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わくわくヒューマンスキルコラム
第56回: 善意の無関心
執筆:田中 淳子 (たなか じゅんこ)

昨年、私の両親に初孫が誕生し、私にとっては甥っ子が出来ました。彼のパパ・ママ(=実妹)は最初から周囲を上手に巻き込み、おかげで私はこの年になっておむつ替えやらミルク作りやら離乳食作りやらを初めて体験することとなりました。核家族の子育てでは、いかに上手に周囲の協力を得るかがポイントなのだと肌で感じているところです。


さて、多くの企業で、先輩社員が1対1で新入社員の指導に当たるという「OJT担当者」制度を設けています。一般的に、20-30代の若手・中堅社員層がOJT担当者に任命されます。「新入社員のOJT担当を任されて大変だ」と最初はプレッシャーに感じる方は多いものの、任期が終了する頃になれば、誰もが「新入社員を育てる」ことで「自分も成長できた」と気づくことになります。新入社員と指導する先輩の双方にとって、「学びと成長」に役立つのが「OJT制度」なのです。


ただし、「OJTの制度化」には必ずと言っていいほどついて回る問題があります。新入社員に対し1対1で先輩が指導に当たるこの制度、周囲からは「彼・彼女<だけ>が指導に当たる」という誤解を招きやすいのです。「彼・彼女を指導する上での第一担当者に任命した」だけであって、他の先輩達が何もしなくてよいわけでも、してはいけないわけでもないのにも関わらず、「担当者がいるなら、私たちが口出しすることもない」と周囲の先輩達は新入社員の指導を傍観するようになってしまいます。


「新入社員に先輩をつけて1年間指導させることにしたので、新入社員の成長は著しいんです。でも、他のメンバが何も手伝ってやらないという副作用が出てしまうのが問題です。それで、OJT担当者が孤立するんですよね」

こういった悩みを様々な企業で耳にします。


「周囲が手助けしてくれない現象」を私は「善意の無関心」と呼んでいます。OJT担当者からすると、「周囲の他のメンバが育成を手伝ってくれない」と不満が溜まるのですが、手伝わない他の先輩達に悪意はありません。むしろ「折角彼・彼女が指導しているのだから、私が余計なことを言ってはいけないのではないか」「彼・彼女の考えもあるだろうから、ここは黙って見守ることにしよう」という善意から手出しをしないのです。OJT担当者に何もかも押し付けようと考えているのではなく、手を、口を出しては失礼だろう、という善意に基づく「無関心」がOJT担当者の孤立を生んでしまっています。


「善意の無関心」を解消するにはどうすればよいのか。具体的な対応策をご紹介します。


1.OJTに関するキックオフミーティングを開き、「育成は全員で当たる」ことを所属長から述べてもらう

所属長の一言は大きな影響力を持ちます。「OJT担当者として○○さんが任命されていますが、一人で何もかもできるわけではありませんし、する必要もありません。皆もこの職場全体にとっての新入社員だと意識して、指導に協力するように」というメッセージを伝えることが肝要です。


2.他の先輩達に「何をどう手伝ってほしいか」を具体的なタスクとして依頼する

「新入社員の育成を手伝ってください」よりも、「新入社員が作った議事録を査読して、フィードバックしてもらえませんか?」と具体的に「何をどうしてほしいか」伝えます。漠然と「手伝って」と言われるよりも「これをして欲しい」とタスクとして依頼されるほうが手伝いやすいのです。


3.新入社員に「OJT担当者」は私だが、チーム全員で指導に当たることを伝える

実は、担当者を専任すると新入社員側にも「OJT担当者以外の言葉に耳を傾けなくなる」可能性が出てきます。「これはダメだよ」と周囲の先輩が注意してくれたのに、「OJT担当者」以外に注意されたから関係ないと思ってしまうのです。そうならないために、あらかじめ、新入社員側の意識付けしておくことも重要です。


我が妹は、甥っ子が退院してくる前に「みんな遠慮せずどんどん手伝ってね!」と宣言しました。彼らはしばらく実家に滞在していたので、私もしょっちゅう実家に立ち寄り、子育てに参加しました。「抱っこしたい人~」と妹に声をかけられるや、母や私がいそいそと赤ん坊に走り寄り、われ先にと抱っこし、おむつを替えて、いつの間にか、全員で取り組むムードが出来上がりました。おかげで私たち身内に「人見知り」をすることなく、すくすく育っています。「子育ては全員で当たる」ことが自然と伝わっているのでしょう。

 

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以下のようなコースで、OJTに関して体験的に学ぶことができます。

「後輩の教え方育て方 ~OJTの効果的な進め方とスキル~」(HS0073CG)


「OJT担当者向けワークショップ ~指導計画作りからコーチングまで~」(HSC0037G)


「OJT担当者上司向けセミナー ~OJT担当者の支援と部下のコーチング~」(HS0057CG)

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 

【Twitter開始】 
「田中淳子のTwitter」 

 


[後輩指導・OJT][2010年5月25日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第53回:一貫したメッセージ
執筆:森 美緒

 会社帰りに、私はいつも乗換駅に隣接したストアで夕食の買い物をしています。
そのストアの入り口から生鮮売り場までの通路にその惣菜店はあります。
サラダ類を中心に扱う店で、量り売り形式です。店員に欲しい惣菜名とグラム数を伝え、店員はプラスチック容器にその量の惣菜を入れて、販売します。
店員にはショーケース越しに接客をする人と、店頭から少し奥に入った厨房で新しい惣菜を作っている人がいます。


 ある時、仕事帰りの買い物客がごった返す中で、接客の順番を待っていると、厨房で惣菜作りをしていた店員が、小走りに出てきて「お待たせしました。ご注文をどうぞ」と笑顔で接客を始めてくれたのです。
些細なことかもしれません。でも、調理をしながら、表の様子も見ている視野の広さや、自分の役割に固執せずに接客できる柔軟性は「すごい」と思いました。
それからというもの、その惣菜店の接客に注目をするようになりました。


 毎日のように観察していると、ほかにも色々な事例を目にすることができます。例えば、接客担当者全員が接客を始めると、待っている客がいなくとも厨房から1人は店頭に出てきて「お待ちの方はいらっしゃいませんか?」「いらっしゃいませ」と買い物客に声をかけています。時には接客担当が惣菜作りの作業を手伝う場面も見かけました。どの例からもチームワークに柔軟性がある様子が確認できます。


