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わくわくヒューマンスキルコラム
第37回:「ファシリテーション型会議で成功体験を積む」
執筆:飯嶋 秀行

気がつくと毎週何かしら会議をしているという方も多いと思います。みなさんは普段どのような会議に参加、あるいは会議を主催していますか。
 
 ファシリテーション研修の参加者に「会議で困ったこと」を挙げていただきました。
「遅刻する人がいて、時間通りに開始できない」
「終了時間が決まっていない、開催通知には終了時間が書いてあるが、だらだらと延長して定時に終わらない」
「役職の高い人が一人でしゃべっている。他のメンバーは聞き役に徹していることが多い」
「言いたいことがあっても本音で発言しにくい」
「何か提案すると、自分が担当者に任命されてしまうので、うっかり提案できない」
等など、このテーマでディスカッションしていただくと、たくさんの意見が出て大いに盛り上がります。みなさん問題のある会議については、実体験が多いからでしょう。

 今度は、
「では、みなさんにとって、理想の会議とはどんな会議でしょうか?」
と質問してみると、
「そうですね、理想の会議とは・・・さっきの問題のある会議の裏返しですね」
「たとえば、時間通りに開始して、時間通りにちゃんと終わるとか」
「全員が意見を言えていることも大事ですね」
 などの意見が出ます。しかし、このディスカッションは、問題のある会議の時ほどは盛り上がりません。なぜでしょうか?
 ひとつの理由として、理想の会議についての実体験が乏しいため、成功体験がないことが考えられます。
「このような理想の会議に参加したことがある、あるいは、主催したことがある方は?」
と質問しても、ほとんど手が挙がりません。
 問題のある会議については、日常的に多くの体験があるが、理想の会議については「成功体験」が乏しい。そのため理想の会議についてディスカッションしてもいまひとつ盛り上がらないのです。

 理想の会議について「成功体験」が乏しくなる要因として以下の点が考えられます。
・そもそも、会議に参加したり、主催したりする場合にどのような準備が必要なのか、きちんと教わっていない(効果的な会議を実施するための基本ルールなど)
・また、研修や書籍を通じて会議の基本ルールを学んでいた場合でも、実際に先輩社員や上司が議事進行している現場の会議に参加してみると、理想と現実とのギャップに直面する
・そして、問題のある会議に参加し続けるうちに、「会社の会議というのは、こんなものか」とその組織の会議のカラーに染まってしまい、「問題のある会議」が、いつしか当たり前になってしまう

 慣れてしまうという事象については、ある方から以下のような意見を聞きました。
「私も、最初のうちは、十分に準備をして会議に参加していました。たとえば、事前に所属チームのメンバーの意見を吸い上げて、全体会議の場で積極的に発言するなどです。でも、準備してから会議に臨み発言しても、議長が、その意見をまったく取り上げてくれません。後から回覧された議事録には私の発言そのものも記述されておらず、結局は議長が事前に決めたシナリオどおりの結論に落ち着いてしまうのです、。そんな体験が積み重なり、本音の意見を言うのを止めてしまいました。しょせん会議ってこんなものかなとあきらめてしまいました。」
 
 確かに、一度でもそのような会議を体験してしまうと、積極的に参加し、協力して問題解決をしていこうという意欲はなくなってしまいます。

 貴重な時間を使って、対面で意見交換をする会議には、多くのコストが発生しています。特にリーダーの立場にいる方、会議を変える力のある方は、この問題のある会議を改善していく必要があります。
 問題のある会議を改善するには、ファシリテーションという考え方を会議に取り入れることが有効です。
 ファシリテーションとは、チームで行う活動がうまく進行するように、メンバーの力が最大限に発揮できるよう支援することです。
 会議にファシリテーションを導入することで、以下のような効果が期待できます。
・参加者は事前に会議の目的、目標を理解し、十分な準備をして参加できる
・会議中は、全員が積極的に参加し、率直な意見交換ができる
・時間通りに開始し、その時点での結論を明確にした上で時間通りに終了できる

 以上のような効果を実感するためにも、ファシリテーションスキルを身につけて、まずは自分が主催している会議から、あきらめずに実践することで、ファシリテーション型の会議へ変えていきましょう。



飯嶋 秀行(いいじま ひでゆき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。
商社で情報システムの企画・開発などを担当後、グローバルナレッジネットワーク株式会社へ入社、現在はコーチングを中心に、プレゼンテーション、リーダーシップなどヒューマンスキル系コースを担当。PHP認定ビジネスコーチ上級、中小企業診断士。著書に『コーチングがやさしく身につく物語』日本実業出版社などがある。


