければ意味がない。2年後に活躍してくれたらその採用は成功だと評価軸を決めた。


能力を「先天的能力」と「後天的能力」と分けた。後天的に身に着くもので、自社で開発可能なら(採用時は)そこを見ない。比較的先天性が高いか、自社で開発できない能力であれば「採用」で見る必要がある。このあたりは、横浜国立大学で「採用学」を研究している服部先生のご協力も得て、整理した。


たとえば、「コミュニケーション能力」は「可変要素が高い」ため、採用では「見なくてよい」とした。もちろん、得意不得意はあるかもしれないが、それより、「想像力がある」とか「バイタリティがある」といった「変わりづらい」ことを見ることにした。



参加者からは、「コミュニケーション能力だけではなく、他の能力も入社以降の育成でなんとでもなる。人は変わる」という意見も出ていた。一方で、「もちろん、育成で手間を掛ければ、ある程度のところまで、どんな人でも育てられるば、そういうやり方は、個別対応が増えて、とても時間(コスト)がかかってしまうよね。だったら、可変要素の少ない部分は、採用時に見極めるというのも妥当なのでは」という声も挙がった。


そうやって、入社2年前後の社員のパフォーマンス分析をし、共通項に基づくアンケート調査を全社員に。ハイパフォーマーの特性を見ていった。「6分類」の適性をあぶりだす作業に1.5年間かけた。


これが「日本一短いES」の次に提示される「35の質問」へとつながる。



「35の質問」で見ている適性の詳細


「35の質問」でどのような適性を判断しているのか、解説があった。


●外向性:色々なことに意欲的にかつがつと取り組む

●開放性:様々な人を許容でき、やりとりできること

●認知欲求 :考えることが好き、難しいほど刺激的でやりたくなる

●垂直的集団主義:体育会系な世界が好き

●水平的集団主義:「みんなで巻き込んで一緒にやっていこうね」という感じ

●あいまいさの享受:よくわからない仕事をやれる、とにかくやろうよ、と動ける。あいまいな状態のまま受け入れられるか

●達成性:目標に向かってこつこつ努力し続けられるか



「カフェテリア採用」

  ......なぜ17種類もの採用方法を?


「35の質問」の開発に1年半かかり、2015年度から。2016年度の「日本一短いES」はネットで拡散した(2015年3月5日リリース)


「日本一短いES」。最初に最低限の確認をする。(「おせんべいが好き?」「新潟で働ける?」この2つを最初に尋ねてしまう)次に「35の質問」。これが「適性検査」になっている。面接に代わるものとして作ってあり、区分としては7つ。「6分類」と「不合格」。「35の質問」の回答することが「適性」の判断になり、「適性」に応じた「カフェテリア採用」(17種類)を提示する。


会社としては、「多様性」、多岐に渡る能力を持つ多様な人材を求めているのに、単一の選考フローで見るのは疑問だ。個々の特性を「全部同じ面接方法で採用します」と言っているようなもの。脚が早い人は、「走ってもらって」選考する、というように多様な採用をするのがよいのではないか。そんな考えから「カフェテリア採用」を設計した。

「志望動機」は採用の最後の段階で訊くのでもよいくらい。人生の大きな選択なのだから、途中までは「分からない、まだ迷っています」と学生が言うのは当たり前。大事なことは学生が「自分で決める」こと。



この部分も目からウロコ。

「応募動機は?」
「当社をなぜ志望したのですか?」
と最初の段階で訊いてしまう。


けれど、学生だって働いたこともないのに、揺れ動くのは当たり前。だから、志望動機は、最後のほうに尋ねるのでもよいと杉浦さんは言う。その上で、学生が「自分でここに来ると決めた」感がとても大切なのだと。


確かに、学生も情報をたくさん持っているし、就職活動用のお作法も押さえているし、「志望動機」を尋ねれば、それなりに「上手なこと」は言うに違いないが、それを聴いてどうなるというものでもないように思う。



今年は17個の採用メニュー


*17個の解説があったが、このレポートではそのうちのいくつかを紹介する。

●「おせんべい採用」

・おせんべいへの愛を存分に語ってもらう。この採用は評判高い。家族を巻き込んでムービー作ってくる人もいる。このタイプが入社すると社内が活性化する


●「キャプテン採用」
・みんなでやろうよ、とまとめていくような人。学生同士で採点していく。同年代で「この人がキャプテンだと思う人」が「キャプテンだよね」という考え方


●「DIY採用」
・学生が「どこを見ているんですか?」と言うので、「だったら自分が最も輝く、能力をアピールできる選考スタイルを考えて出して」というもの


●「がんばったで賞」
・「結果につながらないけど頑張りました」というプロセスについてアピールしてもらい、そこを評価しようという採用


●「ガリ勉採用」
・目の前のやらなければならないことを「一生懸命やった人」。普段は大人しくても「研究の話になるとものすごく饒舌になる」、入社するとものすごく勉強し新しい知識を身に着け、新しい商品を作っていく人になる


