わくわくヒューマンスキルコラム
第12回 1ヶ月前の自分から届いた手紙
執筆:田中 淳子
「チームワークとリーダーシップ」(*注)という2日間の研修コースがあります。チームとは何か、リーダーシップとは何かを学び、自分のリーダーシップの得手不得手に気づく内容です。この研修の最後に「1ヶ月後の自分にあてた手紙」を書く演習があります。「今はやってみようと思うけれど、1ヶ月も経つと忘れてしまうかもしれない。だから、1ヶ月後もちゃんと続けていますか?と自らに問いかけるような内容で手紙を書いてください」とお願いします。
参加された方は、思い思いに「自分あての手紙」を書きます。文章で書く方、「続けているかどうか?」とチェックリスト風で作成する方、イラストや絵なども盛り込む方、カラフルに作る方、まちまちです。完成した手紙は、コピーをとり、原本はご自分で持ち帰っていただきます。コピーを封筒に入れ、糊付けし、最後にお好きな切手を貼って講師に提出します。中に何を書いたかは、ご本人のみぞ知る状態。講師もあえて聞きません。
お預かりした手紙は、当社から1ヶ月後にお送りします。研修を受講したことも忘れかけた頃、参加者の皆さんの手元には、自分が1ヶ月前に書いた手紙が届く仕組みです。手紙が届くと、たいていの方は、一瞬「なんだろう?」と思うようです。宛名を見て、「どこかで見たことがある字だなあ」ときょとんとし、その後、「あ、自分で書いた、自分あての手紙だ」と思い出すのです。封筒を開けると、1ヶ月前に自分が考えていたことがそこに書いてあります。「あれをしよう、これをしてみよう」と研修時に決意したことを、1ヶ月経った今でも実践できているか、今一度再確認をしてみます。
手紙が到着したことを知らせてくださる方が時々いらっしゃいます。あるとき、受講者の方からこんな内容のメールを受け取りました。
田中さん、
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この方が1ヶ月前に受講されていた時のことを思い出しました。研修では、様々なグループワークがあり、色々な会社の方が混ざってディスカッションします。そこでとても熱心に参加されていた様子、細かくメモを取っていたことなど鮮明に目の前に浮かびました。明るく元気にお帰りになったことも。
研修に参加すると、その時は意外な発見や大きな刺激を受けて、「これには気をつけよう」と反省したり、「あれをやってみよう」と決意を新たにしたりするものです。ところが、何日か経つうちにその印象は薄らいでいき、日々の仕事に没頭していく中で、気づいたら「やろうと思っていたけど、できていない」「最初は気をつけていたけれど、やめてしまった」という事態になることのほうが多いと思います。少しでも行動が継続するきっかけになれば、という理由で、この研修では「1ヶ月後の自分あての手紙」という仕組みを取り入れています。
手紙をお預かりして、1ヶ月後に投函する。そこで私達の仕事は完了です。手紙がその後どう役立っているか、といったことは、このようにお知らせいただかない限り知ることができません。でも、こんな風に「やろうと決めたことは1ヶ月間忘れずに実践し続けてきた。手紙を読んで、1ヶ月前の自分に励まされた」と報告していただけると、しみじみと「よかったなあ」と思います。研修の内容が現場で役立っていることを教えていただくことは、私たち研修講師にとっても大きな喜びとなります。
それにしても、「今日も明日もがんばれ」、いい言葉ですね。
誰かに言われるのではなく、1ヶ月前の自分から「今日も明日もがんばれ」と言われる。その言葉に勇気づけられる。自分で自分を励ますことができるのだと教えられた出来事でもありました。
* 「チームワークとリーダーシップ」(ON026)
リーダーシップは、チームメンバの誰もがそれぞれの立場で関わり、果たすことのできる「機能」です。このコースでは、チームで働く際に起こる様々な事柄を題材に、チームワークとリーダーシップの各機能を学習します。
田中 淳子 (たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[チームワークと
フォロワーシップリーダーシップ][2006年9月25日配信]


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