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わくわくヒューマンスキルコラム
第56回: 善意の無関心
執筆:田中 淳子

昨年、私の両親に初孫が誕生し、私にとっては甥っ子が出来ました。彼のパパ・ママ(=実妹)は最初から周囲を上手に巻き込み、おかげで私はこの年になっておむつ替えやらミルク作りやら離乳食作りやらを初めて体験することとなりました。核家族の子育てでは、いかに上手に周囲の協力を得るかがポイントなのだと肌で感じているところです。


さて、多くの企業で、先輩社員が1対1で新入社員の指導に当たるという「OJT担当者」制度を設けています。一般的に、20-30代の若手・中堅社員層がOJT担当者に任命されます。「新入社員のOJT担当を任されて大変だ」と最初はプレッシャーに感じる方は多いものの、任期が終了する頃になれば、誰もが「新入社員を育てる」ことで「自分も成長できた」と気づくことになります。新入社員と指導する先輩の双方にとって、「学びと成長」に役立つのが「OJT制度」なのです。


ただし、「OJTの制度化」には必ずと言っていいほどついて回る問題があります。新入社員に対し1対1で先輩が指導に当たるこの制度、周囲からは「彼・彼女<だけ>が指導に当たる」という誤解を招きやすいのです。「彼・彼女を指導する上での第一担当者に任命した」だけであって、他の先輩達が何もしなくてよいわけでも、してはいけないわけでもないのにも関わらず、「担当者がいるなら、私たちが口出しすることもない」と周囲の先輩達は新入社員の指導を傍観するようになってしまいます。


「新入社員に先輩をつけて1年間指導させることにしたので、新入社員の成長は著しいんです。でも、他のメンバが何も手伝ってやらないという副作用が出てしまうのが問題です。それで、OJT担当者が孤立するんですよね」

こういった悩みを様々な企業で耳にします。


「周囲が手助けしてくれない現象」を私は「善意の無関心」と呼んでいます。OJT担当者からすると、「周囲の他のメンバが育成を手伝ってくれない」と不満が溜まるのですが、手伝わない他の先輩達に悪意はありません。むしろ「折角彼・彼女が指導しているのだから、私が余計なことを言ってはいけないのではないか」「彼・彼女の考えもあるだろうから、ここは黙って見守ることにしよう」という善意から手出しをしないのです。OJT担当者に何もかも押し付けようと考えているのではなく、手を、口を出しては失礼だろう、という善意に基づく「無関心」がOJT担当者の孤立を生んでしまっています。


「善意の無関心」を解消するにはどうすればよいのか。具体的な対応策をご紹介します。


1.OJTに関するキックオフミーティングを開き、「育成は全員で当たる」ことを所属長から述べてもらう

所属長の一言は大きな影響力を持ちます。「OJT担当者として○○さんが任命されていますが、一人で何もかもできるわけではありませんし、する必要もありません。皆もこの職場全体にとっての新入社員だと意識して、指導に協力するように」というメッセージを伝えることが肝要です。


2.他の先輩達に「何をどう手伝ってほしいか」を具体的なタスクとして依頼する

「新入社員の育成を手伝ってください」よりも、「新入社員が作った議事録を査読して、フィードバックしてもらえませんか?」と具体的に「何をどうしてほしいか」伝えます。漠然と「手伝って」と言われるよりも「これをして欲しい」とタスクとして依頼されるほうが手伝いやすいのです。


3.新入社員に「OJT担当者」は私だが、チーム全員で指導に当たることを伝える

実は、担当者を専任すると新入社員側にも「OJT担当者以外の言葉に耳を傾けなくなる」可能性が出てきます。「これはダメだよ」と周囲の先輩が注意してくれたのに、「OJT担当者」以外に注意されたから関係ないと思ってしまうのです。そうならないために、あらかじめ、新入社員側の意識付けしておくことも重要です。


我が妹は、甥っ子が退院してくる前に「みんな遠慮せずどんどん手伝ってね!」と宣言しました。彼らはしばらく実家に滞在していたので、私もしょっちゅう実家に立ち寄り、子育てに参加しました。「抱っこしたい人~」と妹に声をかけられるや、母や私がいそいそと赤ん坊に走り寄り、われ先にと抱っこし、おむつを替えて、いつの間にか、全員で取り組むムードが出来上がりました。おかげで私たち身内に「人見知り」をすることなく、すくすく育っています。「子育ては全員で当たる」ことが自然と伝わっているのでしょう。

 

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以下のようなコースで、OJTに関して体験的に学ぶことができます。

「後輩の教え方育て方 ~OJTの効果的な進め方とスキル~」(HS0073CG)


「OJT担当者向けワークショップ ~指導計画作りからコーチングまで~」(HSC0037G)


「OJT担当者上司向けセミナー ~OJT担当者の支援と部下のコーチング~」(HS0057CG)

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【対談連載】 
ITpro ヒューマンスキル特別対談-『行き詰まり感』を打開するコツ- (田中淳子×芦屋広太)

【Twitter開始】 
「田中淳子のTwitter」 

 


[後輩指導・OJT][2010年5月25日配信]

 

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