 注目し始めて1年が経った頃、店の教育がその「すごさ」を生み出していることに気づきました。
この惣菜店では新米店員が一人前の店員になるまでの間、先輩たちが一貫して同じメッセージを発し続けます。
 新米店員は(実習中のバッチをつけているのですぐに分かります)、店に立ち始めてしばらくは、自分の役割をこなすのに必死になっています。お客の指定したグラム数ぴったりに惣菜を量るのに時間がかかり、包装に手間取り、レジでクレジットカード決済の方法が分からない。そのたびに、先輩店員は、「早くできなくても良い、でもお客様を待たせたらだめですよ!」と言います。一見矛盾したメッセージですが、数日経つと、新米店員はレジで困ったら先輩店員に「あちらのお客様分です。レジお願いします」と言ってレジを代わってもらい、自分は次の接客に向かうようになります。
実習中のバッチが取れる頃、自分の役割をこなせるようになった新米店員は、今度は「自分のことだけ早くても、お客様を待たせたらだめですよ!」と注意を受けるようになります。すると数日後には、店全体を見て「それ、私がします」と動き、お客全体を見て「お待ちの方いらっしゃいませんか」と声を出すようになっています。
その頃には、もうすっかり先輩店員と同等の仕事ぶりです。


 店員の変化を見るたびに、私は一貫したメッセージの大切さを感じます。
先輩店員が伝える「お客様を待たせない」という一貫したメッセージは、そのために何ができるかを考えさせ、先輩は何をしているかを観察させる土壌を作っているからです。量り方が遅いとか、レジが遅いという細かいスキルは経験によって速くなるものです。注意しはじめたらきりがありません。もし仮に、それらのスキルが身に付いたとしても、それだけでチームワークが発揮できるとは限りません。
この惣菜店は、店の目標である「お客様を待たせない」というメッセージを一貫して教えて「チームの力を借りること」「チームに貢献できることを自分で探すこと」を店員に浸透させています。


 新入社員の育成担当者を対象にしたOJT研修を行うと、どうすれば後輩に上手く業務を教えられるか、どのように後輩の話を聴けばよいかなどに、多くの関心が寄せられているように感じます。もちろん、業務の教え方や接し方も大切です。ただ、知識やスキル以上に、教えるべき大切なメッセージがあるのではないでしょうか。
それは、「チームの目指すもの」や、「自分たちのあるべき姿」です。


 新入社員だった頃、私は先輩社員から「仕事というものは」「我々営業は」と何度も同じ話を聴きました。現在、私の仕事への取り組み方の根底にはその時に先輩からもらったメッセージがあります。あの頃は内心、「またその話か、精神論はもう良いから、細かいテクニックを教えて欲しい」と思ったものです。でも今は、大切なことを教えてもらっていたのだと、とても感謝しています。


 皆さんには、会社として、チームとしての一貫したメッセージがありますか?
そのメッセージを自分の行動でも示せていますか?
まもなく新入社員が入社します。先輩としての自分の姿を見直し、後輩を迎える準備をするのにとても良い時期ではないでしょうか。

 

 

・後輩の教え方育て方 ~OJTの効果的な進め方とスキル~

・OJT担当者向けワークショップ ~指導計画作りからコーチングまで~



森美緒

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。 1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。 2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。

 

2008年12月より2010年1月まで、翔泳社webマガジンEnterprisezinにて「新入社員が育つ!現場のための教育実践マニュアル」 連載。 2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。


[後輩指導・OJT][2010年2月23日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第46回:「教えてもらったことないかも・・・」
執筆:高橋 俊樹

「相手の成長を支援するためのスキルのひとつ、コーチングと言う言葉を聞いたことはありますか?」


研修でこう尋ねると最近では6割前後の方が手を挙げるようになりました。特に30歳代以上はかなりの受講者がご存知のようです。


さらに尋ねます。


「それでは聞いたことがあるだけではなく、コーチングとは何か?どのようにすれば良いのかについて、書籍や研修などを通して学んだことがある方はいらっしゃいますか?」


すると「聴いたことがある」と答えた内2割前後の方が手を挙げます。インターネット、書籍などで勉強したり、会社で研修を受けたりと手段は様々ですが、コーチングもビジネスパーソンに必要なスキルとしてだいぶ浸透してきたのだなと感じるようになりました。


コーチングとは本人が望む目標を達成するために、相手の中にある潜在能力を引き出し、その人自身が答えを創造できるように継続的に支援していくためのコミュニケーション・スキルです。ビジネスにおいては自発的・自律的な人材育成を目指すために学ぶ方が多いようです。


実際に、グローバルナレッジのコーチング研修でも受講者の半数以上が、プロジェクトマネージャやグループリーダーといった立場にあり、メンバや後輩を育成・指導するためのスキル修得を目的として参加されます。


続けて尋ねてみます。


「では、今までに相手の成長につながるような"教え方"について、どう教えればより効果的かを、書籍や研修などで学んだことがあるという方はいらっしゃいますか?」


するとどうでしょう。まったくといってよいほど手が挙がらなくなります。
後輩やメンバを育成していく上で、考えさせる以前に必要なことは「相手にきちんと教える」ことです。何が良くて何が駄目なのか、どういう行動を取って欲しいのか、仕事を進める上で必要な知識やスキルを教えることが重要なのです。何も教えずに「背中を見て学べ」「自分で考えろ」だけでは早期に理想の人材を育成することはできません。


ところが「相手に考えさせる」ためのコーチングは習ったことがあると言う人が多数いるのに対して、「相手に何かを教える」ことを習ったことがあると言う人はほとんどいません。これはなぜでしょうか。おそらく以下の様な経験や考えが教える側の中にあるのではないかと考えられます。


・教えるスキルを意識したことがない → 上司を手本に真似してやっている
・教え方よりも教わる側の受け止め方が大切だ → 後輩や部下が理解すればよい
・わざわざ教えるスキルを学ぶ必要はない → 伝えるだけなら自分流で問題ない
・特別なスキルではない → 習わなくても問題なく今まで来られたから


ところで皆さんが学生だった頃を思い出してみてください。上手に教える先生の授業は理解し易かったという体験は誰でもお持ちのことでしょう。理解できれば、さらに学ぶことに楽しみを感じられるようにもなったはずです。


