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わくわくヒューマンスキルコラム
第28回 等身大のヒューマンスキルを
執筆:森 美緒

  研修中に受講者からこんな質問を受けることがあります。
  「ヒューマンスキルの講師をしているくらいだから、森さんは、元々、あまり怒ったりしない性格なのでしょうね。」私は毎回こう答えます。「怒って文句を言ったり、すねたり、いじけたりしますよ。人間ですから。」
  質問した受講者は、たいがいちょっと驚いた顔をします。 私はその驚いた顔に驚きます。


  私も仕事で気が滅入ることもあれば、嬉しくてはしゃぐこともあり、つまらないことで家族と口論することもあれば、落ち込んで泣くこともあります。
  性格が他の人より温厚なわけでもありません。公私ともに私を取り巻く環境も、そして私自身も、いつでも順風満帆なわけでもありません。良いときもあれば悪いときもある。それが現実です。
  ところが、不思議なことにヒューマンスキルを「いつも穏やか」とか「怒らない」ことと捉え、相手を尊重し続け、自分の感情 (特に怒りや悲しみなど) を表に出さずにいることだと考えたり、個人の生まれつき持っている性格だと考えたりしている方はとても多くいらっしゃいます。おそらく、そう考えている方が、私を決して怒らない温和な人間だと思ったり、ヒューマンスキル自体を空々しいと感じたりするのではないでしょうか。


  私自身の経験をお話しましょう。
  以前、「私はヒューマンスキルが実践できていないのではないか」と悩んだ時期がありました。知識は持っていても、常に最適な行動ができるとは限らないからです。特に、グローバルナレッジで講師として仕事を始める直前は落ち込んでばかりいました。その頃はヒューマンスキルの講師として10年以上働いている先輩と同等のスキルを自分に求めていました。「先輩と同じような上手な講義をしたい、仕事においても同じパフォーマンスを出したい、なぜ自分にはできないのだろう?」と悩んでいたのです。そのことを相談したら、先輩は、「誰の真似もしなくていい。森さんには森さんのこれまでの経験がある。」と言ってくれました。その言葉を聴き、それまでの自分の間違いに気づきました。ヒューマンスキルを現状の自分とかけ離れた「理想的な行動をとること」と捉えてしまったがために、その「理想」を実現できない自分を責めていたことに思い至ったのです。


  理想的な行動をとる必要はないのだ。もっと「等身大」で考えてみればよい。そう気づいてからは、人と関わるたびに、「今の自分の対応はどうだったか」「何ができていて何ができていなかったか」を考え、「できなかったことがあれば次はできるように行動する」。こうやって少しずつ自分の行動を改善するよう地道な努力を行うようになりました。できていないことを見つけ、できるようにするための道標としてヒューマンスキルの知識を役立てているのです。


  そもそもヒューマンスキルとは一体何でしょうか。
  例えば自分の感情を我慢し、相手を尊重し続けることが、ヒューマンスキルだとすると、毎日がストレスとの戦いです。そして個人の性格に起因するとしたら、ヒューマンスキルを高めることは、現在の自分を否定することにつながるかもしれません。それがヒューマンスキルだと言うならば、私も「ヒューマンスキルなんてきれいごとだ!」と言ってしまいそうです。
  今、私は、自分を取り巻く環境の中でより良い人間関係を作り、より良い関わり方をするにはどのようにすればよいかを具体的な行動にしたものとして、ヒューマンスキルを捉えています。
  どんな業界であれ、どんな業種であれ、私たちはたくさんの人と関わって仕事をします。 仕事をするのなら、成果を残したい。その上で人と一緒に仕事をする場合は、お互いに尊重しあって楽しく関わりたい。そのために自分がどう相手と関わっていくのか。これが私にとってのヒューマンスキルなのです。


  ヒューマンスキルを「実際には役に立たないきれいごとだ」と感じる方や「個人の性格に起因するものだから変えようがない」と感じる方が、もしも「だから実践できなくても仕方ない。」と考えてしまうのであれば、それは勿体無いことだと私は思います。「できなくても仕方がない」と思う前にまだ何かできることがあるはずです。


  講義では知識を分かりやすく伝え、演習では受講者がチャレンジしたスキルに対して効果的にフィードバックする、そんな研修を今年も笑ったり悩んだりしながら、実施していきたいと考えています。お会いする受講者の皆さんにとって、等身大のヒューマンスキルが見つかるように。


  グローバルナレッジの「効果的コミュニケーション・スキル」(ON306) は、講義の内容を演習で実践していただけるカリキュラムになっています。演習を通して、「できていること」「できていないこと」を切り分け、次の演習で再度チャレンジしていただけます。




森 美緒 (もり みお)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。 産業カウンセラー。
1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。商社での秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。
2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。


[コミュニケーション][2008年1月29日配信]

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