[ファシリテーション][2008年10月28日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第33回 会議の空気
執筆:森 美緒

  KYという言葉が2007年度の流行語大賞にノミネートされました。「空気が読めない」の略語だそうです。ファシリテーション・スキル(※)の研修中にもこの「空気を読む」というキーワードがよく話題になります。


  ※ファシリテーション・スキルとはチーム活動を促進、支援するスキルです。ファシリテーションする人をファシリテータと言い、ビジネスでは会議運営やチーム活動を円滑にし、より良い成果を出すことを目指します。


  実は、ファシリテータが会議参加者の発言や雰囲気、表情、態度などからその情況を把握できる(空気を読める)と、会議室内に良い空気を作り出すことができます。


  例えば、以下の会議を想像してみてください。


  皆さんは現場マネージャとして業務改善提案の会議に参加しています。ファシリテータは資料を元に改善項目とスケジュールを説明しました。その提案内容によると、スケジュールが厳しい上に、通常業務をこなしつつ改善活動も行うことは現状ではとても不可能です。決定したとしても、計画通り進むとはとても思えません。
  説明が終わり、ファシリテータは参加者全員に向かって意見を求めました。自発的に発言する参加者はいなかったので、ファシリテータは参加者Aさんを指名しました。Aさんは、他の人が発言しない様子から、この提案は受け入れるべきなのだろうと判断し、「この内容でもいいと思う」と発言しました。ファシリテータは「ご賛同ありがとうございます」とお礼を言いました。さらに、参加者Bさんにも発言を求めました。みんなが何も言えないなら、自分が発言しなければならないと判断したBさんは「内容はよいが、スケジュール的に問題がある。現場の現状を考えると難しい」と意見を述べました。ファシリテータは「始める前から不平・不満を言うのは良くないので、できるだけ建設的な意見をお願いします。」と注意しました。その後、AさんBさんに続く発言はなく、「他にご意見がないのでこの内容で決定します。業務改善の実施に向けてご協力よろしくお願いします」とファシリテータがまとめました。


  皆さんが参加者だったとしたら、この会議の空気の中でどんな発言をしますか?いずれにしても納得感をもって参加できるかを考えたら、あやしいかもしれません。さて、少し状況を変えてみましょう。


  もし、ファシリテータが次のような対応をしていたら、どうでしょう。


  Aさんが「この内容でもいいと思う」と発言した時、「この内容でも、ということは、何があればもっとよい内容になりそうですか?」と尋ねる。Bさんが「スケジュール的に問題があるのではないか?現状を考えると難しいと思います」と発言した時、「どの辺りが難しそうですか?どんな影響がありそうですか?」と掘り下げる。こうして2人の意見をホワイトボードなどに書き、「他にも懸念事項は何かありませんか?」と質問する。


  これだけで、ぐっと発言しやすくなりますね。


  ファシリテータの仕事は、会議を自分が準備した手順で時間通り終わらせることではありません(まして参加者に対して一方的に結果を押し付けることでもありません)。全員の意見を共有し、全員が最大限の力を発揮できるよう支援することで、参加者全員が納得できる成果を出すことがファシリテータの役割なのです。そのためには会議時の空気は参加者が発言しやすいに越したことはありません。お互いに言いたいことを発言し、相手の意見を聴き、その上で合意したことが成果になり会議に参加した意義になっていくのです。冒頭で申し上げたとおり、ファシリテータは参加者の空気を読み、会議全体の空気を作る必要があります。


  会議室内の空気は、参加メンバだけが作っているわけではありません。確かに役職者や発言の多い人など特定の人の発揮する影響力が大きくなることはあるかもしれませんが、空気作りに最も大きく影響するのは、やはり、ファシリテータです。 会議室に参加者の運び込んでくる個々の空気を読み、何でも言いやすい場を作ることができれば、参加者の発言は確実に増えます。さらにファシリテータは他の参加者へ発言の輪を広げたり、発言を掘り下げたりと、議論を活性化させることができます。納得できる成果を出せたなら、会議は誰にとっても充実感のある楽しい場になるでしょう


  グローバルナレッジのファシリテーション・スキル研修では、意見を引き出すスキル、掘り下げるスキルなど発言を引き出すスキルをご紹介しています。実践的な演習を通して、普段のご自身のファシリテーション・スキルを再確認し、スキルアップにお役立てください。


グローバルナレッジでは、「コミュニケーション」を軸に、様々な仕事を進める上で必要なスキルを研修のコースとしてラインアップしています。技術や知識をより活かすためのヒューマン・スキルをブラッシュアップしてみませんか?