社会人であっても同様です。教え方ひとつで相手の理解力や理解・納得にかかる時間が変わります。その結果、相手の取る行動にいたる背景や考え方に大きく影響を及ぼします。
後輩や部下を育成していく際に、相手に考えさせる事も大切ですが、まずは相手が理解できるようにきちんと教えたり、伝えたりして行くことが、育てる側が一番にすべきことなのです。後輩やメンバを指導・育成して行く中で、より効率的に、効果的に相手に教える力を身につけてこそ、前述のコーチング・スキルもより活きてくるのです。「教える」スキルと「考えさせる」スキルをバランスよく身につけて、部下・後輩の育成に活用してみてください。


グローバルナレッジでは「後輩の教え方・育て方」で、OJTを効果的に進めるために、ティーチング・スキルとコーチング・スキルの両面から学習することができます。
また、コーチングをさらに身につけたい方にはビジネスの場面で使用できる「ビジネス・コーチング」、目標支援のための「マネジメント・コーチング」があります。

 

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高橋 俊樹(たかはし としき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。
1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、2001年より現職。プレゼンテーション、ネゴシエーション、コーチングなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
ITpro skillup 2007年3月より連載中「コミュニケーション・スキル講座」

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[後輩指導・OJT][2009年7月28日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第45回: 新人だと「バレない」こと!?
執筆:田中 淳子

「新入社員のことを、お客様に"新人です"って紹介してる?それとも、"新人"だってことは敢えて言わない?」

 

 ある企業でのOJT担当者向けフォローアップ研修で、一人の参加者が周囲に質問を投げ掛けました。

 

 面白い疑問だと思ったので、その場にいた20人ほどのOJT担当者に伺ってみると、「新人です、と紹介する」派と「新人です、とは敢えて言わない」派は、ほぼ半々という結果になりました。

 

 それぞれに理由があります。「新人です、と紹介する」派は、「お客様にきちんと紹介することで、新人にも自覚を持ってもらう」「多少の粗相があっても、お目こぼしがいただけるのではないか」と言います。

 

 一方で、「新人です、とは言わない」派は、「お客様の前では新人も何もない、新人にも、一人前として扱われることを自覚させたい」「お客様に、新人を連れてきたと不安にさせないように」などという理由を挙げました。

 

 どちらも一理あるように思います。

 

 新卒で入社した会社で、私は半年の修行の後、お客様向けに「FORTRAN入門」といプログラミング言語の研修でデビューしました。その際、先輩と共に懸念したのは、「新人だ」とバレてしまうのではないか、でした。

 

 「もしかすると、新入社員ですか?」「田中さんは、若く見えるけど、何歳ですか?」などと聞かれた場合の対応法を相談したら、先輩にこうアドバイスされました。「即答せず、"何歳に見えますか?"と質問を返してごらん」。

 

質問している側も、たいてい「24-5歳?」と少し上に言うものなので、そうしたら「はい、だいたいそんなところです」と返答すればよいと。

 

 尋ねている側も、「まさか講師がデビューしたての新人ってことはないよね」と思う部分もあるので、相手に不安を与えないように、先方が言う年齢を聞いて、「だいたいそうです」と答えるほうが安心させられる、というわけです。(グローバルナレッジでは、新卒採用をしていないので、今はこういう心配をすることもありませんが。)

 

年齢を気にすると言えば、以前、こんなこともありました。SQLの研修を担当していた20代後半の講師が、参加者にデモンストレーションを見せる際のこと。

 

「では、名前には、私の名前、KOJIMAと入力します。」「次に、年齢のところには、22、と」・・・。こうやってデモンストレーションが終了した後、後ろでご覧になっていた研修担当者が、講師ではなく、担当営業にあとでこっそり、問い合わせをなさったそうです。

 

「あのコジマさんという講師は、もっとベテランかと思っていたけど、新人なんですか?そんな若い人を派遣するなんて、大丈夫なんでしょうか?」と。担当営業は何のことか分からず、きょとんとしてしまったのですが、講師自身に確認したところ、デモンストレーションで入力した年齢が原因と判明しました。

 

研修のご担当者には、「彼女は、入社6年目か7年目なので20代後半ですよ」とお伝えし、事なきを得たとか。

 

年齢と仕事ぶりとは必ずしも関係ない、とは言え、やはり、他人の年齢が気になる方もいらっしゃるし、「若いこと」を自分自身が気にしてしまうこともあります。(もちろん、「若くないこと」を気にするケースもあります。)

 

冒頭のケースでは、その場の話し合いで、OJT担当者と指導を受けている新入社員とで話し合って方針を決めればいいのではないか、ということになりました。「こういう理由でこうする」と軸さえ明確になっていれば、それぞれの紹介方法のメリットが生かされるはずです。

 

この研修の最後に、「新入社員がどこまで育ったらOKとするか」といった議論もしました。「新入社員の成長度合いを測る指標」について、全員でアイディア出しをしたのです。

 

「一人でヒアリングし、提案書を書き、顧客に説明できるようになる」「ある業務を聞いた時、それは誰が担当なのかがわかるようになる」「自分の担当業務を全くの部外者に分かりやすく説明できるようになる」など具体的な「行動」が挙げられました。その中のひとつに、こういう指標もありました。

 

『お客様に"新人だ"ということがバレないようになる』

 

「"そういえば、まだ新人さんでしたよね"と、先方も忘れてしまうほどになれば、新人時代は卒業かなと思って」とそのOJT担当者はおっしゃいました。

 

なるほど。自分も他人も「新人かどうか」が気にならなくなること。それが一番の「成長の証」なのかも知れません。


***

  •  「OJT担当者向けワークショップ」(1社向け)
    OJT開始前後に行うOJT担当者向けの研修です。「どんな人材に育てたいか」「指導計画の立て方」といった「どう教えるか」「考える人材に育てるためのコーチングスキルの活用」「やる気を刺激する方法」など、OJTの準備と運営で必要な」知識とスキルを学びます。OJTで使える書式を作成し、具体的ノウハウを学び、活用法も考えます。2003年開講以来、多くの企業で採用していただいております。
     

  • 「OJT担当者向けフォローアップ研修」(1社向け)
    OJTが始まって3ヶ月から半年経った頃に、「OJTの成功事例」や「困っていること」を共有したり、議論したりする研修です。OJT担当者同士の交流を図ると共に、知恵の共有を推進することができます。
  •  

