わくわくヒューマンスキルコラム
第76回: 一緒に答えを見つけ出そうという姿勢が大事
執筆:田中 淳子
先日、社外から講師を招いて「CS=Customer Satisfaction(顧客満足度向上)」について考える研修を社員向けに開催しました。講義の中で講師がこういう話を紹介してくれました。
「さっぽろ雪まつりが始まるという時期に、旅行会社のカウンターに行って、"ホテルありますか?"と尋ねたとします。もうどこも満室というのはカウンター担当者にはわかっていることなのだけれど、それを調べもせず"この時期ですからね、もうホテルなんか見つかりませんよ"と答えたとしたら、お客さんはどんな気持ちになるでしょう? そんな時、"厳しい状況だと思いますが、もしかするとキャンセルが出ているホテルもあるかも知れませんので、調べてみましょう"と一生懸命探してくれて、その結果、"残念です"と自分のことのように悔しがってくれたら、お客さんの受け止め方はずいぶん違ったものになるのではないでしょうか?」
「旅行会社の担当者は、一生懸命に探してくれた。私の"雪まつりに行きたい、楽しみたい"という気持ちに寄り添ってくれた。希望はかなわなかったけれど、こんな直前に申し込もうとする自分も悪かったわけだし、対応が気持ちよかったから、次の時はもっと早めにここに相談に来よう」そんな風に思えることでしょう。
この話を聞いて思い出したことがあります。
「あのぉ、このセーターの色違いありませんか?」「この靴で、23.5㎝はありますか?」
と店員さんに尋ねると、「出ているだけです」というセリフ。
「出ている商品を見ても、見つからないから店員さんに声をかけたのに、探してもくれないの?」
普段このようなセリフを言われることはなく、たいていは、混雑しているバーゲンセールの時期に聞くものです。だから、いちいち探していられないし、そこになければないですよ、という対応になってしまうのもわからなくはありません。
でも、その時、「えっと、これの赤ですね」「23.5㎝ですね」と言い、付近を一緒に探してくれるだけでも、こちらの気持ちは変わってきます。「あ~ぁ、探してみましたが、ここにある分が最後のようですね。申し訳ないです」などと言われれば、「探してくれたけど、簡単に見つからないし、セールなのだから、好みの色やサイズは残っていないのも当然だな」と諦めもつくし、そのお店に対しても悪い印象を持たずに済みます。
質問された事実に、自分の立場から答えるのではなく、相手の気持ちや希望、期待に寄り添って応対する。結果は同じでも、プロセスが異なり、そのプロセス次第で、お客さんというのは感動したり、満足したり、はたまた、傷ついたり、不満に思ったりする。コミュニケーションというのは、ほんの些細なことで成否が分かれるものなのです。
エンジニアの例です。ユーザの立場の方がこうおっしゃることがあります。
「エンジニアから"無理です、ダメです、できません"と言われるとちょっと悲しくなる」と。
「無理とか、ダメとかではなく、どうすればできるのかを考えてほしい。ITで実現できるかどうかではなく、どうすれば自分がやりたいことが可能になるのか、ということを提案してほしい。抱える問題を理解して、"無理です、ダメです、できません"の代わりに、"こういう方法なら実現しますよ""御社でこういう風に条件を変更してくれれば、可能な方法がありますよ"と言う風に言ってくれたら、嬉しいのに」
「仕様です」にしても同じことで、ユーザ側は「仕様かどうか」だけを尋ねているわけではなく、何かしたいと思って質問しているわけです。だから、「そういう仕様にしてはあるけれど、変更することもできますよ」とか「そういう機能があったら確かに便利ですよね。でも、現時点ではこれが仕様なので、できないのです」という言い方で応じることだってできるはずです。
コミュニケーションにおいては、自分の立場から見た事実だけを伝えればよいのではなく、相手が「望んでいること」をきちんと察知し、相手に寄り添って会話することが大事です。
満足度や信頼関係の決め手は必ずしも「答え」という"結果"にあるのではなく、「自分の気持ちを理解し、一緒に答えを見つけようとしてくれたか」という"プロセス"にも潜んでいるのですね。
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<コミュニケーション関連コース>
■ 効果的コミュニケーションスキル(2012年4月から2日間コースに変更)
■ 要件定義とコミュニケーション
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田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
・ITメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!」
・「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』
『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【対談連載】
ITpro ヒューマンスキル特別対談 田中淳子×芦屋広太
『行き詰まり感』を打開するコツ
【連載】
ITPro ヒューマンスキル往復書簡 田中淳子←→芦屋広太
[コミュニケーション][2012年1月24日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第75回:会議で意見を真剣に聴く効果
執筆:飯嶋 秀行
皆さんは、今週、何回ぐらい会議に参加しましたか?
多い人だと、一日の大半の時間を会議でつぶされてしまうという方もいらっしゃるようです。
研修に参加したリーダーの方に、「会議で困っていること」を挙げていただきました。
「若手から発言が少ない。聞き役に徹している人が多い」
「いつも自分が一人でしゃべっている」
「言いたいことがあっても本音で発言してくれない」
「遅刻してくる参加者も多く、時間通りに開始できない」
「事前課題に取り組んでもらえない」
「議論があいまいなまま終わってしまい、結論が出ない」
「会議で決まったことが実行されない」
等など、このテーマでディスカッションしていただくと、たくさんの意見が出てきます。
話が盛り上がる理由は、問題のある会議については、みなさん実体験をお持ちだからでしょう。
研修に参加されるリーダーの方は、会議について以下のような問題意識をお持ちのようです。
「対面で意見交換をする会議には、多くのコストが発生している」
「お互いに貴重な時間を使って、行う会議だから、是非コストに見合った成果を出す必要がある」
リーダーの立場にいる方、つまり会議を変える力のある方は、以上のような問題意識を持って、何とか問題のある会議を改善していきたいと考えています。そのためには、
「ファシリテーションという考え方を会議に取り入れることが有効ではないか?リーダーである自分がファシリテーションスキルを身に着けて、問題のある会議を改善できるようになりたい」
その思いから、ファシリテーションの研修にご参加いただいています。
ファシリテーションとは、チームで行う活動がうまく進行するように、メンバーの力が最大限に発揮できるよう支援することです。
会議にファシリテーションを導入することで、以下のような効果が期待できます。
・参加者は事前に会議の目的、目標を理解し、十分な準備をして参加できる
・会議中は、全員が積極的に参加し、率直な意見交換ができる
・時間通りに開始し、その時点での結論を明確にした上で時間通りに終了できる
以上のような効果を実感するために、研修の中では、多くのファシリテーションスキルをお伝えしています。実際に模擬会議のファシリテーターを担当し、会議終了後、他の受講者から、参加者の視点で、フィードバックを受けるという手順で体験します。
2日間の研修の最後に、参加者の方に、お一人ずつ感想を話していただく場面があります。
「色々なファシリテーションスキルを実際に試しみて、一番印象に残っていること、気づいたことは何でしょうか?」
「参加者の発言を、きちんと聴いていなかったことに気づきました」
「そう、私も、若手の意見を受け止めていなかったことがよく分かりました」
「若手の発言が少ないのは、安心して、発言できる場がなかったからだということを実感しました」
少し意外な感じがしました。
リーダーの方は、自分がファシリテーションスキルを身に付けて、会議でリーダーシップを発揮することで、問題会議を改善できると考えがちだからです。
ここでも、ファシリテーションに関する個々のスキルやテクニック、フレームワークなどの話が出るのかとおもいきや、リーダーの方が一番印象に残っていることは、「いかに、自分がメンバーの話を聴いていなかったか」ということでした。
「自分が発言している時に、ファシリテーター役がじっくりと聴いてくれると、すごく尊重されている気持ちになるし、促されてどんどん話をしている自分に気づきました」
「今までは、会議で部下の意見を聞きながら、頭の中では、次に自分が何を言うか、会議をどのようにリードしていくかを考えていて、本当に意味で聴けていなかったように思います」
確かにファシリテーションの個々のスキル、テクニックは効果がありますが、土台になるのはコミュニケーションのスキルです。その中でも、まず相手の話を聴くことです。
あなたが、会議で参加者の話を傾聴する姿勢を示すことで、参加者は尊重されたと感じます。自分の話を熱心に聴いてくれた相手に対しては、信頼関係も深まります。
この会議の場ではどんな意見でも受け止めてもらえるという安心感があれば、自然と意見が出やすくなります。
傾聴することで部下の本音を引き出すことができれば、リーダーにとってもメリットは大きいのです。
まずは自分が主催している会議で、参加者の意見を真剣に聴くことから始めてみませんか。
[コミュニケーションファシリテーション][2011年12月20日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第74回: 言葉の力
執筆:高橋 俊樹
先日、社内で会議がありました。異なる部署からメンバが集まり、ある案件について具体的な方策を決定するためのものです。時間は若干オーバーしましたが、全員で出した成果に合意することができました。その後、会議室を片付けながら雑談していた内容がとても印象に残っています。