森 美緒 (もり みお)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。 産業カウンセラー。
1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。商社での秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。
2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。


[ファシリテーション][2008年6月24日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第26回 受講者からの贈り物
執筆:高橋 俊樹

  会議の時に大判の模造紙を使用したことはありますか?実は模造紙には多くのメリットがあります。特にアイディアを出すような会議では、模造紙は壁に何枚も貼ることができるのでアイディアが広がりやすく、ヌケやモレも防ぎやすくなります。さらに、参加者全員がこれまでに議論した結果を俯瞰でき、アイディアの発展や情報共有の観点からも役立ちます。当社の「ファシリテーション・スキル基礎」でもおすすめしている会議用のツールの一つです。
  しかし、実際には多くの方が会議室に設置されているホワイトボードやノートPCを使用して会議を進めています。ツールのメリットは理解しても「そこまでは・・・」となかなか行動に移せないケースが多いようです。


「模造紙とカメラ付携帯電話」
  以前私が担当した「ファシリテーション・スキル基礎」に参加されたお客様と先日久しぶりにお会いしました。研修中も問題意識を持って、大変積極的に受講されていたその方は会社に戻り、学んだことを早速実践されたそうです。その成果について次のように話して下さいました。
  「この前受講したファシリテーションの研修が自分の業務に大変役立っています。会議でも早速、模造紙を使用するようにしたところ、とても効果的で、最近では部長たちまでが会議室に模造紙を持参するようになったんです」「終了後は模造紙を携帯のデジカメで撮影し、そのまま資料として社内のネット上にUPしています。必要な時はその画像を印刷して会議で利用しています。結構便利なんですよね」


  研修で学んだことを実務に取り入れるだけでなく、工夫を加えてみる。多忙な業務に追われ、つい忘れてしまったり、従来通りのやり方に戻ってしまったりすることが多い中で、その方の実践した成果を伺えたことは、私にとって大変嬉しい出来事でした。講師として、お客様から研修アンケートなどで良い評価をいただくことはもちろんですが、何よりの贈り物は、この例のように実際に行動してもらえることなのです。


「漢字クイズと高校受験」
  研修で学んだ内容が仕事以外でも役立ったというお客様の例も紹介します。あるSI企業の管理職研修で講義の息抜きとして漢字を用いたクイズを実施しました。その際、大阪から参加されていた方が「家に帰ったらこの漢字クイズを家族に試してみるわ!」と話されていました。研修後、しばらくしてその方からお礼と結果の報告を兼ねたメールが届きました。普段は家に帰ると奥様とお嬢様2人に囲まれ肩身が狭いとおっしゃるこの方は、研修で私が使った漢字クイズを家族でやってみないかと提案したそうです。高校受験を控えたお嬢様は最初「忙しい」と言ったものの、気分転換にと挑戦。最後は奥様も協力し、一時間半ほどでほぼ解答できたそうです。「家族でとても充実した時間を過ごせて面白かった」「今後も私から家族に色々と声をかけていきたいと思います」と締めくくられていました。


  その数ヵ月後、再度メールを頂戴しました。家族全員でお嬢様の高校受験を応援し、見事に第一志望に合格されたとの嬉しいお知らせでした。仕事上のことではありませんが、自ら行動を起こしたことが相手との関係に新たな変化をもたらしたのではないでしょうか。


  これらはほんの一例ですが、どんなことでも行動しなければ何も変わりません。大切なのは実際に試してみる、使ってみることなのです。当社の研修ではヒューマン・スキルは学習できるものとして捉えています。ヒューマン・スキルと言うと持って生まれた性格や資質と考えて、「自分には無理」などと考えてしまうこともあるでしょう。性格や資質ではなく、誰でもできる行動として捉えてみることが大切なのです。


  グローバルナレッジでは、ヒューマン・スキルを「学習できる」ものとして無理なく段階的に体得できるよう、講義と効果的な演習をバランスよく取り入れています。また、実際の事例や講師自らの体験談なども織り交ぜ、真面目ではありつつ、楽しみながら双方向で学べるようにカリキュラムを組み立てています。これからも、受講される皆様が「すぐに行動してみたい、実践してみたい!」と "わくわく"した気持ちになるような研修をさらに充実させて行きたいと考えています。その結果、私達に数多くの贈り物 (=成果報告) が届けば、これほど嬉しいことはありません。


