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わくわくヒューマンスキルコラム
第49回:相手の意図、汲んでいますか?
執筆:岩淺 こまき

家族で海外旅行をした際、母の表現力にびっくりしました。日本語が話せない現地の人と英語を話せない母がコミュニケーションをとって、自分(母)の意図を確実に伝えていたからです。

 

母が使うのは身振り手振りのみ。でも、相手に伝わる表現力を発揮していました。
例えば、カフェで。全く日本語の通じない店員に、残ったマフィンを持って帰りたいことを目線だけで表わします。マフィンを指差し、訴えかけるような目で黙って小首をかしげる(「マフィン持って帰りたいなぁ~」のポーズ)。店員は母の意図を察して、持ち帰り用の包装紙を渡してくれました。
さらに、ビーチで。大きく両手で円を描き、日本語で「う・き・わ」と言う(「浮き輪を貸して欲しい」のポーズ)。このときも何度かのやりとりの結果、無事に浮き輪を貸してもらえました。

 

通じない日本語、大雑把なジェスチャー・・、わかりにくい説明といえば、これ以上のことはないかもしれません。なぜ母が自分の意図を相手に伝えることができたのか、私には不思議でした。

 

一生懸命な母の「伝えたい熱意が相手に届いた」という面もありますが、それだけではないと思えます。今回母が結果を出せた一番のポイントは、聞き手側(店員)の「伝えたいことは何か」という相手の意図を汲む意識が高かったことにあると考えています。いくら伝える側(母)に熱意があっても、聞く側(店員)に意識がなければ、母の表現では恐らく意図が伝わらなかったでしょう。仮に店員が「この日本人、何を伝えたいのかさっぱりわからない」「わかるように話して欲しい」と思い、母の意図を汲むことを放棄してしまったら、お互いに不満足な結果になったはずです。

 

仕事でも似たようなことが起こります。例えば、お客様にヒアリングする場合、相手の説明がわかりにくいと、「もう少し考えをまとめて説明してくれたら良いのに・・」「順序立てて説明してくれたら助かる・・・」などと思うことがあります。しかし、たとえわかりにくい説明でも、ヒアリングをする側が意識することで、相手の意図を汲み取ることができます。お客様の話している内容を「お客様のおっしゃりたいことはこういうことですよね」と言い換えて確認したり、疑問点は質問したりするやりとりの中で、お客様の伝えたい意図が明確になっていきます。

 

冒頭の母の例に戻ります。店員は、母の意図を確認するために、何度も母とやりとりをしてくれていました。はじめは母の言葉から自分がわかる日本語がないか注意して聴いていたようです。知っている単語がないとわかると次に、身振り手振りを見て判断をしました。大きく両手で円を描く手振りから、「誰か探しているの?」と質問してきたり、ビーチボールを指し「これですか?」と尋ねたり・・・。そのやりとり中で「母が何を伝えたいのか」を理解し、お互いに満足できる結果につながっていました。

 

母と店員のやりとりから、「何を言っているのかわからない」ではなく、「この人は何を伝えたいのか?」という意識を聞き手が持ってコミュニケーションを取ることの大切さを知った旅行となりました。

 

余談ですが・・・母はこの他にも、色々な店で店員とやり取りをし、都度「あぁ、よかった。伝わったわ~」と満足そうに言っていました。ヘタに文法を考えたり、きちんとした単語を使おうとしたりする私より、良いコミュニケーションをとれていました。なかなか伝わらなくてやりとりが長くなっても、いつもにこにこ笑顔でコミュニケーションをとる母につられて、店員も楽しく気持ちよくコミュニケーションがとれたのかもしれません。
理屈も大切だけれど、その前に笑顔やコミュニケーションをとろうという気持ちが大事なのだな、と母に教えてもらいました。

 


岩淺 こまき (いわあさこまき)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。
1997年、システム販売会社に就職し、営業技術支援および導入企業向けの研修を担当。
人材紹介会社にて中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て2007年より現職。
プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。

2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。


 

[コミュニケーション][2009年10月27日配信]

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