「今日の打ち合わせはスムーズに進んだよね」
「そうだね、なんでだろう」
「誰も否定的な意見や反応しなかったからじゃないかな」
「そういえばそうだったね」
他にもスムーズに進んだ理由はいくつか挙がったのですが、全員が同意したのは「否定、批判をしなかった」、つまり相手の考えを尊重しながら、前向きな言い方でのコミュニケーションが終始できていたよね、という点でした。前向きな言い方が、より良い方策を出そうという気持ちにもつながり、具体的なアイディアにつながったのだと思います。
もし「こんなやり方はどうかな?」に対して「それは無理だね、できないと思う」とか、
「何とか検討してもらえませんか?」に対して「現実的じゃないよね」と否定的な意見、返答ばかりだとしたら・・・
アイディアもなかなか出せず、最終的な成果にたどり着く前に全員が疲弊してしまったかもしれません。できない理由ばかり考えていると、できることや可能性、アイディアを結果的に狭めてしまいます。さらに頑張って良いものを考えようという気持ちまでも萎えさせてしまいかねません。
前向きにするためのポイントは、根本的な思考を変えるのではなく、まずは言い方を変えてみることです。「できない」」「むり」「いいえ」「しょうがない」「決まったことだから」などではなく、「できる」「~したらできる」という前向きな言葉を意識して使うのです。
例えば「明日までにできる?」と聞かれたら「無理」と返答せずに「~~があればできる」という言い方に変えます。「~したらできる」などの前向きな言葉を使うと、どのようにしたら実現できるかな?という方向で思考が働き始めるので、建設的、創造的なアイディアが出易くなります。
前向きな言い方を用いるメリットは他にもあります。自分にとっても周囲に対しても良い影響や結果を与えてくれるのです。前向きな言い方が多いと、会話は開放的になり、意見も出やすく、雰囲気も明るく楽しくなりますよね。
皆さんも職場に新人が配属され、彼らの前向きな言い方に改めて刺激を受けたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。前向きな言い方は、考えてみよう、頑張ろうという気持ち、姿勢になりやすいですし、その雰囲気や言葉は周囲の人に伝染していくものです。
とは言え、日ごろから前向きに言おうと心がけていても、咄嗟の発言がつい否定的な言い方になってしまう方もいるのではないでしょうか。私も根本的な思考は前向きではないので、否定的な言い方をしてしまうことが時々あります。そのような時は、後から前向きな言い方を追加しています。否定的な表現が出たら、その反対、つまり前向きな表現は何かを考えて、追加して言えばよいのです。これなら簡単にできるのでおすすめです。「自分はネガティブだから無理・・・」と諦める必要はありません。
但し、「前向きな言い方をすれば全部スムーズに進んで結果が出せるのか?」と聞かれたら、私の答えはNOです。なぜなら、大切な前提があるからです。前提とは、そもそも仕事に必要な知識や技術、経験がきちんと伴っていることです。先ほどの新入社員を例に説明すると、技術も業務もこれからの状態だとしたら、どれだけ新入社員らしく前向きな言い方をしてもそれだけでは良い成果や結果にはつながりにくいからです。
仕事は、色々な人とのコミュニケーションなくして進みません。自分の言い方の癖や傾向を知り、前向きな言い方に変えていくことで、気持ちの良いコミュニケーションも増えるでしょうし、良い成果や結果につがるのだと思います。
最後に、チームの若手メンバが気に入っていてよく使っている言葉がありますのでご紹介します。
Can I do it?より How can I do it?
[コミュニケーションモチベーション][2011年11月18日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第73回:とにかく話しかけてみる~Risk it!~
執筆:森 美緒
10月の連休を活用して、金沢へ旅行しました。
観光できるのは、正味1日の予定です。
「行く場所を決めよう」とは思ったものの、
歴史ある町をたった1日で満喫できるとは思えませんでした。
そんな中、ある神社に向かって歩いていると、
2mほどの草を大量に水洗いし、干している年配の男性がいました。
近づいて挨拶し、何のお仕事なのかを聞いてみると・・・
「どこから来たんね?」
「神奈川です」
「神奈川では結納をやらんね?(たぶん、結納をやらないのか?)これはな・・・」
この方は結納品(結婚式でも引き出物になるらしい)の「亀に獅子が乗った飾り物」の職人さんでした。作業工程、獅子が口にくわえた刀の意味、作るのにどのくらいの時間がかかるかなど、時間を割いて話してくださいました。最後に「○○神社だけは見とくといい。金沢の誇りだから。今日は結婚式やっとるやろ」とある神社を教えてくださいました。
それは、実は私がもともと行こうとしていた神社でした。
職人さんの情報のおかげで、結婚式の様子まで遠巻きに見学させてもらえました。
その後も、たくさんの方が私の金沢旅行を助けてくれました。
酒屋さんで酒蔵を紹介してもらい、酒蔵見学(試飲)。
たまたま同じ横断歩道で信号待ちしていた方から加賀野菜の金時草を教えてもらい、市場で金時草を見物。
寺院では駐車場にいた人が、「裏にある石碑は見た?」と教えてくれたので、石碑読解。
能楽堂を見ていたら観光者らしき人が、能楽の博物館もあると私の地図にマーキングしてくれて、博物館も見学。
骨董品を扱うギャラリーのある建物では、喫茶店のマスターが建物に使われているステンドグラスの歴史的経緯や、能登のお酒のこと、和傘の職人さんのことなどを話してくれました。
結局、朝10時から開始した私の観光は、「次はどこへ行こう?」と悩むことなく真っ暗&空腹で観光を終わろうと決める18時半まで続きました。
観光名所を確実に見て回ることができたわけではないけれど、金沢という土地の一部にしっかり触れることができたような満足感がありました。
さて、この話を帰宅後に友人や家族にしたところ、「普通は知らない人にそんなに気軽に声をかけない」「普通はそんな風に他人から声をかけられない」と驚かれてしまいました。
確かに、言われてみればそんな気もします。
対人コミュニケーションには「やってみる→関係を構築する→中断または終了する」というプロセスがあります。このプロセスで「やってみる」がなければ会話も関係も始まりません。旅行中、たしかに私は目が合うとお辞儀や挨拶を行い、質問があれば声をかけて教えてもらいました。たくさんの方から助けていただけたのは、「対人コミュニケーションを始める決断をし、声をかけ、会話をした」成果といえるかもしれません。
私が金沢観光で得た満足感の根源は「リアリティ」だと思います。
ガイドマップに書かれていること以上のことを、金沢の人から、金沢の言葉で聴き、時には目の前で実際に見せていただけたリアリティです。
仕事でも同じようなことがあるのではないでしょうか。
要点がまとまった業務フローのドキュメントで業務を捉えるのと、実際に業務をしている人を見て「それはなぜ行うのか?」と質問して教えてもらうのでは得られる情報量がまったく違うでしょう。自分から関係を作らなければ、得られない情報は仕事の中にもたくさんあります。
効率化が加速する中、コミュニケーションの希薄さを問題視する企業も多い昨今です。
たとえば、よくお聞きするのは、以下のようなケースです。
質問しにいったら、マニュアルを見てくださいといわれて、会話が終了。
挨拶しても、挨拶が返ってこない。
声をかけられるのは、業務依頼(指示)があるときだけ。
「対人関係は大切だ」ということは、賛同を示すかどうかは別として、組織に属す人であれば誰でも知っています。でも実際に自分から「やってみる」人は少ないのかもしれません。その結果、もし対人関係の大切さにリアリティが感じられないのであれば、まずは自分から「やってみる」のも、1つの選択ではないでしょうか
対人コミュニケーションプロセスの「やってみる」を英語では「Risk it」と言うそうです。挨拶に毎回相手が返事を返してくれるとは限らない。質問して、いつでもリアリティある情報を得られるとは限らない。拒絶され、傷つくかもしれない。そのリスクがあったとしても、得られるものがあるのなら、話しかけてみる価値はあるのではないでしょうか。
[コミュニケーション][2011年10月24日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第70回:いまいまで、ほぼほぼ、ガラガラポンです
執筆:高橋 俊樹
ある会議の場にて
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「じゃ早速だけど、前田さん、先日の件の進捗はどんな感じ?」
「そうですね、いまいまの時点では進捗通りですね」
「そうか、じゃあ何かあったら言ってくれるかな」
「大島さんはお願いしていたデータの集計はできたかな?」
「はい、ほぼほぼできています」
「助かるよ、先にできたデータとがっちゃんこしたいのでなるはやで頼むよ」
「わかりました。マージできるように早急に仕上げます」
「ところで篠田さんは、先週、営業待ちと言っていた件はその後どうなった?」
「実はですね、営業側で一旦ガラガラポンするってことになったみたいで...」
「あぁそう、参ったね...。営業にまるっとお願いしてたからね」
「ホント参りました。営業の秋元部長マターになっているみたいで、こちらでは何も手を付けられない状態なんです」
「そうか。営業には一丁目一番地でやってほしいんだけどなぁ。ま、僕から秋元さんに言っておくよ」
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私たちは業務の中で多くの時間を会議に費やしています。
顧客との打ち合わせや何かを決定する会議ではかなり具体的に話を進めていても、いつものメンバで行っている定例の朝会や進捗会議などではそうではないことも多いようです。
事実、冒頭の会話例のように、「分かるようで実はよく分からない」曖昧な言葉を使ってのやりとりが多いという話を色々な方から伺います。では、何が言いたいのかよく分からない/具体的に何も決まらない会議を改善するにはどのようにしたらよいのでしょうか?