    定期開催では・・・

  • 「後輩の教え方育て方」<1日コース>
    もあります。


    *お知らせ*
    田中淳子がブログを始めました。人材育成の現場で見聞きしたこと、新入社員を始めとする若手社員のOJTの事例、本の紹介などしています。

  • 「ヒューマン・スキルの道具箱」

       

       


      田中 淳子 (たなか じゅんこ)

      グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

       

      【ブログ】 
      「ヒューマンスキルの道具箱」
       

      【著書】
      『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
      『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

       

      【連載中】 
      日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

       


      [後輩指導・OJT][2009年6月16日配信]

      わくわくヒューマンスキルコラム
      第35回:「国語辞典」を使っていますか?
      執筆:田中 淳子

      新入社員が配属され、OJT真っ只中のこの時期、OJT担当者やその上司の中には、「新人が書いてくる文章に誤字が多くて、大変だ」とか「添削に数時間かかってしまう」と嘆いている方も多いことと思います。
      彼らが提出する文章を上司やOJT担当者が赤ペンで一生懸命修正し、戻す。新入社員は、上司やOJT担当者から真っ赤な状態で戻された文章を、「指摘された箇所をそのまま直す」。そんな作業を繰り返している職場が多いようです。


      「新入社員に文章力をつけさせたい」と思う一方で、上司やOJT担当者は丁寧に添削してしまいます。「添削する」という方法を取ることで、新入社員からは「自分で考えて書く」というプロセスが抜け落ち、結果的に「文章力の向上」につながらないという皮肉な結果が生じるのです。
      上司やOJT担当者が赤ペンで修正箇所をより多く指摘するより、新入社員自身によりよい文章、よりよい言葉選びをさせるほうが教育効果は上がります。では、何をすればよいのでしょうか?


      今年、ある企業で新入社員研修を実施した時のことです。新入社員には毎日「研修受講報告書」を書かせるというカリキュラムになっていました。その企業では、前日書いた報告書から簡単にコピー&ペーストできないよう、A4サイズ分の報告書を手書きで記述するよう指導していました。「報告書を書く経験を積むこと」はもちろんのこと「文章力を向上すること」や「日本語力を磨くこと」も意図していました。


      新入社員が提出する報告書には誤字脱字が多く、中には創造力溢れる漢字が使われている場合も少なくありません。たとえば、「講義」は「講議」、「習得した」は「取得した」と書かれています。「協調性」と書きたかったのでしょうが、「共丁性」と書いてあったり、「結束力」と書くつもりだったらしい言葉は、「決足力」となっていたりもします。既に学生時代から手書きで文字を書く機会が減っているため、A4サイズ1枚の報告書でもひとつの誤字なしに書けるという人はほとんどいないのが現状です。漢字だけではありません。言い回し・表現も適切でないものが選ばれている場合が多々あります。

      今年は、この企業で「新入社員に国語辞典を持参してもらう」ことを当社から提案しました。「学生時代に使っていたぼろぼろの辞典でもいいから、自宅から持参するように」と入社前に連絡していただいたのです。その結果、新入社員のほぼ全員が自席に国語辞典を置いて新入社員研修に臨む姿が見られました。

      その結果興味深い変化が起こりました。


      1.レポートの誤字脱字が激減した
      ⇒ レポートを書く際、あてずっぽうで書いていた漢字を調べてから書くようになったため、間違いが減った

      2.レポートでの表現において、より適切な言葉を選ぶようになった
      ⇒ 辞典を引き始めると、単に正しい漢字を探すだけではなく、「どういう表現を用いればより自分の考えを的確に表現できるか」を考え、言葉を探し、選ぶようになった

      3.他者と言葉に関する議論をするようになった
      ⇒ グループ・ディスカッションで成果を模造紙にまとめる作業でも、「こちらの表現のほうがより良いのではないか」と言葉について活発に議論していた

      「国語辞典を手元に置いておく」という、たったそれだけのことで、誤字脱字が減るだけでなく、表現する際の言葉遣いに敏感になる、という効果が生まれたわけです。

      手近に調べるためのツールがあれば、誰でもそれを使うようになるものです。自助努力の範囲で、正しい言葉遣い、正しい漢字を調べ、レポート作成も行えます。調べる楽しさを知ると、辞典を使って言葉探しをすることがさらに面白くなってくるようでした。

      「机に国語辞典を置いておきなさい。わからないことは調べなさい」---。

      OJTの現場でも、新入社員にそう指示を出してみてはいかがでしょう。チームで国語辞典を共有物として用意するのもよい方法です。自分で調べて新しいことを知る、調べてみたら忘れていたことを思い出す、というのは、人間の知的好奇心を刺激する要素でもあります。調べることが習慣化すれば、文章力も日本語力も自ずと向上してきます。

      ところで、「ぼろぼろでもいいから」と伝えたものの、新入社員の皆さんが持参した辞典は全部ピカピカでした。なぜなら、全員が"電子辞書"を携えてきたからです。時代の変化を感じる光景でもありました。


      ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
      第二新卒の方、10月入社の方、配属後再度コミュニケーションを見直したい方のための特別コースをご用意しました。
      「仕事の基礎力」(1日間)
      「新入社員のためのコミュニケーション&プレゼンテーション」(3日間)
      2008年秋に各コースとも1回のみ開催いたします。
      一人前のビジネスパーソンになるためのビジネスマナーや、コミュニケーション・プレゼンテーションの基本を短期間で修得します。


       


      田中 淳子 (たなか じゅんこ)

      グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

       

      【ブログ】 
      「ヒューマンスキルの道具箱」
       

      【著書】
      『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
      『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

       

      【連載中】 
      日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

       


      [後輩指導・OJT新人社員研修][2008年8月19日配信]

      わくわくヒューマンスキルコラム
      第34回 気持ちを「形に表わす」こと
      執筆:岩淺こまき

        はじめまして。岩淺こまきと申します。昨年、グローバルナレッジのメンバになりました。初めての転職ではないので、新しい環境や新しい職場への出社初日も慣れたものになっていました。出社初日というと、どの企業でもほぼ似たようなことを行うからです。しかし半年以上が経過した今でも、グローバルナレッジの出社初日は、昨日の事のように鮮明に思い出せます。


