わくわくヒューマンスキルコラム
第7回 体験談に目を輝かせる新入社員たち
執筆:田中淳子
2006年度の新卒新入社員を迎えられた企業も多いことと思います。毎年、各社の新入社員研修を担当しますが、今年2006年の新入社員は、総じて真面目で前向きです。
私は、ビジネスマナーなど研修の初期段階で行う研修を担当することが多いため、新入社員とは入社数日後の「社会人になりたて」時点に会うことがほとんどです。
ある企業様では、ビジネスマナーや営業から製造・納品までの仕事を疑似体験できる「フライングカーコーポレーション」(*)を実施しました。この研修では、ビジネスマナーや顧客との関係構築などについての講義と演習がありますが、その合間に私自身の体験談も話すようにしました。新入社員時代に上司に「笑顔で挨拶していない」と叱られた話など具体的な出来事を紹介しました。今年の新入社員は、こういう「体験談」を真剣に聞いてくれます。研修レポートでも「体験談をもっと聞かせて」というリクエストが多いのには驚きました。20歳も年の離れた講師の体験談など、「関係ない」「つまらない」と思うのではと危惧していましたが、真剣に耳を傾け、ノートをとるのです。
その企業様では研修後の夜、2年目の先輩を交えた懇親会を企画されました。そこでも新入社員は、1年先輩にあたる社員に色々な質問をし、熱心にメモを取っていました。「今はどんな仕事をしているのですか?」「土日はどんな風に過ごしていますか?」「どんな勉強をしていますか?」「残業は多いですか?」などあらゆることを尋ねています。
中には、「こんなことを聞くのはなんですが、身体を壊したことはありますか?」といったものもありました。
彼女は、「"SEは身体を壊して一人前"と聴いたことがある」と真顔で尋ねるのです。
聞かれた先輩は、「私だけじゃなくて、誰も身体壊した人はいませんよ。」と答えていました。
こういった質疑応答は微笑ましいものですが、新入社員にしてみれば、「仕事とはどんなに大変なのか」「辛いのだろうか」と多くの不安があるのでしょう。そんな中で先輩が、明るく楽しく自分の仕事を語っていたことに、新入社員は、とても感動したようです。この時の懇親会について、後日、レポートにはこんなことが書かれていました。
- 「先輩が私たちの目をまっすぐに見て、堂々と自分の仕事について語ってくれた。たった1年しか違わないのに、カッコいい。」
- 「先輩が楽しそうに仕事の説明をしてくださった。自分も一日も早く、あんなふうに楽しそうに仕事を語れるようになりたい。」
後輩は、先輩が明るく堂々と自分の仕事を語る姿を見て、不安を払拭できたようです。「1年後」の自分の姿をイメージしやすいこの懇親会は大成功であったと思います。
社会人になったばかりというのは、多くの不安や疑問を抱えています。「今は、同期同士でまとまって研修を受けていても、配属後ばらばらになる。一人でやっていかれるだろうか?」といったことも心配でしょう。
講師が、実務での体験を話すと、「そういうことがあるんだな」と講義内容と実務のイメージを結びつけるのに役立つようです。若手の先輩社員が語る現場の話は、「数年後の自分」を疑似体験できるよいきっかけにもなります。
日常生活で年長者から話を聞く機会は、減っています。だからこそ、どんな話でも新鮮に映るのかもしれません。体験談、現場の話をどんどん聞かせることが、先輩の仕事の一つなのだと思います。
ただし、体験談にはタブーもあります。「自慢話」と「お説教」です。いくら体験談だとは言え、「だから私はこんなに立派になった」とか「私もこうしてきたのだから、キミたちもこうしなければならない」といった話では、「そんなこと言われても時代が違う」、「先輩と私は違う」などと思い、気持ちが引いてしまいます。「自慢話」と「お説教」を避け、純粋に自分の体験談を話す。成功談はさらっと、失敗談は、臨場感を持って語るとよいようです。
新入社員が配属されるのを楽しみ待っている先輩の皆さん、後輩に語れる「体験談」を今のうちに整理しておいてはいかがでしょうか?
*「フライングカーコーポレーション」(ON312)は、ビジネスマナーとビジネスシミュレーションを体験型で学習するものです。新入社員研修の導入部にご利用いただくだけでなく、配属直前研修や新入社員フォローアップ研修で採用していただくこともあります。3部構成になっているため、個別に分割して実施することも可能です。詳細は、担当営業か田中・高橋までお問い合わせください。(0120-009686)
田中 淳子 (たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)


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