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わくわくヒューマンスキルコラム
第40回:その気になればどこでも試せる
執筆:田中 淳子

 ヒューマン・スキル研修を行っていると、「これって、子育てと一緒だよね」「家族との会話でも同じことが言える気がする」というコメントをよく頂戴します。ビジネスのためのヒューマン・スキルを学びながら、実は日常的な様々な場面でも応用が効きそうだと気づかれるのでしょう。
 「私は対外的な仕事をしていないので、顧客とのコミュニケーションなど試す場がない」という方も中にはいらっしゃいますが、「身近でも活用可能だ」と捉えれば練習の場は広がります。
 では、日常での活用場面を紹介しましょう。

 コミュニケーションスキル研修では説得について学びます。説得="相手を動かす"ためには「一方的に説得するのではなく、相手の言い分に耳を傾け、相手が動きやすいような言い方をする」ことを考える必要があります。その考えを応用した例です。

 ある女性からこんな例をお聞きしました。帰宅すると、父親のお迎えで先に帰宅していた子供たちがリビング中に大量のタオルを広げていました。家事をしなければと一分でも惜しいのにタオルが散乱。「早く片付けて!」と一喝したところ、子供たちはしぶしぶ片付けたそうです。別の日、また同じようにタオルがリビング中に敷き詰められていました。よく見れば、タオルの下には人形やぬいぐるみが置いてあります。子供たちに聴くと、「保育園のお昼寝の時間をやっているの」と言いました。彼女は「片付けなさい」と叱る代わりにこう言いました。「それは偉いねぇ。・・はい、そろそろお昼寝の時間は終わりですよぉ。皆起きましょう」。すると、今度は保育師さんを気取った子供たちが、進んでタオルを片付け始めたといいます。
 「お昼寝の時間は終わりですよ」は、子供たちのストーリーに沿ってコミュニケーションしようとしています。行為の理由、背景を理解した上で相手の行動を促す言葉をかける。
 「相手を動かすためにも耳を傾けることが大事だ」ということが学べる例です。

 別の女性の方からお聞きした例です。同じくコミュニケーションスキル研修で「傾聴」では、相手の話を深く正しく理解するために、意見などせず、まずは最後まで耳を傾けることだと学んだその日のこと。小学生のお子さんが学校での出来事をあれこれと話し始めました。これまでは「そういう時はこういう風にしたほうがいいよ」「お母さんだったらこうする」といったアドバイスをしていたそうですが、その日は、耳を傾けることに注力したそうです。すると、いつもならすぐ自室に入ってしまうお子さんが、その日は学校であったこと、好きなこと、やりたいことなどを話し続けたといいます。「普段聴いたことがないような話までしてくれて、親としてビックリした」とおっしゃっていました。子供の課題を解決してやりたいという親心は一旦封印し、徹底的に話を聴くことで子供からより多くのことを引き出し、理解することができたのです。

 最後に男性の例を。これも受講者からお聞きした話です。
 コーチングに「承認」というスキルがあります。相手の行為、行動などを「認める」ことを言います。承認されることで人は勇気と自信が与えられ、さらに次のステップに進もうと挑戦するものだと言われています。ある男性はコーチング研修初日を終えて帰宅後、パートナーに承認スキルを試してみようと思い立ちました。
 夕食のテーブルについた際、食事を並べてくれているパートナーに「いつもご飯を作ってくれてありがとう」と思い切って言ったそうです。すると彼女は、手を止め固まってしまったといいます。泣いてしまったのか?と思うとさにあらず。
 「あなたはどうしてそれを棒読みで言うの?」と言われてしまいました、と恥ずかしそうに話してくださいました。

 学んだスキルをこうやって身近な相手に使ってみようと思うことも、このほほえましいエピソードを他の参加者に紹介なさったことも素晴らしく、勇気のあることです。

 誰との関係でもどのような場面でも活用できるのがヒューマン・スキルです。仕事ですぐ使うことが難しそうであれば、家族、友人、知人との関係で試してみることもできます。大切なのは、「やってみよう」と思うことです。試してみたら、きっと何かが変わります。


 

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田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[コミュニケーション][2009年1月27日配信]

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