        まず人事部主催のオリエンテーションを終え、その後自分の席に案内されました。オリエンテーションの際、配属先であるヒューマン・スキル部門のメンバは全員外出をしていると聞いていたので、当然周りには誰もいません。席につき「さて、オリエンテーションの際、指示された作業をしよう」と自分の机の上を見ると、そこには「一冊の本」と「缶ジュース」が置いてありました。なんだろうと思いながら本を開くと、そこには


        「入社おめでとう!仲間になってくれてありがとう!!」


        と書かれた「手書きのメッセージ・カード」が挟んでありました。当社の先輩講師が、自分の執筆した書籍にカードを添え、プレゼントしてくれていたのです。缶ジュースには、上司からのメッセージ・カードも添えられていました。・・・驚きました。初めての経験でした。


        驚きが収まった後、PC環境が正常に利用できるか確認するため、予め設定されているメールソフトを起動しました。すると、今度は、


        「メンバ一同、入社を心待ちにしていたのですよ。」
        「これから一緒に頑張りましょう。期待しています!」


        といった「WELCOMEメール」を次々受信してきたのです。入社日前日に、ヒューマン・スキルのメンバ全員から、それぞれメールが送られていたのでした。


        二度目の驚きが収まった時、「仲間として迎えられている」という安心感を持ちました。「あぁ、私はここで仕事をしても良いのだな」と、新しい環境で多少の不安を抱えていた自分を認識するとともに、気持ちが楽になったのでした。「よし、頑張ろう。もし、私の次にまた新しい人が入ってきたら今度は私が同じことをしてあげよう」と心に固く誓いました。


        この出来事は、要約すれば「出社初日WELCOMEメールが届いていました」という、これだけの事なのかもしれません。少し意地悪な見方をすれば、「みんなヒューマン・スキルの講師なのだから『こうすれば喜ぶだろう』という理論に基づいて、形だけ整えただけじゃないの?」と捉えることも出来るでしょう。(幸い形だけではありませんでした)


        もし仮に形を整えたのだとしても、「気持ちを形に表わすこと」は、時に必要なのだと私はそのとき思いました。その行動がある程度頭で考えたことだとしても、受け手がそれをプラスに受け止め、やる気が上がったり、チーム内の結束が強まったりするなどの良い効果が生まれるなら、その行為には意味があるのです。表現しなければ相手には何も伝わりません。重要なのは、形からでもよいので、まずは相手に伝わるよう行動を起こすことなのです。


        この時期は、新しい部署に異動された方やはじめて配属された新入社員の方も大勢いらっしゃることでしょう。傍目にはどんなに落ち着いて見える人でも、どんなに経験を重ねている人でも、周りが想像する以上に、新しい環境に不安を感じているものです。


        「今年は5名新入社員が配属になるらしいね」「また新しい人が採用されたんだってね」と話題にするだけでなく、新しいメンバが入ってくることを職場全体の「イベント」として捉えてみてはいかがでしょう。出迎えるためのアイディアを出し合い、「WELCOME」の気持ちを、まずは形に表してみるのです。難しいことでなくてもかまいません。例えば私が体験したような「手書きのメッセージをプレゼントする」「WELCOMEメールを送る」などの簡単なことからでも、できることが沢山あります。


        「あなたが仲間になってくれて嬉しい」。それを伝えることが第一歩です。


        グローバルナレッジの「後輩の教え方育て方 ~OJTの効果的な進め方とスキル~」研修では、「人財育成」に必要なスキルやノウハウを体系的に学びます。「OJT担当者向けワークショップ研修」では、OJTの現場ですぐに活用できるツールを研修内で作成します。新しい方を迎え入れる準備を、一緒に考えましょう。


      グローバルナレッジでは、「コミュニケーション」を軸に、様々な仕事を進める上で必要なスキルを研修のコースとしてラインアップしています。技術や知識をより活かすためのヒューマン・スキルをブラッシュアップしてみませんか?



      岩淺こまき(いわあさこまき)
      グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育トレーナー。
      1997年、システム販売会社に就職し、営業技術支援および導入企業向けの研修を担当。
      人材紹介会社にて中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て2007年より現職。
      プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。


      [後輩指導・OJT新人社員研修][2008年7月22日配信]

      わくわくヒューマンスキルコラム
      第30回 新社会人の皆さんへ - 「自ら考え行動すること」
      執筆:田中 淳子

        「自分で考え、行動する人材になってほしい」。多くの企業が新入社員に期待する事柄として第一に挙げるメッセージです。新入社員には「自分で考え、自分から行動を起こす」ことが非常に難しいと感じられるかもしれません。配属されてみると、「新人の私にはなかなかできない」「上司や先輩が環境を整えてくれたらいいのに」と思う場面にも多々遭遇してしまうものです。働く環境も自分を取り巻く事態も太刀打ちできないものに思えることでしょう。
        しかし、何も難しいこと、高度なことを「自分で考え、行動せよ」と先輩たちが言っているわけではありません。まずは、身の回りで手が届くことから、始めてみればよいのです。


        配属先に出社した初日のこと。新入社員Aさんは、元気よく「おはようございます!」と挨拶しましたが、先輩たちは返事をしてくれませんでした。数日経ち、「おはようございます」だけではなく、「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」などの声掛けが少ない職場なのだと気づきました。たいていの人なら、「誰も返事をしてくれず、むなしいからやめよう」と思い、自分も挨拶をやめてしまうところです。ところが、Aさんは、来る日も来る日も、「おはようございます」「お疲れ様でした」と元気に声を掛け続けてみました。「挨拶は社会人として基本の行為だ」と自分で考えたからです。
        しばらくすると、先輩の一人が挨拶を返してくれました。その内徐々に返事してくれる人が増えていきました。数ヵ月後、Aさんの職場では、全員が挨拶を交し合うように変わったと言います。
        職場の雰囲気を変えるのは難しい。多くの人がそう思います。でも、こんな風にたった一人の新入社員が周りを動かすこともあるのです。