「ファシリテーション(facilitation)」という手法が上記の問題解決に役立ちます。
言葉を聞いたことがある方も多いことでしょう。ファシリテーションには「促進する」という意味から、参加する人々の協働を促進したり、手助けしたりすることを指します。
会議などの効率を高めたり、参加者の納得感を引き出したりするための手法として利用されており、実際に多くの企業で会議をファシリテートするための訓練や考えを取り入れています。具体的には、事前準備のポイントや開催通知の工夫、進行上のポイント、意見を引き出したり、まとめたりするためのテクニックなど多岐にわたります。
このファシリテーション・スキルを上手に用いるための前提があります。
それは、私たちが意思疎通のために相手とのやりとりで使用しているのは言葉によるコミュニケーションだという点です。
ビジネスでは相手から「つまりどういうこと?」と問われます。何故なら抽象度が高い言葉をそのままにしていると、意味を取り違えたり、話が曖昧なまま進んだりしてしまい、具体的な行動に移せないからなのです。せっかくの時間を割いての会議やミーティングが、結果としてうやむやな内容になり、期待する行動や成果につながらないのでは意味がなく勿体ないことです。会議体はもちろん、それ以外に於いてもお互いが相手の話から具体的に行動できるようなコミュニケーションを第一に心がけて行くことが大切なのです。
そのためには具体的なコミュニケーションを心がけるだけでもわかったつもりになりがちな会議を改善することができます。その上でさらによい会議などが運営できるように様々な工夫を取り入れてみましょう。
冒頭の会話に戻ります。会議では7月に配属されたばかりの新入社員である江口さんが議事録係に任命されていました。自分が知らない専門用語や技術用語がたくさん出てくると身構えて出席したのですが・・・それ以前に不思議な日本語で頭がいっぱいになってしまったようです。
―「いまいま1 」?それって今とどう違うの?
―「ほぼほぼ2 」って「ほぼ」より100%に近いってこと?
―「なるはや3 」ってわかるけどいつまで?
―「マージ4 」がっちゃんこはわかる。でも「まーじ」ってなんだろう?
―「まるっと5 」?なんか不思議な語感。初めて聞いた
―「ガラガラポン6 」意味不明。お金入れるとカプセルが出てくるアレのこと?ええ?
―「マター7 」○○さん来たーなら分かるけど○○さんまたー?
―「一丁目一番地8 」聞いたことがないけど・・・いったいどこの住所なんだろう
皆さんは上記の言葉、全てお分かりになりましたでしょうか?
1 まさに今、強調としての現時点、の意味らしい
2 限りなく100%に近い、という意味らしい
3 なるべく早く。英語ではアサップとも言う。As soon as possibleの略
4 merge:コンピュータ用語でファイルやプログラムを1つにまとめること
5 東海地方の言葉で、「全部」の意味
6 すべてやり直し、という意味らしい
7 Matter:事柄、問題。人や役職のあとにつけて○○の担当、責任などと使われる
8 主に政界で使われ始めた言葉らしく、最優先事項という意味らしい
☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・
グローバルナレッジでは、さまざまなヒューマン・スキル研修をご用意しています。
ビジネス・ファシリテーション
~納得感のある会議、円滑なチーム活動のための話し合う技術~
効果的コミュニケーション・スキル
~効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション~
☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・☆・
高橋 俊樹(たかはし としき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー
1991年、自動車メーカー、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当
その後テレマーケティング会社を経て2001年より現職
ヒューマン系講師として新入社員から管理職まで幅広く人材育成支援に当たっている
2010年4月まで日経BP、ITproのselfupで「コミュニケーション・スキル講座」を連載
[コミュニケーションファシリテーション][2011年7月26日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第63回: 「全力で!」
執筆:高橋 俊樹
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先日、近所のショッピングモールに出かけた際の出来事です。ぶらりと入ったスポーツ用品店で定価2万円のアウタージャケットがなんと3千円で売られていました。お気に入りのスポーツ系ブランドなのですが、マイナーなため滅多にお店で見かけることはありません。値段とブランドだけではなく、デザインも丁度欲しいと思っていたものでした。ところが、セール品のためか色とサイズが私の希望と合いません。欲しいと思った黒だけ、私に合うサイズがないのです。
ほんの少しの希望を抱き、近くにいた年長の店員に在庫を尋ねてみました。店員さんはチラッと商品棚を見やり、次のように返答しました。
「お客様、こちらは色もサイズも棚に置いてあるだけとなっております」
よく耳にする対応ですね。「やっぱりなぁ、セール品はそんなもんだよなぁ」と思いつつ、店を後にしました。その後、しばらくは「もう少し早かったらサイズがあったのかもしれない。タイミングが悪かった」と残念な気持ちで一杯でした。
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私たちの業務は何かを依頼したりされたりすることで成り立っています。
依頼する側の立場で考えると、依頼内容に対して希望通りの結果が得られたとしても満足できない場合があります。結果はもちろんですが、その過程でどれだけこちらの依頼に真摯に取り組んで貰えたのか、という姿勢が大きく影響するからです。具体的には、以下のような姿勢や行動が相手に見て取れた場合に、依頼者は満足しやすくなるような気がします。
・話を聴き、受け止めてくれる
・気持ちを察してくれる
・ポジティブな言葉で返してくれる
・役に立ちたいという気持ちを述べてくれる
・できる限りの対応や対策をしてくれる
・結果だけでなく状況や過程を教えてくれる
仕事を依頼される側にしたら、いつも相手の希望通りに依頼された作業や指示を遂行できるとは限りません。だからこそ、上記のような姿勢や行動で相手の依頼に取り組むことが大切です。結果が出せなかったとしても、相手の満足を得られたり、次の仕事につながるような関係を構築したりすることに結びつくからです。
さて、冒頭の続きです。
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帰宅後もあのお買い得なアウタージャケットが欲しいという気持ちが消えません。そこで、黒ではなく、私に合うサイズが残っている他の色にしようかと考え、再度そのお店を訪れました。ただ、何度見ても他の色ではぴんと来ないのです。そんな私に、若い店員が声をかけてきました。
「何かお探しでしょうか?」
「これの黒が気に入ったのですが、もうないんですよね?」
「申し訳ございません。この商品は今朝店頭に並べたのですが、黒は最初から小さなサイズしかなかったと思います。他の色でしたらお客様のサイズに合うものがありますがいかがですか?」
「そう思って他の色を見ていたんだけど、どうも踏ん切りがつかなくて・・・」
「そうですよね、気に入った色でないと後悔することもあるので、気に入った色で探される方がいいと思います。もしお時間を頂けるのなら、探すこともできます」
「え?でも在庫がないんですよね?」
「はい。当店にはございませんが、他にも12店舗ありますので、他店に在庫があるかもしれません。また、私どもになくても卸元にある可能性もありますので、せっかく気に入って頂けた商品、私が探すお手伝いを全力でさせていただきます!」
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最終的に黒は見つかりませんでした。要望は叶わなかったのですが、それでも私は店員の対応にとても満足することができました。なかでも店員の「全力で」というポジティブな言葉が心に残りました。数千円のセール品にも関わらず、一所懸命に対応しれくれたことが"買えた・買えない"という結果以上に嬉しかったのです。
自分に置き換えてみると、他人に対して「全力」を求めたことは(心の中でつぶやいたことも含めて)相当数あります。しかし、私が何かを依頼された時に、「全力」を出すことをどれだけ相手に言えたか、と考えると数えるほどしかありません。あの店員を見習って、2011年は自分自身も周囲に「全力」を伝えられるように頑張りたいと改めて思っています。
2011年もこのコラムを担当する講師一同、身近な話題を元に皆様にわくわくして頂けるようなコラムを「全力」でお届けいたします!

