わくわくヒューマンスキルコラム
第48回:会話から得られるもの
執筆:森 美緒
「皆さんはどのくらい社内で会話をしていますか?」
「その会話には、業務とは関係がない、雑談に近いような内容も含まれていますか?」
研修中、受講者にこう質問をすると、直面している仕事を進める上で必要最低限の会話しかしないという方が、毎回数名はいらっしゃいます。
その訳を尋ねると「時間がもったいない、忙しい」、「得られるものがない」という理由が多いようです。しかし、業務以外の会話から得られるものは何もないのでしょうか?
ヒューマンスキル研修では受講者が、チーム演習でディスカッションをしたり、お互いの課題を紹介し合ったりと、多くの会話をします。これは、ただ一方的に講義を聞くよりもディスカッションをしてお互いに会話をすることの方がより高い学習効果を得られるからです。
たとえば「コミュニケーションは大切です」という主旨の講義をしたとします。ただ聞くだけですと受講者は「ふーん」「そうだね」と理解するものの、時間ともに記憶は薄れ、数日後には「何が大切だったかな」と忘れてしまう方もいます。
そこで会話が求められるディスカッション形式をとると「現場ではこのスキルをこう使えるかも」「コミュニケーションがうまく行かずにこんなことがあった・・・」と講義と業務を関連付けて経験談を話すことができますし、「正直に言うと苦手な相手とはコミュニケーションしたくない」「忙しいとついキツイ言い方をしてしまっているかも」などそれぞれの受講者の考えを共有することもできます。
講義を聴くだけでなく、相手と会話をすることで「なるほど!」と腹落ちするのです。その結果、講義内容をより深いレベルで理解できるので、高い学習効果が得られるのです。
このように研修では意図的に受講者同士で会話ができるようにしているのですが、受講者の皆さんはしばらくすると、休憩時間にも自然に言葉を交わすようになります。家族のこと、趣味の話などプライベートな内容から、業界のこと、最近の新入社員のことなど業務に関わるものまで、実に多くの会話をしています。
受講後アンケートでは、「内容以外に他の受講者の話が聴けてよかった。」「同じような考えの人がいることが分かってうれしかった」などの声を多数頂戴します。これは講義内容だけでなく、それ以外の会話からも得られたことがたくさんあったのだからだと思います。
さて、冒頭に戻って考えてみると、直面している業務以外の話はあまりしない、というのはもったいないと思えてきます。他社の方との会話がそれほど役立ったと思えるのであれば、社内での会話も同じように意義があるはずだからです。
忙しい中でもちょっとした工夫や気遣いで会話しやすい環境を作ることができるのではないでしょうか。
私の所属するチームのデスク周辺には小さな椅子とテーブルが置いてあります。(お菓子が置いてあるので、仲間内では餌付けーション(Educationのもじりです)センターと呼ばれています。)他チームの人が来ると、まず椅子を薦めてから情報共有や打ち合わせを始めます。
座って落ち着いて会話できるため、業務の会話が終わっても、本来の目的とは関係のない会話を続けることがよくあります。これは一見すると、業務と関係のない会話なので意味がないものにと思われるかも知れません。けれども、その会話から得られるものもたくさんあります。
「営業の視点で言えば・・・」
「SE経験から言うと・・・」
「プロジェクト管理の観点からは・・・」
会話の相手がヒューマンスキルを専門にしていない人だからこそ、私には目から鱗が落ちるような意見を言ってくれることがあります。場合によっては、話が発展して新しい企画やアイディアが生まれます。
さらに、お互いの近況を理解し合うことでねぎらい合えることもあります。皆も頑張っているのだとわかり、自分を奮い立たせるのです。
このように直面した業務以外の会話から、アイディアが生まれたり、膨らんだり、やる気が刺激されたり、たくさんのものを私たちは得ています。
「会話から得られるもの」それは、協働する醍醐味につながるのだと私には思えるのです。
グローバルナレッジの研修ではチーム演習としてディスカッションを多く取り入れています。会話することが学習効果を高め、学習内容をより実務で活用しやすくします。
・効果的コミュニケーション・スキル
~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~
・チームワークとリーダーシップ
~中堅社員のためのよいチーム作りとリーダーシップ・スキル~
森美緒
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。 1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。 2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
2008年12月より翔泳社webマガジンEnterprisezinにて「新入社員が育つ!現場のための教育実践マニュアル」 連載中。 2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。
[コミュニケーション][2009年9月29日配信]


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