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わくわくヒューマンスキルコラム
第53回:一貫したメッセージ
執筆:森 美緒

 会社帰りに、私はいつも乗換駅に隣接したストアで夕食の買い物をしています。
そのストアの入り口から生鮮売り場までの通路にその惣菜店はあります。
サラダ類を中心に扱う店で、量り売り形式です。店員に欲しい惣菜名とグラム数を伝え、店員はプラスチック容器にその量の惣菜を入れて、販売します。
店員にはショーケース越しに接客をする人と、店頭から少し奥に入った厨房で新しい惣菜を作っている人がいます。


 ある時、仕事帰りの買い物客がごった返す中で、接客の順番を待っていると、厨房で惣菜作りをしていた店員が、小走りに出てきて「お待たせしました。ご注文をどうぞ」と笑顔で接客を始めてくれたのです。
些細なことかもしれません。でも、調理をしながら、表の様子も見ている視野の広さや、自分の役割に固執せずに接客できる柔軟性は「すごい」と思いました。
それからというもの、その惣菜店の接客に注目をするようになりました。


 毎日のように観察していると、ほかにも色々な事例を目にすることができます。例えば、接客担当者全員が接客を始めると、待っている客がいなくとも厨房から1人は店頭に出てきて「お待ちの方はいらっしゃいませんか?」「いらっしゃいませ」と買い物客に声をかけています。時には接客担当が惣菜作りの作業を手伝う場面も見かけました。どの例からもチームワークに柔軟性がある様子が確認できます。


 注目し始めて1年が経った頃、店の教育がその「すごさ」を生み出していることに気づきました。
この惣菜店では新米店員が一人前の店員になるまでの間、先輩たちが一貫して同じメッセージを発し続けます。
 新米店員は(実習中のバッチをつけているのですぐに分かります)、店に立ち始めてしばらくは、自分の役割をこなすのに必死になっています。お客の指定したグラム数ぴったりに惣菜を量るのに時間がかかり、包装に手間取り、レジでクレジットカード決済の方法が分からない。そのたびに、先輩店員は、「早くできなくても良い、でもお客様を待たせたらだめですよ!」と言います。一見矛盾したメッセージですが、数日経つと、新米店員はレジで困ったら先輩店員に「あちらのお客様分です。レジお願いします」と言ってレジを代わってもらい、自分は次の接客に向かうようになります。
実習中のバッチが取れる頃、自分の役割をこなせるようになった新米店員は、今度は「自分のことだけ早くても、お客様を待たせたらだめですよ!」と注意を受けるようになります。すると数日後には、店全体を見て「それ、私がします」と動き、お客全体を見て「お待ちの方いらっしゃいませんか」と声を出すようになっています。
その頃には、もうすっかり先輩店員と同等の仕事ぶりです。


 店員の変化を見るたびに、私は一貫したメッセージの大切さを感じます。
先輩店員が伝える「お客様を待たせない」という一貫したメッセージは、そのために何ができるかを考えさせ、先輩は何をしているかを観察させる土壌を作っているからです。量り方が遅いとか、レジが遅いという細かいスキルは経験によって速くなるものです。注意しはじめたらきりがありません。もし仮に、それらのスキルが身に付いたとしても、それだけでチームワークが発揮できるとは限りません。
この惣菜店は、店の目標である「お客様を待たせない」というメッセージを一貫して教えて「チームの力を借りること」「チームに貢献できることを自分で探すこと」を店員に浸透させています。


 新入社員の育成担当者を対象にしたOJT研修を行うと、どうすれば後輩に上手く業務を教えられるか、どのように後輩の話を聴けばよいかなどに、多くの関心が寄せられているように感じます。もちろん、業務の教え方や接し方も大切です。ただ、知識やスキル以上に、教えるべき大切なメッセージがあるのではないでしょうか。
それは、「チームの目指すもの」や、「自分たちのあるべき姿」です。


 新入社員だった頃、私は先輩社員から「仕事というものは」「我々営業は」と何度も同じ話を聴きました。現在、私の仕事への取り組み方の根底にはその時に先輩からもらったメッセージがあります。あの頃は内心、「またその話か、精神論はもう良いから、細かいテクニックを教えて欲しい」と思ったものです。でも今は、大切なことを教えてもらっていたのだと、とても感謝しています。


 皆さんには、会社として、チームとしての一貫したメッセージがありますか?
そのメッセージを自分の行動でも示せていますか?
まもなく新入社員が入社します。先輩としての自分の姿を見直し、後輩を迎える準備をするのにとても良い時期ではないでしょうか。

 

 

・後輩の教え方育て方 ~OJTの効果的な進め方とスキル~

・OJT担当者向けワークショップ ~指導計画作りからコーチングまで~



森美緒

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。 1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。 2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。

 

2008年12月より2010年1月まで、翔泳社webマガジンEnterprisezinにて「新入社員が育つ!現場のための教育実践マニュアル」 連載。 2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。


[後輩指導・OJT][2010年2月23日配信]

 

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