高橋 俊樹 (たかはし としき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、2001年より現職。ヒューマン・スキルグループのマネージャ兼講師として人材育成支援に当たっている。
[コミュニケーション][2010年12月16日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第61回: 良好な人間関係の構築
執筆:酒井 陽介
9月27日、私たちグローバルナレッジの本社オフィス、および研修施設が引越しをしました。
約7年、お世話になった「新宿文化クイントビル」にお別れを言い、西新宿にある「新宿オークタワー」への移転です。
引越しに伴い、研修施設の名称は「新宿カスタマビジットセンター」から「新宿ラーニングセンター」に変わり、各教室や設備、私たちのオフィスも綺麗に快適に一新され、名実ともに環境が大きく変化しました。
新しくなった教室エリアは、お客様からの評価が高く、「フリースペースからの眺めがとても良いです」「きれいな会場で快適に受講できました」「アクセスも良く、綺麗で清潔感のある会場でした」などの声をいただいております。
私たちが業務を行うオフィスエリアは、以前と比較して少しだけ手狭になりましたが、窓からの眺望が良く、周辺の高層ビルを見渡すことができます。フロア全体が見渡せるレイアウトに変更されたことで、各部門とのコミュニケーションがより図られるようになり、従来にも増して気分よく、効率的に業務に取り組めています。
組織に所属をしていると、引越しに限らず、季節が変わるタイミングに「環境の変化」を経験することがあります。例えば、昇進・昇格によるポジションの変更、異動によるチームメンバーの変化など、時に勤務地そのものが変わることがあります。そのような変化が生じた際に、私が最も気を配っているのが『自分を取り巻く周囲との良好な人間関係の構築』です。
「人は一人では継続して成果を挙げることができない」と私は考えます。周囲との良好なコミュニケーションによって意見や情報を交換し、時にサポートを受けます。「良好な人間関係なくして、十分な働きや充実した生活が送れない」と思うからです。
私が担当するコミュニケーション研修でも、参加者からよく「良好な人間関係を構築したい」という希望を耳にします。
「相手を気遣ってしまい、声をかけようか迷ってしまう...」
「声をかけるタイミングや言い方に気を使い過ぎてしまい、気疲れしている...」
「挨拶はできるけど、その後の会話が弾まないことが多くて...」
「つい目をそらしたり、気づかないふりをしてしまったりすることが多い...」
上記のように、自分を取り巻く人間関係の構築は仕事を進めて行く上で、誰しもが抱えるテーマと言えます。ではどのようにすれば良好な人間関係を構築できるのでしょうか?
私たちの対人関係は、「始めてみる(挨拶)」→「関係を育てる(おしゃべり)」→「終了する(一時的な中断)」の3ステップで発展していきます。その中でも特に、最初のステップ「始めてみる」が一番大切なのです。
●自分から挨拶してみる
研修では、「初対面の人と話をするのが苦手」、「なかなかなじめない」、「距離がなかなか縮まらない」という課題をお持ちの方に、まずは挨拶から実践することをお伝えしています。挨拶の積み重ねが良好な人間関係を構築すると言っても過言ではなく、「おはようございます」「お疲れ様」など、目が合ったときに声をかけてみることで、相手からの敵意や警戒心をなくすことにつながるからです。
●アイスブレイクを取り入れてみる
次に「アイスブレイク」を取り入れることです。アイスブレイクとは「氷のように冷たく硬い雰囲気を打ち砕く事」です。無理にユーモアを取り入れてウケを狙うのではなく、挨拶の後に一言、「今日はいい天気ですね」「朝晩冷え込んできましたね」「最近は忙しいですか」と声をかけてみるだけでも十分です。
いずれも、ごく簡単なことです。決して「流暢に話さなければならない」と考えず、「挨拶」と「アイスブレイク」、この2つを取り入れるだけで良好な人間関係を構築することができます。
引越しの慌しさが去り、身の回りの荷物整理が終わりました。徐々に新しい環境に慣れようとしています。私も新しい環境で新たな人間関係の構築にとりかかっています。今まで席が離れていた、あまり話したことのない同僚に、「始めてみる(挨拶)」、「アイスブレイク」を活用して、
「おはようございます、今日も忙しそうですね...」
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グローバルナレッジでは、さまざまなヒューマン・スキル研修をご用意しています。
効果的コミュニケーション・スキル ~効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション~
酒井陽介(さかい ようすけ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育トレーナー
1998年、都内の百貨店に就職し、販売職およびマネジメント職を担当。その後、インターネットリサーチ会社にて営業組織内の教育制度の立案・構築や、中途・新卒入社社員に対する研修の実施を経て2009年より現職。
コミュニケーション、プレゼンテーションなどヒューマンスキル研修の実施に当たっている。
[コミュニケーション][2010年10月26日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第55回: 新年度に思うこと
執筆:酒井 陽介
春を迎え、入社や転勤、異動など新しい環境で新しい生活をスタートされる方も多いことでしょう。期待に胸がふくらむ一方で、そこでうまく仕事ができるか?よい人間関係が形成されるか?など、誰しも不安な面もあるはずです。
私は以前、流通業界で仕事をしていました。入社してから転職するまでの8年間、7度異動を経験しその都度、ハラハラ・ドキドキしていたことを思い出します。
異動は自分のキャリアアップのチャンスでもありましたが、それに伴う悩みも発生しました。これまで築いた人脈は途絶えてしまい、次に担当する売場ではどのように仕事をするか?予算をどのように達成させるか?そのために必要な商品をどのようにしてお取引先から供給してもらうか?といった事で頭を抱えていました。
そんな中で、私がいつも一番に考えていたことがあります。それはどこの職場へ配属されても「早くみんなに好かれよう!」ということです。業界の特性上、正社員をはじめ契約社員、アルバイト、パート、そしてお取引先からの派遣社員といった雇用形態の異なるスタッフといつも一緒に仕事をしていました。そのため周囲のメンバーと円滑に業務へ取り組み、効果的なマネジメントをするにあたって何よりも良好なコミュニケーションが必要でした。
そこで考え対応した方法が3つあります。
まず「挨拶」です。「おはようございます」「お疲れ様でした」など、どんな相手にも明るく元気に大きな声で挨拶しました。相手の名前やバックグランドが分からなくても自分が意識さえすればすぐに出来るコミュニケーションの第一歩だと考えたからです。
次に取り組んだのは「伝え方」です。相手のメッセージに対し、自分が「理解した」「納得した」という意思表示を、言葉に加えて、顔の表情や声の大きさといった誰が見てもわかりやすい態度をとることで表現しました。
そして、最も徹底したのはコミュニケーションをとる相手の話を上手に聴くことです。会議やミーティングの場で、相手の要望を十分に聴き、自分のアイデアを無理に押し通すことは避けました。部下や後輩といったスタッフからの相談事も自分の意見や考えを伝える前に、相手の話をよく聴くように努力しました。
3つの工夫のおかげかどの職場でも比較的早く、環境に慣れ、顧客作りやメンバーとの関係構築に成果を上げることができました。
今はその時の経験も活かし、コミュニケーション・スキルのコースを担当しています。
毎回多くの方がコースを受講されます。年齢や役職に偏りはなく、いろいろな方がお見えになります。私はコースの初日に必ず「どうしてこのコースを受講しようと考えたのですか?」「受講してどのようになりたいですか?」と伺います。
その問いに対して多くの方が「周囲と良好なコミュニケーションをとれるようになりたい」「お取引先の関係者とストレスなく会話をしたい」「自分の考えを上手く伝えられるようになりたい」とお答えになります。
私自身の経験と重ね合わせて考え、業界や環境が違っても「他者と良好なコミュニケーションをとりたい」と思う課題は皆、同じなのだと感じています。
コミュニケーションという言葉を耳にすると「気の利いたことを話そう」「相手をどうやって説得しよう」とすぐに考えてしまうかもしれません。でも、実はそんなに難しく考える必要はないのです。コミュニケーションは話の中身に関心を持つことも大事ですが、まずは相手の「話したい」「聞いてもらいたい」という気持ちに耳を傾けることから始まります。挨拶を交わし、話に耳を傾け、そして内容や感情に理解を示します。それだけでもコミュニケーションは十分にとれるようになります。
皆さんは「新年度」と聞いてどんなことを思い浮かべますか?新しい環境でスタートする方に限らず、普段、何気なく行っているコミュニケーションを今一度チェックしてみるのはいかがでしょう。
「効果的コミュニケーション・スキル
~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~」
酒井陽介(さかい ようすけ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育トレーナー
1998年、都内の百貨店に就職し、販売職およびマネジメント職を担当。その後、インターネットリサーチ会社にて営業組織内の教育制度の立案・構築や、中途・新卒入社社員に対する研修の実施を経て2009年より現職。
コミュニケーション、プレゼンテーションなどヒューマンスキル研修の実施に当たっている。
[コミュニケーション][2010年4月20日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第54回: 他者の学習を支援していますか?