  ― 皆様にとって今年一番嬉しかった贈り物は何だったでしょうか? ―


ヒューマン・スキル関連コース一覧 >>



高橋 俊樹(たかはし としき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。
1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、現職。ビジネススキルグループのマネージャ兼インストラクターとして、新人から管理職までを対象とした各種ヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。


[ファシリテーション][2007年11月27日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第22回 成果を出す会議
執筆:森 美緒

  昔、職場を替わったばかりの頃、同僚から「私たちのミーティングの司会進行は特定の人にせず全員で持ち回りにしようよ!」と言われました。その同僚は一番社歴が長く知識も豊富で、メンバのリーダー的存在でした。私はてっきりその方がミーティングの主催者となり、司会進行をすると思っていたのでとても驚いたことを今でも覚えています。
  同僚は「誰かが仕切るミーティングではなく、誰でも意見を言いやすい場にしたい。だから、誰か特定の人にするのではなく持ち回りで司会進行をしよう。」と提案しました。当時ファシリテーションという言葉もファシリテーターという役割も知らなかった私に、同僚は雑誌の特集でとり上げられていたファシリテーションのコピーを渡してくれました。これが、私とファシリテーション(※) の出会いです。
(※ ファシリテーションとは会議などチーム活動をうまく進行するための手助けをすることです。)


  同僚からもらったコピーの他にもファシリテーションに関する著書を読み進むうちに、「そもそも会議とは何をする場なのか」を、自分がまったく定義していなかったことに気づきました。
  司会進行役のチームリーダが議事に沿って話をする。参加メンバはそれを聞き、メモをとる。たまに質問したり、意見を言ったりする。色々な会議に参加した経験の中で「なんとなくこんな感じ」と私が身に付けていた会議のイメージとは、そんな曖昧なものだったのです。
  辞書で「会議」を調べてみると、「お互いの意思を伝えるための話し合いをし、何らかの結論(成果) を出す場」となっています。ファシリテーションに関する多くの著書にも同じような定義が書かれていました。会議はファシリテーション次第で話し合いの場になり、協力して成果を出すことができる場になるのだと、目からウロコが落ちる思いでした。
  実際、持ち回りで進行を務めた会議は、お互いの意見やその背景を話し合うことができ、とても有意義なものでした。会議で決定したルールや上司に出す提案内容はメンバ全員の意見をまとめた納得感のあるものでした。
  その頃から私は会議が楽しく待ち遠しいものになりました。自分がファシリテーターの時も参加メンバの時も主体的に会議に参加できるようになったからです。


  何を目的に開催され、ゴール(求められる成果) がどこにあるのかが不明確な会議は多いと思います。一方的に話して参加メンバの発言をすぐに否定する会議進行をしている方、会議の場で席を暖めていればよいと思っている参加メンバの方・・・
  一方的に報告や提案をする会議の主催者と、会議を退屈な時間だと捉えている参加メンバ、これでは話し合いはできません。
  会議を有意義なものにするには「話し合う」ことでお互いの意思を伝達し、納得感のある成果を出す必要があります。「聴く」と「話す」の両方があって、やっと「話し合う」になります。ファシリテーションにはさまざまなスキルが必要ですが、コミュニケーションはその中でも重要なスキルです。ファシリテーターが会議の際に持つ役割は議事項目の消化ではありませんし、まして勝手な結論付けをすることではありません。ファシリテーターの役割は「聴く」と「話す」が円滑に進むよう手助けして参加メンバの納得の上に成果を出すことです。
  話し合ってお互いに納得できる成果を出せるなら会議が今よりも楽しいものになるはずです。


  余談ですが、グローバルナレッジには6つの会議スペースがあります。
  花・鳥・風・月・NorthPole・ゴルフ場
  それぞれが名前にちなんだデザインになっています。
  入社初日に、「月にいます。15時に戻ります。」と書かれたメモ書きをみて、まだ会議室の名前を知らなかった私は悩んだものです。
  今ではすっかり慣れたもの。今日も「風」で会議です。どんな成果が出せるのか楽しみです。


  「ファシリテーション・スキル基礎」(HS0036CG) では、会議の準備から後処理までの流れを体系的に学びます。会議が円滑に進む準備段階でのポイントを押さえ、参加メンバから意見をひきだしまとめていくコミュニケーション力を演習で実践的に身に付けることができます。



森 美緒 (もり みお)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。 産業カウンセラー。
1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。商社での秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。
2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。


[ファシリテーション][2007年7月24日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第5回 『当たり前のこと』を大切にする
執筆:田中淳子

