Global Knowledge Japan

わくわくヒューマンスキル
ホーム > わくわくヒューマンスキル > コミュニケーション > 第50回:互いによく知ること

わくわくヒューマンスキルコラム
第50回:互いによく知ること
執筆:田中 淳子

「マンションにおける騒音問題を解決する試み」を取材した番組をTVで見たことがあります。ある老夫婦の真上の階に小さい男の子2人が住んでいて、夜毎ほぼ決まった時刻に「ばたばた」と走り回る音が気になって仕方ない。そろそろ寝ようかという時間に天井から聞こえてくる足音にいらいらしてしまう。そういった苦情を受け取ったマンションの管理組合が問題を解決する過程を紹介していました。


普通に考えると、「上の階の人は物音をしないよう気をつけましょう」「防音のシートを敷きましょう」といった「対処療法」を取ることになりそうですが、このマンションでは、この難問を別の方法で解決しました。


まず、住民揃っての餅つき大会といったイベントを開き、お互いの顔を見て、直接語り、知り合う機会を設けました。件の老夫婦と幼児2人の家族もここで初めて顔を合わせました。老夫婦にとって子どもたちの無邪気な様子はかわいらしく、子どもたちにとって老夫婦は離れて住む自分たちのおじいちゃん・おばあちゃんのような気持ちがしてなついていきます。


このイベントがきっかけとなり、2家族間で交流が始まりました。互いにお土産を持って行ったり、家に上がり、お茶を飲んだりするようになっていきます。


相変わらず、子どもたちの夜毎の「ばたばた」は続いているものの、老夫婦はこの足音が気にならなくなったばかりか、「おお、今日も元気に走り回っているな」と天井を見上げてほほえましくさえ感じるようになりました。決まった時間に足音が聞こえてこない日は「病気でもしているのだろうか?明日様子を聞いてみよう」などとかえって心配するまでになったのです。


このマンションでの問題解決の方法は、「コミュニケーション」のあり方の大きなヒントを与えてくれます。


コミュニケーションというと、「どう聞くか」「どう伝えるか」「どう表現するか」「どう食い違いを解消するか」といった相手との"やり取り"の部分につい目が向き勝ちになります。しかし、同じことを聞いても、同じことを伝えても、解釈の仕方が異なる場合があり、多くの場合それは、相手をよく知っているかどうかに左右されてしまいます。


人は、相手の人となりや置かれた状況を知らなければ、その人の行動を好意的に解釈するのは難しくなります。一方で、相手の人となりや置かれた状況をよく知っていれば、その人の行動を好意的に解釈することができるようになるものです。


私もこんな経験をしたことがあります。


ある人から上司に関する相談を受けました。「課長にメールで報告や問い合わせをしてもめったに返事をくれない。私のメールなんか見ていないのかも。見ていても面倒だから返事をしないのかな。」


この上司の人柄も、当時の仕事状況もよく知っていた私は、「そういうことではないと思うよ。今、彼は非常に忙しくて、読んではいるけど返事する余裕がないんじゃないかなぁ。」と伝えました。「あ、そういうことか。」と彼女も納得していました。


どう聞くか、どう話すか以前に、相手をよく知る。自分をよく知ってもらう。「顔を知っている」と「どういう人か知っている」という両方の面で。この二つを実現するには、対面して直接会話をするといったアナログなコミュニケーションが欠かせません。


ずっとメールでのやり取りだけを続けていた離れた事業所同士の人がある時出張で顔を合わせたところ、「いつもメール送ってくる人はあなただったんですね」「今日は直接顔を見て話すことができてよかった」と互いに安心できた。顔と人となりがわかったことで、再びメールでのやり取りだけの関係に戻っても、仕事の依頼や報告がよりスムースになった、という例もあります。


電子メール、インターネットと私達の周りにはデジタルなコミュニケーション・ツールがあふれています。これらは速さや正確さ、同報性において便利なものですが、「互いによく知り合う」ことに関しては、今でもやはりアナログのコミュニケーションに軍配が上がります。


 

コミュニケーションにおける「聴き方」「伝え方」「双方の葛藤(対立)の解決方法」などを
演習を通じて学ぶコースです。 
「効果的コミュニケーション・スキル ~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~」
 

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[コミュニケーション][2009年11月25日配信]

*Microsoft、Windowsは、米国Microsoft社の登録商標です。
*Oracleは、米国オラクル・コーポレーションおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。
*BOOT CAMP、NEW TRAIN、NETGUNはグローバル ナレッジ ネットワーク株式会社の登録商標です。
*その他このサイトに掲載された社名、製品名は、各社の商標、または登録商標です。
*推奨ブラウザ:Internet Explorer 6.0/FireFox 3.0以上

© Global Knowledge Network Japan, Ltd. 2008-2011, All Rights Reserved.
  • Get ADOBE READER