        別の例です。
        新入社員の常として、誰もが職場の電話をとるように言われます。取ったところで、自分宛であるわけもなく、誰かに取り次ぐことになります。ところが、「○○課長いらっしゃいますか?」と言われても、当の課長は離席中。しかもその理由が分からない場合もあります。「電話を取っても、上司や先輩がどういう理由で離席しているかわからないので困る。居場所は明確にしてほしい」と、他の新入社員は不満を漏らしていました。そんな中で、新入社員のBさんだけは違いました。
        Bさんは、こう言います。「配属直後は僕も上司達の居場所が分からなくて困りました。でも、上司や先輩の予定を押さえておけばいいのだと気づきました。最近は出社したら、まずスケジューラを開いて、上司や先輩の1日のスケジュールを確認することにしています。」
        「仕事をしやすい環境を周りが用意してくれないから私も本来の力を発揮できない」というのは、新入社員に限らず、誰もが思いがちなことです。そう言ってしまえば、うまくいかないのは自分の責任ではないと思えますし、「周りが協力してくれればできるのに」と自分に対して言い訳も立つからです。
        でもこのBさんのように、「どうすれば自分の仕事がしやすくなるか」を考えた結果、上司や先輩のスケジュールをあらかじめ確認しておくことを思いつき、行動に移す人がいます。「上司や先輩の居場所がわからないから困ると言う人」と、「自分で考え上司や先輩の行動を押さえようと動く人」。ビジネスパーソンとしての今後の成長度合いに大きな差が開くのではないか、と思ったエピソードです。


        新入社員の皆さんは、色々とやってみたいこともあることでしょう。配属されてみたら、与えられる仕事が考えていたものと違っていたり、必ずしも自分の希望通りではなかったりすることもあります。でも、その時々で、状況をよく観察し、自分や自分を取り巻く環境をより良いものにするにはどうしたらよいかを考えていくと、新人の自分でもできること、すべきことがある、と気づくはずです。


        新入社員に求められている「自ら考えて動く」とは、いきなり大ヒットを打つような仕事振りを遂行することではなく、与えられた仕事について、自分ならではの考えや工夫を盛り込むことから始まります。小さな仕事であっても、日々の職場での振舞いであっても、そのひとつひとつを常に自分で考え、意思を持って取り組むこと。どんなことに対しても「自ら考えて動く」ことを自分に課していれば、それが企業で期待される人材像へと向かう第一歩となることでしょう。


      仕事の基礎力 ~新入社員のためのルールとマナー~」(HS0039CG)
      新入社員や若手社員に必須のビジネスマナー、仕事をする上で守るべきルールなどを体系的・実践的に学習します。
      テキストは「全ページ」カラー、イラストも豊富で、受講後に「ガイドブック」のように活用できます。

       


      田中 淳子 (たなか じゅんこ)

      グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

       

      【ブログ】 
      「ヒューマンスキルの道具箱」
       

      【著書】
      『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
      『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

       

      【連載中】 
      日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

       


      [後輩指導・OJT新人社員研修][2008年3月25日配信]

      わくわくヒューマンスキルコラム
      第23回 人に教えることの難しさ
      執筆:高橋 俊樹

        16年前になります。私が新卒で入社してすぐ2ヶ月に渡る新人研修が始まりました。1クラス約30人、全体で8クラスほどあったと記憶しています。クラスにはそれぞれ担当となる先輩社員が1名ついて、ビジネスマナーから業務に必要なスキルまで多岐に渡る研修を実施します。研修初日、どんな先輩がきて、どのような研修が始まるのだろうと少しどきどき、わくわくしていた中で、私のクラス担当になった先輩社員は教室に入ると、とても嬉しそうな表情で入社のお祝いと期待の言葉を述べてくれました。第一印象がとても良かったのを今でも覚えています。その後2ヶ月間、新人の目線で接し、分かり易く教えていただき、様々な知識やスキルを楽しみながら習得することができました。クラスの誰もがあの先輩のような社会人になりたいなという尊敬や羨望の眼差しで見ていました。


        現在、私は教育事業に携わり、ヒューマンスキル関連の研修を主に実施しています。入社した時のクラス担当の先輩と対象者は異なっても、同じように、「教える」ことを生業としています。自ら教育に関わるようになって感じるのは、人に何かを教えるという当たり前の行為がとても難しいということです。研修の場だけでなく日々の業務の中でもうまく伝えられない、言ったことを理解してもらえないなどとてももどかしい思いをすることがあります。


        誰かに何かを教えるという場面は誰しもあることだと思います。例えばOJT担当者が新入社員に対して業務に必要な技術について教える、上司が部下に対して仕事の進め方を教える、社外のお客様に対して自社製品の概要や操作方法などについて教えるなどです。そういった時、どのように教えればよいか迷ってしまうことはありませんか?


        自分が誰かに何かを教わった場面を思い出してみてください。とても分かりやすい教え方で、理解が進んだという事もあるでしょうし、逆に、余計分からなくなったということもあるはずです。分かりにくい教え方は、結果として時間も無駄になりますし、相手の理解が誤っていると、その後の仕事にも大きな影響を与える恐れがあります。それでは何故、分かりやすい教え方ができる人と、できない人がいるのでしょうか。これは学習効果の高い教え方を知っているか、知らないか、また、教えることそのものに対して持っている意識の差から来ているものだと思います。


        私も教育に関わるようになってから、冒頭の先輩の教え方はとても上手だったと気付きました。いくつか思い出してみると、ほんの一部ですが以下のような例があります。


        ● 一方的に進めるのではなく新人のレベルに合わせて理解を確認しながら伝える
        ● 興味を持てるように実際の体験談をもとに、具体例やたとえ話などを多く盛り込む
        ● 何故、そうする必要があるのかの理由や、しないとどうなるかを伝え、考えさせる
        ● 学ぶべきスキルや知識に最もマッチした演習や実習を盛り込む


        そして最も大きかったのが、当時新人であった私達に対して、学生、子ども扱いするのではなく、同じ社会人、同じ会社の一員だということを常に意識し、同じ大人として接してくれたことでした。もちろん新人ゆえの言動で叱られたこともありますが、それもすぐに指摘された点を改善できるような言い方だったと記憶しています。


        人に何かを教えるのはとても難しいことです。しかし、より効果の高い学習を行うための基本となる技術はあります。単に「知っているから」「その分野の専門だから」「説明できればよいから」ではなく、貴重な時間を割いて行うものだからこそ、しっかりと大人に対する教育の考え方やスキルを身につけておきたいものです。


        毎年、春は多くの企業の新人研修に関わっています。その中で、学習目標をきちんと達成し、必要なスキル・知識を身につけていただくことはもちろんですが、くわえて、自分自身、当時のクラス担当だった先輩のようになれているのかな、ということを今でも思い出すようにしています。