執筆:岩淺 こまき
受講者の方と話していると、勉強になることや感動することが沢山あります。最近では、若手社員の方が受講後におっしゃったことが印象に残っています。
「練習し続けることで、ヒューマン・スキルは向上することがわかりました。でも、自分一人で練習するのはめげそうなので、以前同じ研修を受講した人とチームを作って、一緒に練習しようと思います」とても意欲的な発言で、応援したい気持ちが湧きました。
と同時に、私は少しだけ寂しい気持ちになりました。というのは、チームを作ろうと思った理由を聞いたからです。「以前研修で学んだスキルを社内で試した時に、否定されたことがあったから。邪魔されない勉強会を作って練習したい」そうおっしゃったのです。
「上司や同僚から否定や駄目出しが多く、社内でスキルを使いづらい。練習する気を無くしてしまう」
実は、同じ意味合いの話を受講者の方からたびたび耳にします。例えば、研修受講後に普段より意識して相手の話を聴く態度をとると、「急に変わろうとしてヘンだよね」と笑われる。受講後に提出した報告書の内容を上司にきちんと読んでもらえない。仮に報告書を読んで「いいね、部内で実践してよ」と応援してくれたとしても、いざ試したり勉強会を企画したりすると「そんなのいいから、仕事して」と駄目出しをされる、など・・・。せっかく試そう、より良くしようと思ってとった行動を、周囲に否定されてしまう。そんな中で、受講後の高い意欲を忘れてしまうのです。
こういう時に「意識して使っているんだね」と受け止めてもらえたら、続ける意欲が沸いてきます。同僚が研修を受講してきたら、「どのようなことを学んできたの?」と質問したり、「それは自分達の業務だったら、どのあたりで活用できそうなの?」など学んだスキルを教えてもらったりする。人は教えることで、理解が一層深まります。
先輩や上司が研修を受講した後にも、様々な支援ができます。上司が、今まで行っていなかった「承認(相手の存在を認める言動)」をしたとしましょう。恐らく慣れていないから、たどたどしい承認です。あなたは内心、「研修後だからって張り切っちゃって」とか、「いつまで続くんだろう」などと、思うかもしれません。いつまで続くかは、ここでの周囲のみなさんの反応に左右されます。冷ややかな表情や態度が出ると、上司は一回でやめてしまうかもしれません。「認めてもらえて、恥ずかしいけど嬉しいです」など、まずは受け止め、具体的に感じた点をフィードバックすれば、上司は自信がつき、承認の行動を続けようという気持ちになります。研修の効果は、受講後のフォローに大きく影響されるものなのです。
4月には新入社員が入ってきます。緊張しながらも、新入社員研修で学んだことを使って頑張ろう、と意識している人ばかりです。相手が意識的に練習しているなと感じた場合は、先輩社員であるみなさんから、「今の説明は、簡潔だったので理解しやすかったよ」とか「はじめに何を説明するか簡単にポイントを言うとわかりやすいよ」など、適切にフィードバックをすると、新入社員のスキル向上を支援できます。
スキルは繰り返し練習する中で定着します。良い行動を定着させるためには、「スキルの練習を受け止めてくれる場」が欠かせません。周囲のみなさんからの影響は、とても大きいものなのです。
「効果的コミュニケーション・スキル
~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~」
「プレゼンテーション・スキル実践演習
~説明力を身につけ、説得力あるビジネスパーソンになる~」
岩淺 こまき (いわあさこまき)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。
1997年、システム販売会社に就職し、営業技術支援および導入企業向けの研修を担当。
人材紹介会社にて中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て2007年より現職。
プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。
[コミュニケーション][2010年3月23日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第50回:互いによく知ること
執筆:田中 淳子
「マンションにおける騒音問題を解決する試み」を取材した番組をTVで見たことがあります。ある老夫婦の真上の階に小さい男の子2人が住んでいて、夜毎ほぼ決まった時刻に「ばたばた」と走り回る音が気になって仕方ない。そろそろ寝ようかという時間に天井から聞こえてくる足音にいらいらしてしまう。そういった苦情を受け取ったマンションの管理組合が問題を解決する過程を紹介していました。
普通に考えると、「上の階の人は物音をしないよう気をつけましょう」「防音のシートを敷きましょう」といった「対処療法」を取ることになりそうですが、このマンションでは、この難問を別の方法で解決しました。
まず、住民揃っての餅つき大会といったイベントを開き、お互いの顔を見て、直接語り、知り合う機会を設けました。件の老夫婦と幼児2人の家族もここで初めて顔を合わせました。老夫婦にとって子どもたちの無邪気な様子はかわいらしく、子どもたちにとって老夫婦は離れて住む自分たちのおじいちゃん・おばあちゃんのような気持ちがしてなついていきます。
このイベントがきっかけとなり、2家族間で交流が始まりました。互いにお土産を持って行ったり、家に上がり、お茶を飲んだりするようになっていきます。
相変わらず、子どもたちの夜毎の「ばたばた」は続いているものの、老夫婦はこの足音が気にならなくなったばかりか、「おお、今日も元気に走り回っているな」と天井を見上げてほほえましくさえ感じるようになりました。決まった時間に足音が聞こえてこない日は「病気でもしているのだろうか?明日様子を聞いてみよう」などとかえって心配するまでになったのです。
このマンションでの問題解決の方法は、「コミュニケーション」のあり方の大きなヒントを与えてくれます。
コミュニケーションというと、「どう聞くか」「どう伝えるか」「どう表現するか」「どう食い違いを解消するか」といった相手との"やり取り"の部分につい目が向き勝ちになります。しかし、同じことを聞いても、同じことを伝えても、解釈の仕方が異なる場合があり、多くの場合それは、相手をよく知っているかどうかに左右されてしまいます。
人は、相手の人となりや置かれた状況を知らなければ、その人の行動を好意的に解釈するのは難しくなります。一方で、相手の人となりや置かれた状況をよく知っていれば、その人の行動を好意的に解釈することができるようになるものです。
私もこんな経験をしたことがあります。
ある人から上司に関する相談を受けました。「課長にメールで報告や問い合わせをしてもめったに返事をくれない。私のメールなんか見ていないのかも。見ていても面倒だから返事をしないのかな。」
この上司の人柄も、当時の仕事状況もよく知っていた私は、「そういうことではないと思うよ。今、彼は非常に忙しくて、読んではいるけど返事する余裕がないんじゃないかなぁ。」と伝えました。「あ、そういうことか。」と彼女も納得していました。
どう聞くか、どう話すか以前に、相手をよく知る。自分をよく知ってもらう。「顔を知っている」と「どういう人か知っている」という両方の面で。この二つを実現するには、対面して直接会話をするといったアナログなコミュニケーションが欠かせません。
ずっとメールでのやり取りだけを続けていた離れた事業所同士の人がある時出張で顔を合わせたところ、「いつもメール送ってくる人はあなただったんですね」「今日は直接顔を見て話すことができてよかった」と互いに安心できた。顔と人となりがわかったことで、再びメールでのやり取りだけの関係に戻っても、仕事の依頼や報告がよりスムースになった、という例もあります。
電子メール、インターネットと私達の周りにはデジタルなコミュニケーション・ツールがあふれています。これらは速さや正確さ、同報性において便利なものですが、「互いによく知り合う」ことに関しては、今でもやはりアナログのコミュニケーションに軍配が上がります。
コミュニケーションにおける「聴き方」「伝え方」「双方の葛藤(対立)の解決方法」などを
演習を通じて学ぶコースです。
「効果的コミュニケーション・スキル ~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~」
田中 淳子
(たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[コミュニケーション][2009年11月25日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第49回:相手の意図、汲んでいますか?