  「当たり前」と誰もが思うような「基本的なこと」に限って、仕事では案外実践されていないことが多いものです。仕事を効率よく進めるために、「高度な知識」「豊富な経験」を身につけることには目が行きますが、基本をきちんと押さえることも大切なことではないかと思います。仕事の大半は、格別に高度な知識やスキルよりも、実は「基本」「当たり前」の積み重ねで成り立っているのではないでしょうか。


  ここ数年、会議運営のスキルとして「ファシリテーション」が注目されています。ファシリテーションとは、「物事がうまく進むように手助けする、促進すること」を指します。会議において、参加者から発言を引き出したり、多くの発言を整理し、まとめていったりするために必要な要素として「ファシリテーション・スキル」が重要視されているのです。
  できるだけ多くの意見を集め、効率よく話し合いを進め、参加者が納得感を得られるような結論に達するよう運営するために、「ファシリテーション」は是非学習しておきたいスキルです。


  この「ファシリテーション・スキル」に関する研修を行った時のことです。
  会議に先立ち、アジェンダ(Agenda:議事)を参加者に提示しておくこと、会議開始時にもアジェンダを再確認することが大切だという話をしました。社内会議や顧客との打ち合わせの前に「どのような内容の会議にしたいのか」と意思表示をしておくことで、互いに必要な準備をして会議に臨むことができるからです。これは、多くの人にとって、いわば「当然」のことなので、講義で「事前にアジェンダを出しましょう」と説明しても、「そんなの当然だ」「基本的なことだ」と思われる方が多いようです。
  では、実際に、毎回欠かさず「アジェンダ」を事前通知しているかというと、話は別で、ついついアジェンダは当日説明する、場合によっては、アジェンダを言わずに会議の中身に突入してしまうという方が案外多いことに驚きました。なんとなく忙しくて...とか、事前に送ることで相手(たとえば顧客)の時間を使わせても申し訳ないと思い、前もってアジェンダを提出しないのだと言う人もいます。


  さて、この研修に参加した方のお一人が、後日、「アジェンダを事前に出す」という、基本を実践してみた成果を報告してくださいました。
  彼は、顧客に要件定義などのヒアリングを予定していました。1週間ほど前に「ヒアリングでお尋ねしたい項目」をメールで送り、打ち合わせの2~3日前に念のため電話をかけ、「アジェンダをお読みいただいていますか?お送りした項目を当日インタビューさせていただきたいので、ご準備をお願いします。」と確認もしておいたそうです。
  そして会合当日、あらかじめ提示されていた質問項目に関しては、顧客側が回答を用意していたため、思いのほか効率よくヒアリングが進んだとのこと。
  このことを経験して、彼はこう反省していました。


  「今までは、事前に"質問項目"なんか提示して、お客様に余計な時間をかけさせては申し訳ないと遠慮していた。けれども、事前に"質問"を投げておくことで、お客様もそれなりに準備ができて、当日の打ち合わせ時間を結果的に2/3くらいに短縮することができた。質問されることがわかっていれば、資料などを揃えておいていただけるけれど、当日になって質問したいことをぶつけると、"ああ、それについては資料がありますが、今日は準備してないので、また次回に"という展開になって、結果的には情報収集するのに多大な時間がかかることになっていた。事前に時間を割いていただくのは決して失礼なことではないのだ、と今回初めて気づいた。」


  アジェンダの事前提示は、自分にとっても相手にとっても効率よく時間を使うことにつながります。
  この例のように「当たり前」と思えるようなちょっとしたことでも、実務で取り入れて実践するかしないかが、仕事の成果や効率に関係してくるものなのです。
  アジェンダの事前提示を始めとして、身の回りにある「基本」「当たり前」と思ってしまうようなことを一度見直してみてはいかがでしょうか。


*「ファシリテーション・スキル」に関しては、「ファシリテーション・スキル基礎」(HS0036CG)で学習することができます。実際にひとつのテーマで会議運営を体験する演習もあります。

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[ファシリテーション][2006年2月20日配信]

    

*Microsoft、Windowsは、米国Microsoft社の登録商標です。
*Oracleは、米国オラクル・コーポレーションおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。
*BOOT CAMP、NEW TRAIN、NETGUNはグローバル ナレッジ ネットワーク株式会社の登録商標です。
*その他このサイトに掲載された社名、製品名は、各社の商標、または登録商標です。
*推奨ブラウザ:Internet Explorer 6.0/FireFox 3.0以上

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