        「トレイン・ザ・トレーナー」(ON258) では、成人に対する学習の考え方に基づき、「教える技術」を強化し、質の高い研修を提供するための知識とテクニックを学び、研修の現場でそれらを実施・応用できるようになることを目指します。



      高橋 俊樹(たかはし としき)
      グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。
      1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、現職。ビジネススキルグループのマネージャ兼インストラクターとして、新人から管理職までを対象とした各種ヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。


      [後輩指導・OJT新人社員研修][2007年9月 7日配信]

      わくわくヒューマンスキルコラム
      第20回 新入社員の受け入れ態勢は整っていますか
      執筆:高橋 俊樹

        今年の新入社員が4月に入社してから早くも2ヶ月近くが過ぎました。民間企業の求人数も右肩上がりで08年卒業予定の求人数は1991年以来17年ぶりに過去最多数を記録し、採用活動は今後も大変な状態が続きそうです。
        さて、そのような中、皆様の会社の新入社員受け入れ態勢は準備万端でしょうか?採用活動が激しさを増す中で、貴重な新入社員をどのように育てていくかは重要なテーマですし、今年の新入社員に限らず来年、再来年の後輩社員へと継続し、会社の組織全体に波及する問題でもあります。
        最近では、単に職場の先輩社員に新入社員の面倒を任せるのではなく、OJT(*)を制度として捉え、先輩社員、新入社員双方の育成を目的として実施する企業が増えています。ではどのような点に留意すればよいのでしょうか?
        ※OJT(On The Job Trainingの略)職場において行われるトレーニング


        OJT制度をきちんと運用していくためのポイントは、3つあります。



      ① 「期待する人材像」の明確化
      ② 指導計画の作成(何を、いつ教えるのか)
      ③ コーチング、ティーチングを組み合わせた指導



      ----------------------------------------------------
        ① 人材像の明確化
      ----------------------------------------------------

        多くのOJT担当者がOJTを任された際の不安要因としてあげるのは「どこまで育てれば良いのか分からない」という点です。
        この問題を解決するためには、ゴールの人材像を明確にしておくことが重要です。OJT終了時(一般的には先輩社員から手離れする2年次にあがる時点)に新入社員にどのような人材になっていてほしいのかをまず決めなければいけません。実際に新入社員からこのような話を聞くことがあります。


        「今やっていることが何につながるのか、何の役に立つのか分からない」


        「まだまだできないことが多く、成長している実感が湧かない」


        「自分には何を期待されているのかが不明である」


        このような声があがるのは、OJT担当者が新入社員に期待する目標が描けておらず、双方で明確に共有できていないことにも起因しています。最初に、新人に期待する人材像を明確にしておきましょう。



      ----------------------------------------------------
        ② 「指導計画」の作成
      ----------------------------------------------------

        目標が明確になれば、それに向かって何を教えれば良いのか、またどのタイミングで教えればよいのかが把握でき、計画も具体的に立てることができます。育成の計画を立てておけば、目標に向かってどこまで成長できていて、足りないものは何なのか進捗を確認しやすくなりますし、目標達成に向けた動機付けにもなります。これは皆様が毎年、自分の業務の目標設定をして、その目標に対して業務計画を立てるのと同様です。



      ----------------------------------------------------
        ③ コーチング、ティーチングを組み合わせた指導
      ----------------------------------------------------

        さて、OJT担当者による指導が始まると、OJT担当者が悩むのは「どのように教えたら良いのか」ということです。指導方法には大きく分けてコーチングとティーチングの2種類があります。ティーチングが指示・命令を中心とした指導方法であるのに対して、コーチングは相手に考えさせ、相手自身から答えを導くという方法です。コーチングは自律的な行動を引き出しますので、新入社員の指導の際にも大変効果的です。


        とは言え、知識や経験が浅い新入社員に、すべてコーチング手法を用いて考えさせるのには無理があります。新入社員に対して、まずはより学習効果を高めるティーチングの技術、コツを知っておくことが必要です。効果的なティーチングは新入社員の早い成長を促すだけでなく、今後、OJT担当者がリーダーなどの役職に付いた際、メンバや後輩の指導・育成をする際にも役立つはずです。自分自身が教えてもらった時のこと、また周囲の上司や先輩などの指導の仕方を改めて観察してみるだけでも様々なヒントが得られます。


        ここでご紹介したのは、OJTを効果的に運用していく上で特に重要な3つのポイントです。新入社員を早く一人前の人材に育成するためには、上記のような工夫、取り組みが大きな効果をもたらします。また、OJT担当者だけに任せきりにせず、組織をあげて協力し新入社員の育成に取り組んで行くことが必要なのは言うまでもありません。
        多くの企業では、そろそろ新入社員の合同研修も終わりに近づき、配属に向けて慌しい時期を迎えていることでしょう。皆様の職場では新入社員に対するOJTの準備は整っていますか?


        (*)2007年7月に無料セミナー『「人を育てる」仕組みとOJTトレーナーの役割』を開催いたします。


      (*)OJT担当者のためのコーチングスキル実践
        OJT担当者が、若手社員に「何を」、「どのように教えればよいか」を学習します。OJTとは何か、何を教えればよいのか、さらに、目標設定の仕方や指導方針の作成までを演習をしながら学びます。特に「どのように」の部分では、自発的に考え行動する若手社員を育てるためのコーチングについても学習します。


      (*)OJT担当者向けワークショップ
        OJT担当者に任命された方がOJT開始前に準備すべきことからOJT進行中の指導方法までを考え、計画作りをするためのワークショップです。スムースにOJTを開始できるよう、OJTで使える様々なツールを実際にOJT担当者同士でディスカッションしながら作成していきます。


      (*)OJT担当者上司向けセミナー ~OJT担当者の支援と部下のコーチング~
        OJTをうまく進めるためには、新入社員を組織全体で育成するという意識を持つ必要があり、上司はその要の部分を担っています。OJT担当者が作成した「人材像」や「指導方針」「指導計画書」などの成果物を上司が理解し、OJTがスムースに進行するようサポートするためのコーチングスキルも学習します。
      このセミナは、「OJT担当者向けワークショップ」とセットで開催します。



      高橋 俊樹(たかはし としき)
      グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。
      1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、現職。ビジネススキルグループのマネージャ兼インストラクターとして、新人から管理職までを対象とした各種ヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。


      [後輩指導・OJT新人社員研修][2007年5月21日配信]