執筆:岩淺 こまき
家族で海外旅行をした際、母の表現力にびっくりしました。日本語が話せない現地の人と英語を話せない母がコミュニケーションをとって、自分(母)の意図を確実に伝えていたからです。
母が使うのは身振り手振りのみ。でも、相手に伝わる表現力を発揮していました。
例えば、カフェで。全く日本語の通じない店員に、残ったマフィンを持って帰りたいことを目線だけで表わします。マフィンを指差し、訴えかけるような目で黙って小首をかしげる(「マフィン持って帰りたいなぁ~」のポーズ)。店員は母の意図を察して、持ち帰り用の包装紙を渡してくれました。
さらに、ビーチで。大きく両手で円を描き、日本語で「う・き・わ」と言う(「浮き輪を貸して欲しい」のポーズ)。このときも何度かのやりとりの結果、無事に浮き輪を貸してもらえました。
通じない日本語、大雑把なジェスチャー・・、わかりにくい説明といえば、これ以上のことはないかもしれません。なぜ母が自分の意図を相手に伝えることができたのか、私には不思議でした。
一生懸命な母の「伝えたい熱意が相手に届いた」という面もありますが、それだけではないと思えます。今回母が結果を出せた一番のポイントは、聞き手側(店員)の「伝えたいことは何か」という相手の意図を汲む意識が高かったことにあると考えています。いくら伝える側(母)に熱意があっても、聞く側(店員)に意識がなければ、母の表現では恐らく意図が伝わらなかったでしょう。仮に店員が「この日本人、何を伝えたいのかさっぱりわからない」「わかるように話して欲しい」と思い、母の意図を汲むことを放棄してしまったら、お互いに不満足な結果になったはずです。
仕事でも似たようなことが起こります。例えば、お客様にヒアリングする場合、相手の説明がわかりにくいと、「もう少し考えをまとめて説明してくれたら良いのに・・」「順序立てて説明してくれたら助かる・・・」などと思うことがあります。しかし、たとえわかりにくい説明でも、ヒアリングをする側が意識することで、相手の意図を汲み取ることができます。お客様の話している内容を「お客様のおっしゃりたいことはこういうことですよね」と言い換えて確認したり、疑問点は質問したりするやりとりの中で、お客様の伝えたい意図が明確になっていきます。
冒頭の母の例に戻ります。店員は、母の意図を確認するために、何度も母とやりとりをしてくれていました。はじめは母の言葉から自分がわかる日本語がないか注意して聴いていたようです。知っている単語がないとわかると次に、身振り手振りを見て判断をしました。大きく両手で円を描く手振りから、「誰か探しているの?」と質問してきたり、ビーチボールを指し「これですか?」と尋ねたり・・・。そのやりとり中で「母が何を伝えたいのか」を理解し、お互いに満足できる結果につながっていました。
母と店員のやりとりから、「何を言っているのかわからない」ではなく、「この人は何を伝えたいのか?」という意識を聞き手が持ってコミュニケーションを取ることの大切さを知った旅行となりました。
余談ですが・・・母はこの他にも、色々な店で店員とやり取りをし、都度「あぁ、よかった。伝わったわ~」と満足そうに言っていました。ヘタに文法を考えたり、きちんとした単語を使おうとしたりする私より、良いコミュニケーションをとれていました。なかなか伝わらなくてやりとりが長くなっても、いつもにこにこ笑顔でコミュニケーションをとる母につられて、店員も楽しく気持ちよくコミュニケーションがとれたのかもしれません。
理屈も大切だけれど、その前に笑顔やコミュニケーションをとろうという気持ちが大事なのだな、と母に教えてもらいました。
岩淺 こまき (いわあさこまき)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。
1997年、システム販売会社に就職し、営業技術支援および導入企業向けの研修を担当。
人材紹介会社にて中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て2007年より現職。
プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。
[コミュニケーション][2009年10月27日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第48回:会話から得られるもの
執筆:森 美緒
「皆さんはどのくらい社内で会話をしていますか?」
「その会話には、業務とは関係がない、雑談に近いような内容も含まれていますか?」
研修中、受講者にこう質問をすると、直面している仕事を進める上で必要最低限の会話しかしないという方が、毎回数名はいらっしゃいます。
その訳を尋ねると「時間がもったいない、忙しい」、「得られるものがない」という理由が多いようです。しかし、業務以外の会話から得られるものは何もないのでしょうか?
ヒューマンスキル研修では受講者が、チーム演習でディスカッションをしたり、お互いの課題を紹介し合ったりと、多くの会話をします。これは、ただ一方的に講義を聞くよりもディスカッションをしてお互いに会話をすることの方がより高い学習効果を得られるからです。
たとえば「コミュニケーションは大切です」という主旨の講義をしたとします。ただ聞くだけですと受講者は「ふーん」「そうだね」と理解するものの、時間ともに記憶は薄れ、数日後には「何が大切だったかな」と忘れてしまう方もいます。
そこで会話が求められるディスカッション形式をとると「現場ではこのスキルをこう使えるかも」「コミュニケーションがうまく行かずにこんなことがあった・・・」と講義と業務を関連付けて経験談を話すことができますし、「正直に言うと苦手な相手とはコミュニケーションしたくない」「忙しいとついキツイ言い方をしてしまっているかも」などそれぞれの受講者の考えを共有することもできます。
講義を聴くだけでなく、相手と会話をすることで「なるほど!」と腹落ちするのです。その結果、講義内容をより深いレベルで理解できるので、高い学習効果が得られるのです。
このように研修では意図的に受講者同士で会話ができるようにしているのですが、受講者の皆さんはしばらくすると、休憩時間にも自然に言葉を交わすようになります。家族のこと、趣味の話などプライベートな内容から、業界のこと、最近の新入社員のことなど業務に関わるものまで、実に多くの会話をしています。
受講後アンケートでは、「内容以外に他の受講者の話が聴けてよかった。」「同じような考えの人がいることが分かってうれしかった」などの声を多数頂戴します。これは講義内容だけでなく、それ以外の会話からも得られたことがたくさんあったのだからだと思います。
さて、冒頭に戻って考えてみると、直面している業務以外の話はあまりしない、というのはもったいないと思えてきます。他社の方との会話がそれほど役立ったと思えるのであれば、社内での会話も同じように意義があるはずだからです。
忙しい中でもちょっとした工夫や気遣いで会話しやすい環境を作ることができるのではないでしょうか。
私の所属するチームのデスク周辺には小さな椅子とテーブルが置いてあります。(お菓子が置いてあるので、仲間内では餌付けーション(Educationのもじりです)センターと呼ばれています。)他チームの人が来ると、まず椅子を薦めてから情報共有や打ち合わせを始めます。
座って落ち着いて会話できるため、業務の会話が終わっても、本来の目的とは関係のない会話を続けることがよくあります。これは一見すると、業務と関係のない会話なので意味がないものにと思われるかも知れません。けれども、その会話から得られるものもたくさんあります。
「営業の視点で言えば・・・」
「SE経験から言うと・・・」
「プロジェクト管理の観点からは・・・」
会話の相手がヒューマンスキルを専門にしていない人だからこそ、私には目から鱗が落ちるような意見を言ってくれることがあります。場合によっては、話が発展して新しい企画やアイディアが生まれます。
さらに、お互いの近況を理解し合うことでねぎらい合えることもあります。皆も頑張っているのだとわかり、自分を奮い立たせるのです。
このように直面した業務以外の会話から、アイディアが生まれたり、膨らんだり、やる気が刺激されたり、たくさんのものを私たちは得ています。
「会話から得られるもの」それは、協働する醍醐味につながるのだと私には思えるのです。
グローバルナレッジの研修ではチーム演習としてディスカッションを多く取り入れています。会話することが学習効果を高め、学習内容をより実務で活用しやすくします。
・効果的コミュニケーション・スキル
~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~
・チームワークとリーダーシップ
~中堅社員のためのよいチーム作りとリーダーシップ・スキル~
森美緒
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。 1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。 2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
2008年12月より翔泳社webマガジンEnterprisezinにて「新入社員が育つ!現場のための教育実践マニュアル」 連載中。 2009年8月よりITproにて「おさえて安心 ビジネスマナー100」連載中。
[コミュニケーション][2009年9月29日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第43回:誰が誰を承認するのか
執筆:森 美緒
「部下や後輩を承認するのは確かに大事だよね。でも私のことは誰が承認してくれるだろう?」
これは以前、ある受講者が、ぽつりと漏らした言葉です。
この時、教室では「OJT担当者が先輩社員としてすべきこと」をチームごとに話し合っていました。まだ後輩がいない年代の方もすでにリーダー職についている方も一緒になって、自分が先輩からされて戸惑ったことや嬉しかったこと、講義の内容からヒントを得て話し合い、アイディアを書き出していきます。
そんな中、冒頭の言葉が飛び出しました。それを聞いた他の受講者も、同感だとうなずきました。
私たちには自分の存在、変化、行動を認めて欲しいという欲求があります(これを「承認欲求」や「自尊欲求」といいます)。コミュニケーションにおける「承認」とは「相手の存在を認めること」です。褒めることとは違って、評価をするわけではなく相手の存在に対して反応を示すことを指します。例えば「あなたは作業が丁寧ですばらしいね」と言うと褒め言葉となり、「あなたは作業が丁寧だね」と言うと承認になります。良い悪いというような評価はしない分、どんな時でも発しやすいコミュニケーションです。
