わくわくヒューマンスキルコラム
第9回 新入社員のOJTを成功させる秘訣
執筆:田中 淳子
ITエンジニアとして採用された新入社員が各部署に配属され、職場でのOJT(On the Job Training)が始まるのはたいてい6月~7月です。
グローバルナレッジでは、OJTトレーナー(新入社員の指導担当者として人事部や上司などから任命された人)とOJT制度を支援するために、いくつかの研修プログラムを行っています。研修を通じて各社のOJTを見てきた経験から、OJTを成功させるための秘訣を3つ挙げてみましょう。
1.職場全体を巻き込む
新入社員をきちんと育てるためには、OJTトレーナーの「教える意気込み」や「上手な教え方」「きめ細かい接し方」などが不可欠です。ただ、育成の全てがOJTトレーナーの責任かといえばそうではなく、職場の上司やOJTトレーナー以外の先輩社員も新入社員の育成に少なからぬ影響を及ぼしていることを忘れてはなりません。
「新入社員は、職場全体で育てるのだ」という意識を部門内で共有し、OJTトレーナーだけではなく、上司や他の先輩も皆で新入社員を見守り、指導し、時には褒めたり、注意したりしていかなければなりません。
OJTがうまく行かない例がいくつかあります。
例えば、「専任のOJTトレーナーがいるのだから、私が口出しすることはあるまい」と他の先輩が新入社員と距離を置く場合があります。こうなると、新入社員の育成は、OJTトレーナーひとりの肩に重くのしかかかってしまうことになります。
OJTトレーナーが出張や休暇で不在になると、新入社員が放置されてしまうという問題もよく起こります。OJTトレーナーの不在期間は、育成の代行を決めておくことで、新入社員が放っておかれるという事態を防ぐことができるのです。
「職場全員で育成する」風土を醸成するために、「OJTのキックオフミーティング」を開くこともお薦めします。これにより「どんな人材に育成したいか」「日ごろどのように接するか」など社員間で意識を合わせることができるからです。
2.自分が育てられた時代や環境に固執せず、新入社員を受け入れる
長いキャリアをお持ちの方から「部下をどう褒めればよいかわからない」、「きつく叱ってはいけないのか」、「黙って言う通りにしろというのはダメなのか」などと言われることがあります。また、「自分が若い時は上司の指示通りに仕事をした。いちいち目的など聞かなかったが、今の若手社員は "なぜですか?" "目的は?" と聞き、理由がわからないとなかなか動かない」と嘆く声も聞きます。確かに、少し前までは、部下は上司の言う通りにすること、先輩の指示に従って後輩は動くことが当たり前だったのかも知れません。若いうちは理由など考えず、ただがむしゃらに邁進すればよかった時代もあったでしょう。
しかし、時代と共に、新入社員の考え方は変わってきています。ここ数年は特に、「仕事を通じて自分の成長を実感したい」「きちんと納得した上で仕事に取り組みたい」と考える人が増えています。育成する側もそういった考え方や職業に対する態度の変化に対応していかなければなりません。
年長者は、おそらく、自分が習ってきたのと同じように新入社員と接してしまうのでしょう。ところが、新入社員の反応は、想像と異なっており、そのことに戸惑いを感じてしまうのです。ベテランが育った時代にはその時代ならではの方法があり、現在の若手が育つためには、それに合った別の方法がある。これはどちらがよいとか悪いと言った話ではなく、互いにそれぞれの方法を受け入れることがもっとも建設的な気がします。
上司や先輩は頭を柔軟にして、その時その時代に合った方法で新入社員の育成に取り組んでいく必要があるのです。
3.OJTトレーナーに発散の場を
OJTトレーナーは、日々「育っていく新入社員を見守る楽しみ」を感じると共に、「大変さ」も味わっています。
たとえば、あるOJTトレーナーは、何度話しても理解してくれない新入社員に、どう対応すればよいのかと悩んでいました。新入社員が作成した書類の改良点を指摘しただけで激しく落ち込んでしまったため、徐々に「腫れ物に触るような」接し方しかできなくなったと困り果てている人もいました。もちろん、慣れない環境に置かれた新入社員の悩みも大きいのですが、教え育てる責任を持っているOJTトレーナーのストレスも相当なものなのです。OJTトレーナーとして苦労していること、心に思っていることなどをどこかに吐き出し、すっきりしたいこともあります。
ある企業ではOJTトレーナー全員を毎月1回集めて、情報交換する場を設けています。進捗の確認ができるだけでなく、OJTトレーナー同士で気持ちが共有できることも意義のひとつです。「実は私も同じことで悩んでいた」「僕もそのことで随分苦労したんだ」――。OJTで遭遇した色々な悩みや問題を分かち合えるだけで、随分気が楽になります。
こういった情報交換の場を作れなくてもできることはあります。職場の上司や先輩が、OJTトレーナーの話を時々聞いてあげることも、OJTトレーナーのモチベーション維持に役立つのです。
希望に燃えて社会人になった新入社員。「後輩を育てる力がある」と見込まれて任命されたOJTトレーナー。それぞれが楽しく充実して過ごし、共に成長していくことができるよう、職場全体でOJTを支援していきたいものだと思います。
★グローバルナレッジでは、OJT制度を支援する以下の研修を実施しております。詳細は、担当営業かフリーダイヤル0120-009686 田中、高橋までお問い合わせください。
●『OJT担当者向けワークショップ』(HS0056CG)
OJTトレーナーに任命された方が、何をいつどんな風に教え、育てればよいのか学ぶワークショップです。
●『OJT担当者上司向けセミナー』(HS0057CG)
OJTトレーナーの上司向けセミナーです。OJTの支援方法を理解し、新入社員やOJTトレーナーにコーチングするためのスキルを学びます。
● 『OJT担当者向けフォローアップ研修』(HS0055CG)
OJTが半年ほど進んでからのフォローアップ研修です。OJTトレーナー同士で課題を持ち寄り、残り数ヶ月のOJT期間でできることを決め、翌日からすぐ実行に移します。
田中 淳子 (たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
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