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わくわくヒューマンスキルコラム
第5回 『当たり前のこと』を大切にする
執筆:田中淳子

  「当たり前」と誰もが思うような「基本的なこと」に限って、仕事では案外実践されていないことが多いものです。仕事を効率よく進めるために、「高度な知識」「豊富な経験」を身につけることには目が行きますが、基本をきちんと押さえることも大切なことではないかと思います。仕事の大半は、格別に高度な知識やスキルよりも、実は「基本」「当たり前」の積み重ねで成り立っているのではないでしょうか。


  ここ数年、会議運営のスキルとして「ファシリテーション」が注目されています。ファシリテーションとは、「物事がうまく進むように手助けする、促進すること」を指します。会議において、参加者から発言を引き出したり、多くの発言を整理し、まとめていったりするために必要な要素として「ファシリテーション・スキル」が重要視されているのです。
  できるだけ多くの意見を集め、効率よく話し合いを進め、参加者が納得感を得られるような結論に達するよう運営するために、「ファシリテーション」は是非学習しておきたいスキルです。


  この「ファシリテーション・スキル」に関する研修を行った時のことです。
  会議に先立ち、アジェンダ(Agenda:議事)を参加者に提示しておくこと、会議開始時にもアジェンダを再確認することが大切だという話をしました。社内会議や顧客との打ち合わせの前に「どのような内容の会議にしたいのか」と意思表示をしておくことで、互いに必要な準備をして会議に臨むことができるからです。これは、多くの人にとって、いわば「当然」のことなので、講義で「事前にアジェンダを出しましょう」と説明しても、「そんなの当然だ」「基本的なことだ」と思われる方が多いようです。
  では、実際に、毎回欠かさず「アジェンダ」を事前通知しているかというと、話は別で、ついついアジェンダは当日説明する、場合によっては、アジェンダを言わずに会議の中身に突入してしまうという方が案外多いことに驚きました。なんとなく忙しくて...とか、事前に送ることで相手(たとえば顧客)の時間を使わせても申し訳ないと思い、前もってアジェンダを提出しないのだと言う人もいます。


  さて、この研修に参加した方のお一人が、後日、「アジェンダを事前に出す」という、基本を実践してみた成果を報告してくださいました。
  彼は、顧客に要件定義などのヒアリングを予定していました。1週間ほど前に「ヒアリングでお尋ねしたい項目」をメールで送り、打ち合わせの2~3日前に念のため電話をかけ、「アジェンダをお読みいただいていますか?お送りした項目を当日インタビューさせていただきたいので、ご準備をお願いします。」と確認もしておいたそうです。
  そして会合当日、あらかじめ提示されていた質問項目に関しては、顧客側が回答を用意していたため、思いのほか効率よくヒアリングが進んだとのこと。
  このことを経験して、彼はこう反省していました。


  「今までは、事前に"質問項目"なんか提示して、お客様に余計な時間をかけさせては申し訳ないと遠慮していた。けれども、事前に"質問"を投げておくことで、お客様もそれなりに準備ができて、当日の打ち合わせ時間を結果的に2/3くらいに短縮することができた。質問されることがわかっていれば、資料などを揃えておいていただけるけれど、当日になって質問したいことをぶつけると、"ああ、それについては資料がありますが、今日は準備してないので、また次回に"という展開になって、結果的には情報収集するのに多大な時間がかかることになっていた。事前に時間を割いていただくのは決して失礼なことではないのだ、と今回初めて気づいた。」


  アジェンダの事前提示は、自分にとっても相手にとっても効率よく時間を使うことにつながります。
  この例のように「当たり前」と思えるようなちょっとしたことでも、実務で取り入れて実践するかしないかが、仕事の成果や効率に関係してくるものなのです。
  アジェンダの事前提示を始めとして、身の回りにある「基本」「当たり前」と思ってしまうようなことを一度見直してみてはいかがでしょうか。


*「ファシリテーション・スキル」に関しては、「ファシリテーション・スキル基礎」(HS0036CG)で学習することができます。実際にひとつのテーマで会議運営を体験する演習もあります。

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[ファシリテーション][2006年2月20日配信]

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