わくわくヒューマンスキルコラム
第6回 リーダー自身が"腹を決め"実践する
執筆:田中淳子
「抱え込み症候群」―――。部下や後輩、チームのメンバに仕事を振ったり、任せたりすることができず、何でも自分でやってしまうことを指します。マネージャやリーダーの中にはこの症状が出ている人が案外多くいるようです。
最近、中堅のリーダーを対象とした研修(*)を数多く実施しています。リーダーやサブリーダーが集まり、実際のチームにおける課題を出し合い、どうすれば解決するかを1日かけて話し合うものです。研修終了時に解決策の中からいくつかを選び、具体的な行動目標を立てます。数週間後、再集合し、成果報告と新たな課題の議論をします。社内やチーム内の課題を詳細に話し合う内容のため、一社向けでのみ行っている研修ですが、単なる座学ではなく、「現場の問題」を具体的に話し合うことと、自分で決めた行動を実践した後でフォローアップを行うことが評価され、多くの企業で採用していただいています。
先日行ったある企業の研修で、「抱え込み症候群」の話をしました。「部下が育たない」「もっと自発的なメンバになってほしい」という課題が出されたので、「そもそも任せる気があるか」「自分が仕事を抱え込んで、部下に振っていないということはないか」と問いかけてみたのです。
参加者の中には、「確かに、自分も抱え込んでいるところがあるかも」「怖くて任せられないと思うからなあ」という声も多く上がりました。
色々と話し合った後、参加者の何人かが、解散時点で「まずは部下に仕事をふってみる」「自分でなくてもいいと思う仕事を思い切って任せる勇気を持つ」といった行動目標を立てました。
3週間後、フォローアップ研修で再会した際、部下に仕事をふることができたか、それによって、どんな気づきが得られたかなどを一人ひとりが以下のように報告してくれました。
- 「前回の研修で思い切って"自分の仕事の一部をメンバに任せてみる"という目標を立てました。研修の翌日すぐに、メンバにできそうな仕事を選び、"これを任せる、やってほしい"と渡しました。任せるのにはとても勇気が必要でしたし、任せた後も心配で仕方なかったです。でもしばらくして出てきた成果を見て、メンバが知らない間に成長していたこと、すごくできるようになっていたことを知り、自分でも驚きました。もっとメンバを信用して、仕事を任せていかなければいけないと思いました。」
- 「私も"仕事を任せる"という目標を立てましたが、どの仕事を割り振るかも含めて、メンバに相談しました。メンバ全員をすぐ集めて、"こういう仕事があるんだけど、どうしよう"とやらなければならない仕事全部をテーブルに乗せ、見せました。すると、メンバが"これは私、やりますよ""この部分は私に担当させてください"と手を挙げてくれたのです。今までは、自分ひとりで全部仕事を整理して、メンバにやってもらいたい部分だけを指示していたのですが、今回、仕事丸ごとを全員に示してみたら、意外にもメンバは自主的に手を挙げてくれたのです。もっと信用すればよかった、もっと早くから相談すればよかったと思いました。それに、メンバに相談できる、と思っただけでも自分自身がとても気持ちが楽になれました。」
この2例は、いずれもリーダーが自分で「任せる」と腹を決め、実践してみた成果です。メンバは、リーダーが気づかない内に育っていたという嬉しい発見もありました。
チームの何かを変えようと思ったら、変えようと思った本人が「具体的な行動を決めて実践する」しかありません。他人は容易に変えられないからです。リーダー自身が変わることで、メンバにもよい影響を及ぼすことができます。チームを動かしたければ、どんな些細なことでも、リーダーがまず実践してみることこそ大切なのだと改めて知った研修成果でした。
*この「リーダーシップ強化ワークショップ」(HS0053CG)は一社向けにのみ行う「チーム作りとリーダーシップ」をテーマにした研修です。チームにおける課題を棚卸し、どう解決すればよいかを議論します。1日目が集合研修で、2-3週間の実践期間(OJT期間)を経た後、再集合します。フォローアップ研修は、半日ずつです。したがって、一人が参加するのは、1.5日となります。詳細は、当社Webコース案内か、担当営業までお問い合わせください。
田中 淳子 (たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[リーダーシップ][2006年3月22日配信]


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