承認は人間関係構築の上で重要な意味があります。
例えば髪を切った翌日に同僚から「髪を切ったんだね」と気づいてもらえると、ちょっと嬉しい気持ちになりませんか?これは自分の変化(存在)に相手が気づいて言葉にしてくれたことが承認欲求を満たすからです。時と場合によっては(例えば、その髪型が不本意な出来であるなど)あまり触れられたくないときもありますが、通常はこの声掛けが、相手の承認欲求を満たし自信を高めたり、やる気を高めたりします。
相手を承認する方法はたくさんあります。名前で呼んだり、挨拶したりすることも承認です。相手の変化に気づいたり、相手が認めて欲しいと思っていることを言葉で伝えたりすることもまた承認です。前者は誰に対しても同じように行うことができますし、後者は相手を見ているからこそできる行為のため、より高いレベルで承認欲求を満たすことができます。
さて、冒頭の発言に戻ります。
「誰が私(リーダーや管理職)を承認してくれるのか?」
考えてみれば先輩社員や上司になると、後輩や部下に対して「承認すること」「褒めること」など配慮を求められます。でも管理職になると、承認される機会がうんと減ってしまいます。
それが管理職というものだと言ってしまえば、その通りなのかもしれません。ただ前述のように人間には承認欲求があり、管理職になったからといって、突然消えるものでもありません。自分は後輩や部下を承認しようと努力し、行動する一方で、誰も自分を承認してくれなかったら辛い気持ちになるのは当然です。
そんな状況を達観できる人が管理職になるのか、役職が更に上の人が承認すべきではないのかなど、受講者のディスカッションは続きました。
そのディスカッションを聞いていて、「私は誰に承認してもらっているだろう?」と考えました。先輩、上司、お客様である受講者、家族、最後に思いついたのは自分より少し後輩の同僚でした。「今日のスーツ、初めて見ました」「疲れているんじゃないですか?」「借りた本のここが面白かったです」「今日は眼鏡じゃなくてコンタクトなんですね」など、毎日の会話の中で、それこそものすごい数の承認を私は同僚からもらっているのです。仕事の一部ではなく普段の会話に「承認」されている機会はたくさんあるのだと、改めて感じました。
承認は上司から部下へ、先輩が後輩へと「上から下」へのスキルの1つとして捉えられていることが多いようです。でも、私の同僚がしているように、対等な同僚同士でも承認はできます。後輩から先輩へも、部下から上司へもできることです。私も同僚や先輩、上司など自分の周囲にいる人たちをもっと承認しようと受講者のディスカッションから気づくことができました。
ディスカッションをまとめて作った模造紙『先輩社員としてすべきこと』には「後輩をよく見て、承認する」と書かれ、その下には「上司のことも承認して、自分も後輩から承認してもらうぞ!」と添えられていました。受講者の選択は、「自分たちがきっかけになる」ことだったのです。
グローバルナレッジでは組織のコミュニケーション活性化をテーマにチームワークやコミュニケーションの研修を1社向けにカスタマイズしています。
「効果的コミュニケーション・スキル ~ 効果的な説得、交渉へと導く対人コミュニケーション ~」
「チームワークとリーダーシップ ~中堅社員のためのよいチーム作りとリーダーシップ・スキル~」
森 美緒 (もり みお)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。 1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。 2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
2008年12月より翔泳社webマガジンEnterprisezinにて「新入社員が育つ!現場のための教育実践マニュアル」 連載中。
[コミュニケーション][2009年4月21日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第40回:その気になればどこでも試せる
執筆:田中 淳子
ヒューマン・スキル研修を行っていると、「これって、子育てと一緒だよね」「家族との会話でも同じことが言える気がする」というコメントをよく頂戴します。ビジネスのためのヒューマン・スキルを学びながら、実は日常的な様々な場面でも応用が効きそうだと気づかれるのでしょう。
「私は対外的な仕事をしていないので、顧客とのコミュニケーションなど試す場がない」という方も中にはいらっしゃいますが、「身近でも活用可能だ」と捉えれば練習の場は広がります。
では、日常での活用場面を紹介しましょう。
コミュニケーションスキル研修では説得について学びます。説得="相手を動かす"ためには「一方的に説得するのではなく、相手の言い分に耳を傾け、相手が動きやすいような言い方をする」ことを考える必要があります。その考えを応用した例です。
ある女性からこんな例をお聞きしました。帰宅すると、父親のお迎えで先に帰宅していた子供たちがリビング中に大量のタオルを広げていました。家事をしなければと一分でも惜しいのにタオルが散乱。「早く片付けて!」と一喝したところ、子供たちはしぶしぶ片付けたそうです。別の日、また同じようにタオルがリビング中に敷き詰められていました。よく見れば、タオルの下には人形やぬいぐるみが置いてあります。子供たちに聴くと、「保育園のお昼寝の時間をやっているの」と言いました。彼女は「片付けなさい」と叱る代わりにこう言いました。「それは偉いねぇ。・・はい、そろそろお昼寝の時間は終わりですよぉ。皆起きましょう」。すると、今度は保育師さんを気取った子供たちが、進んでタオルを片付け始めたといいます。
「お昼寝の時間は終わりですよ」は、子供たちのストーリーに沿ってコミュニケーションしようとしています。行為の理由、背景を理解した上で相手の行動を促す言葉をかける。
「相手を動かすためにも耳を傾けることが大事だ」ということが学べる例です。
別の女性の方からお聞きした例です。同じくコミュニケーションスキル研修で「傾聴」では、相手の話を深く正しく理解するために、意見などせず、まずは最後まで耳を傾けることだと学んだその日のこと。小学生のお子さんが学校での出来事をあれこれと話し始めました。これまでは「そういう時はこういう風にしたほうがいいよ」「お母さんだったらこうする」といったアドバイスをしていたそうですが、その日は、耳を傾けることに注力したそうです。すると、いつもならすぐ自室に入ってしまうお子さんが、その日は学校であったこと、好きなこと、やりたいことなどを話し続けたといいます。「普段聴いたことがないような話までしてくれて、親としてビックリした」とおっしゃっていました。子供の課題を解決してやりたいという親心は一旦封印し、徹底的に話を聴くことで子供からより多くのことを引き出し、理解することができたのです。
最後に男性の例を。これも受講者からお聞きした話です。
コーチングに「承認」というスキルがあります。相手の行為、行動などを「認める」ことを言います。承認されることで人は勇気と自信が与えられ、さらに次のステップに進もうと挑戦するものだと言われています。ある男性はコーチング研修初日を終えて帰宅後、パートナーに承認スキルを試してみようと思い立ちました。
夕食のテーブルについた際、食事を並べてくれているパートナーに「いつもご飯を作ってくれてありがとう」と思い切って言ったそうです。すると彼女は、手を止め固まってしまったといいます。泣いてしまったのか?と思うとさにあらず。
「あなたはどうしてそれを棒読みで言うの?」と言われてしまいました、と恥ずかしそうに話してくださいました。
学んだスキルをこうやって身近な相手に使ってみようと思うことも、このほほえましいエピソードを他の参加者に紹介なさったことも素晴らしく、勇気のあることです。
誰との関係でもどのような場面でも活用できるのがヒューマン・スキルです。仕事ですぐ使うことが難しそうであれば、家族、友人、知人との関係で試してみることもできます。大切なのは、「やってみよう」と思うことです。試してみたら、きっと何かが変わります。
はじめてみよう!ビジネスコーチング入門
使ってみよう!ビジネスコーチング実践
田中 淳子
(たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[コミュニケーション][2009年1月27日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第39回:「ふりかえり」の時間を確保する
執筆:岩淺こまき
自分の誕生日に一年の行動指針を立てています。仕事やプライベート、様々な角度から設定しています。行動指針は翌年の誕生日まで見えやすいところに表示し、定期的にふりかえりを行います。(ふりかえりとは自分の行動を細かく見つめ直すということです)
行動指針と言っても堅苦しい内容ばかりではありません。毎日の心構えや美容に至るまで、多岐にわたります。ですから、ふりかえりの行為を楽しいと感じることができます。2007年の行動指針の一部をご紹介しましょう。
【項目:行動(理由)】
・心構え:周囲の人達への信頼や感謝を、態度や言葉で伝える
(理由:信頼や感謝の気持ちは、思っているだけでは相手に伝わらないことがあるため)
・美容 :飲み会は5回/月までにする
(理由:飲む回数を増やすと身体に負担がかかるため)
行動指針を見ながら「今日は上司からアドバイスをもらったが、感謝の言葉を伝えられなかった」や、「今月の飲み会は5回までで収まった。空いた時間は社外勉強会に行くなど有効活用できた」など、「良い点」「改善点」の両面から行動をふりかえるのです。定期的にふりかえっているのは、目標達成、つまり「なりたい自分になる」ための有効な行為だからです。
ふりかえる効果は大きく2つです。
1つ目は「自分を客観視できる」こと。行動指針も目標も、設定段階では「こうしたい」「こうなりたい」といった理想像があります。しかし、今の自分に何ができて何ができないかといった立ち位置があやふやなまま行動し、理想に到達するのに遠回りしていることも少なくありません。今の自分を客観視するためにも、ふりかえりが必要なのです。
2つ目は「自分の良い点と改善点を明確にできる」こと。良い点は強化できますし、改善点が明らかになれば、どのように改善していけばよいかも考えやすくなります。
もしふりかえることをしなければ、日々の忙しさに行動指針を意識することすら忘れてしまうかもしれません。これではせっかくの行動指針も、何の効果も出せずに役目を終えてしまいます。