      わくわくヒューマンスキルコラム
      第9回 新入社員のOJTを成功させる秘訣
      執筆:田中 淳子

        ITエンジニアとして採用された新入社員が各部署に配属され、職場でのOJT(On the Job Training)が始まるのはたいてい6月~7月です。
        グローバルナレッジでは、OJTトレーナー(新入社員の指導担当者として人事部や上司などから任命された人)とOJT制度を支援するために、いくつかの研修プログラムを行っています。研修を通じて各社のOJTを見てきた経験から、OJTを成功させるための秘訣を3つ挙げてみましょう。


      1.職場全体を巻き込む
        新入社員をきちんと育てるためには、OJTトレーナーの「教える意気込み」や「上手な教え方」「きめ細かい接し方」などが不可欠です。ただ、育成の全てがOJTトレーナーの責任かといえばそうではなく、職場の上司やOJTトレーナー以外の先輩社員も新入社員の育成に少なからぬ影響を及ぼしていることを忘れてはなりません。
        「新入社員は、職場全体で育てるのだ」という意識を部門内で共有し、OJTトレーナーだけではなく、上司や他の先輩も皆で新入社員を見守り、指導し、時には褒めたり、注意したりしていかなければなりません。
        OJTがうまく行かない例がいくつかあります。
        例えば、「専任のOJTトレーナーがいるのだから、私が口出しすることはあるまい」と他の先輩が新入社員と距離を置く場合があります。こうなると、新入社員の育成は、OJTトレーナーひとりの肩に重くのしかかかってしまうことになります。
        OJTトレーナーが出張や休暇で不在になると、新入社員が放置されてしまうという問題もよく起こります。OJTトレーナーの不在期間は、育成の代行を決めておくことで、新入社員が放っておかれるという事態を防ぐことができるのです。
        「職場全員で育成する」風土を醸成するために、「OJTのキックオフミーティング」を開くこともお薦めします。これにより「どんな人材に育成したいか」「日ごろどのように接するか」など社員間で意識を合わせることができるからです。


      2.自分が育てられた時代や環境に固執せず、新入社員を受け入れる
        長いキャリアをお持ちの方から「部下をどう褒めればよいかわからない」、「きつく叱ってはいけないのか」、「黙って言う通りにしろというのはダメなのか」などと言われることがあります。また、「自分が若い時は上司の指示通りに仕事をした。いちいち目的など聞かなかったが、今の若手社員は "なぜですか?" "目的は?" と聞き、理由がわからないとなかなか動かない」と嘆く声も聞きます。確かに、少し前までは、部下は上司の言う通りにすること、先輩の指示に従って後輩は動くことが当たり前だったのかも知れません。若いうちは理由など考えず、ただがむしゃらに邁進すればよかった時代もあったでしょう。
        しかし、時代と共に、新入社員の考え方は変わってきています。ここ数年は特に、「仕事を通じて自分の成長を実感したい」「きちんと納得した上で仕事に取り組みたい」と考える人が増えています。育成する側もそういった考え方や職業に対する態度の変化に対応していかなければなりません。
        年長者は、おそらく、自分が習ってきたのと同じように新入社員と接してしまうのでしょう。ところが、新入社員の反応は、想像と異なっており、そのことに戸惑いを感じてしまうのです。ベテランが育った時代にはその時代ならではの方法があり、現在の若手が育つためには、それに合った別の方法がある。これはどちらがよいとか悪いと言った話ではなく、互いにそれぞれの方法を受け入れることがもっとも建設的な気がします。
        上司や先輩は頭を柔軟にして、その時その時代に合った方法で新入社員の育成に取り組んでいく必要があるのです。


      3.OJTトレーナーに発散の場を
        OJTトレーナーは、日々「育っていく新入社員を見守る楽しみ」を感じると共に、「大変さ」も味わっています。
        たとえば、あるOJTトレーナーは、何度話しても理解してくれない新入社員に、どう対応すればよいのかと悩んでいました。新入社員が作成した書類の改良点を指摘しただけで激しく落ち込んでしまったため、徐々に「腫れ物に触るような」接し方しかできなくなったと困り果てている人もいました。もちろん、慣れない環境に置かれた新入社員の悩みも大きいのですが、教え育てる責任を持っているOJTトレーナーのストレスも相当なものなのです。OJTトレーナーとして苦労していること、心に思っていることなどをどこかに吐き出し、すっきりしたいこともあります。
        ある企業ではOJTトレーナー全員を毎月1回集めて、情報交換する場を設けています。進捗の確認ができるだけでなく、OJTトレーナー同士で気持ちが共有できることも意義のひとつです。「実は私も同じことで悩んでいた」「僕もそのことで随分苦労したんだ」――。OJTで遭遇した色々な悩みや問題を分かち合えるだけで、随分気が楽になります。
        こういった情報交換の場を作れなくてもできることはあります。職場の上司や先輩が、OJTトレーナーの話を時々聞いてあげることも、OJTトレーナーのモチベーション維持に役立つのです。


        希望に燃えて社会人になった新入社員。「後輩を育てる力がある」と見込まれて任命されたOJTトレーナー。それぞれが楽しく充実して過ごし、共に成長していくことができるよう、職場全体でOJTを支援していきたいものだと思います。


      ★グローバルナレッジでは、OJT制度を支援する以下の研修を実施しております。詳細は、担当営業かフリーダイヤル0120-009686 田中、高橋までお問い合わせください。


      ●『OJT担当者向けワークショップ』(HS0056CG)
      OJTトレーナーに任命された方が、何をいつどんな風に教え、育てればよいのか学ぶワークショップです。
      ●『OJT担当者上司向けセミナー』(HS0057CG)
      OJTトレーナーの上司向けセミナーです。OJTの支援方法を理解し、新入社員やOJTトレーナーにコーチングするためのスキルを学びます。
      ● 『OJT担当者向けフォローアップ研修』(HS0055CG)
      OJTが半年ほど進んでからのフォローアップ研修です。OJTトレーナー同士で課題を持ち寄り、残り数ヶ月のOJT期間でできることを決め、翌日からすぐ実行に移します。

       


      田中 淳子 (たなか じゅんこ)

      グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

       

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      【著書】
      『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
      『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

       

      【連載中】 
      日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

       


      [後輩指導・OJT新人社員研修][2006年6月23日配信]

          

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