●「日本一長いES」
・30日間エントリーシートを書き続けてもらう


このたくさんの採用メニューがあるのだが、興味ある方は、エントリーしてみるとよい。自分の特性がどの採用メニューにつながるか試してみると、このシステムを実感できると思う。(茶話会でも参加前に全員が試しておいた)




今後について


最後に杉浦さんはこう締めくくった。


採用だけではなく、組織開発や人材育成などすべてにつなげていかなければならない。
大事なことは、今までは、縦ライン(偉くなる)」が一般的だったが、これからは「複層化(モザイク化)」、つまり、「様々な働き方」に対応していく必要がある。

人事制度、選考、育成、評価も多様化する。今後はそういうことすべてをやっていかなければと思っている。

私は様々な場所で三幸製菓の採用についてプレゼンする。"なぜ時間をとってまで、いろんな場で自社のことを話すんですか"とよく質問される。1つは、HRの領域で「採用」の立ち位置が若干低いと思われているような気がするという課題意識から。エントリーレベルの仕事と思われがち。人材育成や組織開発は難しいと思われがち。でも、「採用」をちゃんとやること。それなりの立場の方は採用にもっとコミットしてもらえると、その会社の「採用」はちゃんとしてくると思う。


2つ目は、基本的には全部オープンにしている。個人情報以外は、自分の考えをオープンにし、賛否両論の意見をいただくと、自社にまた活かしたい。来年も同じことを話していたら、頭の中が変わっていないなと思ってください(笑)


杉浦さん、興味深いお話をありがとうございました。



この後、参加者でこのプレゼンをきっかけに議論をした。採用に関わる方、採用された社員の育成に携わる方、どちらにも関わっている方など多岐に渡る参加者からは、以下のような声が挙がっていた。


● どういう採用、選考を経て採用に至ったとしても、「あなたはここを見て選んだ」ということを本人にフィードバックすることがとても大事。いかに「選考されているか」という納得感が入社の決め手、ロイヤルティの決め手になりそう。「ちゃんと選考されている」感。入社後も生きてくるはずと信じている。
学生が「選考されて、見てもらって、取ってもらった」という意識が強くなれば、リアリティショックがあっても、モチベーション高く取り組むのではないか。どこを評価されたのか、どこを見てもらったのか、ちゃんと見てもらったかわからないから承諾もためらうのかもしれない。「ちゃんと選考した、これだけ見て決めたんだよ」「こういうところを見て採用された」とわかれば、自信を持って仕事できる。


●新卒研修で「君のここがいいね」と言うと、「そんな風に言ってもらったことがない」と言われることが多い。ここ1-2年増えた。いかに認められていないかというのが現代の若手かも。キャリア採用の中でも「若手」は「どうして選ばれたのですか?」とフィードバックを欲しがる。それが後々の「内定承諾」にも影響している。


●どういう人材を求めているか、を「人事」が「現場」と握れているかというとちょっと怪しい。たとえば、「コミュニケーション能力」が大事というが、では、何をもって「コミュニケーション能力」と定義しているのか、明確にしているだろうか。これは、職場に戻って人事と現場とで話し合う必要があると思った。


他にも有意義な議論が交わされ、途中、質問には杉浦さんが丁寧に答えてくださった。

参加者全員が「自社に持ち帰りこれを試してみます」をコミットして、解散した。
次回「OJT茶話会」開催時にその成果を共有することになっている。

皆さんの成果が楽しみである。






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●企業の人事・人材開発担当者向けコミュニティ「OJT茶話会」は、各社のOJT事例を共有しようというところから2011年に発足しました。現在30社ほどの企業がメンバとなっています。IT、製薬、メーカーなど多種多様な業界の方が集まり、OJTに限らず、人材開発に関わる幅広いテーマを毎回集まっています。

参加条件は2つだけです。「可能な限り継続参加してくださること」「いつか自社事例をプレゼンしてくださること」。参加は無料です。ご興味のある方は、担当営業にご連絡くださいませ。


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田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いでいる。

【ブログ】
 ・ITメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!

【著書】
 ・NEW) 『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
 ・NEW) 『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
 ・『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
 ・『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BPストア)
 ・『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
 ・『田中淳子の人間関係に効く"サプリ"-職場で役立つ30のコミュニケーション術』(アイティメディア)

【連載】
・アイディメディア 誠Biz.ID 「上司はツラいよ

・@IT自分戦略研究所 「田中淳子の"言葉のチカラ"





[大人の学び後輩指導・OJT新人社員研修][2015年8月18日配信]

 

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