ヒューマン・スキルの研修では、演習の後に必ず「ふりかえり」の時間を設けています。これは研修を、教育学者のデヴィット・コルブ氏が提唱した「学習サイクル」に基づいて進めているからです。「学習サイクル」を意識することで、研修で習ったスキルやテクニックが身につきやすくなります。「学習サイクル」は4ステップから成り立っています。
1:経験:とにかくやってみる
2:観察:やってみたことをよく観察する
3:考察:観察して気づいたことを考察する
4:応用:実際の場面での適用方法を考える
1→2→3→4→1→2→・・と進めます。先ほどの「アドバイスをくれた上司に感謝を伝えられなかった」にあてはめてご説明しましょう。
まず「経験」で行動を明らかにします。
「上司に感謝を伝えられなかった」
次の「観察」で自分(や他人)を具体的にふりかえります。
「感謝を伝えたはずが上司はむっとした表情をした。同僚Aさんの感謝の言葉には、上司は嬉しそうにしていた。自分は上司の目を見ないで伝えていた。Aさんは上司の目を見ながら、はっきりと感謝を伝えていた」
上司の目を見ずに伝えていた自分を客観視できました。その中から自分に取り入れられることはないか「考察」します。
「上司の目を見て伝えることは、意識すればできそうだ」
取り入れられることが決まったら「応用」できる場面を考えます。
「目を見ることを意識してから、感謝を口に出す」
今後は感謝を伝える場面で「応用」で決めたことを実行します。「上司の目を見ることを意識してから」感謝の言葉を口にするのです。そうすると「目を見ながら感謝を伝えた」という「経験」が新たに生まれますので、それを基にまたサイクルを回します。この過程を繰り返すことで「目を見ながら感謝を伝える」スキルが上達し、なりたい自分に近づけます。
誕生日や思い出深い出来事があった日などは、ふりかえる時間を設けてみてはいかがでしょうか。年末年始のこの時期は絶好の機会です。失敗だけではなく成功したときも、ふりかえることで沢山の学びを得ることが出来ますよ。
岩淺こまき(いわあさこまき)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育トレーナー。
1997年、システム販売会社に就職し、営業技術支援および導入企業向けの研修を担当。
人材紹介会社にて中途入社社員に対する研修や、メーカーでの販売促進セミナーの企画・実施を経て2007年より現職。
プレゼンテーション、コミュニケーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
[コミュニケーション][2008年12月24日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第28回 等身大のヒューマンスキルを
執筆:森 美緒
研修中に受講者からこんな質問を受けることがあります。
「ヒューマンスキルの講師をしているくらいだから、森さんは、元々、あまり怒ったりしない性格なのでしょうね。」私は毎回こう答えます。「怒って文句を言ったり、すねたり、いじけたりしますよ。人間ですから。」
質問した受講者は、たいがいちょっと驚いた顔をします。 私はその驚いた顔に驚きます。
私も仕事で気が滅入ることもあれば、嬉しくてはしゃぐこともあり、つまらないことで家族と口論することもあれば、落ち込んで泣くこともあります。
性格が他の人より温厚なわけでもありません。公私ともに私を取り巻く環境も、そして私自身も、いつでも順風満帆なわけでもありません。良いときもあれば悪いときもある。それが現実です。
ところが、不思議なことにヒューマンスキルを「いつも穏やか」とか「怒らない」ことと捉え、相手を尊重し続け、自分の感情 (特に怒りや悲しみなど) を表に出さずにいることだと考えたり、個人の生まれつき持っている性格だと考えたりしている方はとても多くいらっしゃいます。おそらく、そう考えている方が、私を決して怒らない温和な人間だと思ったり、ヒューマンスキル自体を空々しいと感じたりするのではないでしょうか。
私自身の経験をお話しましょう。
以前、「私はヒューマンスキルが実践できていないのではないか」と悩んだ時期がありました。知識は持っていても、常に最適な行動ができるとは限らないからです。特に、グローバルナレッジで講師として仕事を始める直前は落ち込んでばかりいました。その頃はヒューマンスキルの講師として10年以上働いている先輩と同等のスキルを自分に求めていました。「先輩と同じような上手な講義をしたい、仕事においても同じパフォーマンスを出したい、なぜ自分にはできないのだろう?」と悩んでいたのです。そのことを相談したら、先輩は、「誰の真似もしなくていい。森さんには森さんのこれまでの経験がある。」と言ってくれました。その言葉を聴き、それまでの自分の間違いに気づきました。ヒューマンスキルを現状の自分とかけ離れた「理想的な行動をとること」と捉えてしまったがために、その「理想」を実現できない自分を責めていたことに思い至ったのです。
理想的な行動をとる必要はないのだ。もっと「等身大」で考えてみればよい。そう気づいてからは、人と関わるたびに、「今の自分の対応はどうだったか」「何ができていて何ができていなかったか」を考え、「できなかったことがあれば次はできるように行動する」。こうやって少しずつ自分の行動を改善するよう地道な努力を行うようになりました。できていないことを見つけ、できるようにするための道標としてヒューマンスキルの知識を役立てているのです。
そもそもヒューマンスキルとは一体何でしょうか。
例えば自分の感情を我慢し、相手を尊重し続けることが、ヒューマンスキルだとすると、毎日がストレスとの戦いです。そして個人の性格に起因するとしたら、ヒューマンスキルを高めることは、現在の自分を否定することにつながるかもしれません。それがヒューマンスキルだと言うならば、私も「ヒューマンスキルなんてきれいごとだ!」と言ってしまいそうです。
今、私は、自分を取り巻く環境の中でより良い人間関係を作り、より良い関わり方をするにはどのようにすればよいかを具体的な行動にしたものとして、ヒューマンスキルを捉えています。
どんな業界であれ、どんな業種であれ、私たちはたくさんの人と関わって仕事をします。 仕事をするのなら、成果を残したい。その上で人と一緒に仕事をする場合は、お互いに尊重しあって楽しく関わりたい。そのために自分がどう相手と関わっていくのか。これが私にとってのヒューマンスキルなのです。
ヒューマンスキルを「実際には役に立たないきれいごとだ」と感じる方や「個人の性格に起因するものだから変えようがない」と感じる方が、もしも「だから実践できなくても仕方ない。」と考えてしまうのであれば、それは勿体無いことだと私は思います。「できなくても仕方がない」と思う前にまだ何かできることがあるはずです。
講義では知識を分かりやすく伝え、演習では受講者がチャレンジしたスキルに対して効果的にフィードバックする、そんな研修を今年も笑ったり悩んだりしながら、実施していきたいと考えています。お会いする受講者の皆さんにとって、等身大のヒューマンスキルが見つかるように。
| グローバルナレッジの「効果的コミュニケーション・スキル」(ON306) は、講義の内容を演習で実践していただけるカリキュラムになっています。演習を通して、「できていること」「できていないこと」を切り分け、次の演習で再度チャレンジしていただけます。 | |
森 美緒 (もり みお)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。 産業カウンセラー。
1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。商社での秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。
2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
[コミュニケーション][2008年1月29日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第14回 相手が受け入れやすい伝え方
執筆:高橋 俊樹
思ったこと、考えたことを相手に伝えるときに、どのようなことに気をつけていますか?最近、私が実際に体験した例を紹介します。
■ 保冷剤をつける?
~洋菓子店Aの対応~
私 : 「これと、これをください」
店員 : 「はい、かしこまりました。ショートケーキとエクレアですね。
お客様、お持ち帰りはどのくらいのお時間ですか?」
私 : 「大体30分くらいかかると思います」
店員 : 「それでは保冷剤をお付けいたしますか?」
私 : 「あ、はい、お願いします」
店員 : 「はい、それでは保冷剤を2個お付けいたします。料金は100円です」
私 : 「・・・」
~別のある洋菓子店Bの対応~
私 : 「これと、これをください」
店員 : 「はい、かしこまりました。ショートケーキとエクレアですね。
お客様、お持ち帰りはどのくらいのお時間ですか?」
私 : 「大体20分くらいかかると思います」
店員 : 「20分くらいですね、それでしたら保冷剤はなくても美味しく召し上がれます。有料で保冷剤をお付けすることも出来ますが、いかがいたしましょうか」
私 : 「では、なしで結構です」
店員 : 「ありがとうございます。それではできるだけ早く召し上がるか、早めに冷蔵庫へお入れ頂けますでしょうか。」
この2つの対応を見てどのように感じたでしょうか。1つ目のA店の対応は、最初に保冷剤が有料であることを伝えておらず、相手の受け取り方を配慮していない、一方的な印象を受けました。逆に2つ目のB店の対応は、『美味しく召し上がれます』『有料で・・・』と相手の立場、受け取り方を考慮した、心配りが出来た伝え方で、大変親切な印象を受けました。
私たちは仕事でもプライベートでも様々な場面で自分の考えを伝えあっています。その時にちょっとした伝え方の違いで、相手に不愉快な思いをさせてしまうこともあります。これは、敬語(尊敬語、謙譲語、丁寧語)など、言葉そのものの使い方が正しければ良いというものではありません。どれだけ丁寧な言葉を使っても、何をどのように表現し、伝えるかによって、相手の受け止め方や印象が変わってしまうものなのです。
最近、コールセンター業務に携わる方達の研修(*)が増えてきています。電話でのサポートやアドバイス、提案活動では、直接顔が見えない分、言葉の使い方、相手が受け入れやすい伝え方が、より必要になります。自分では丁寧に正しく敬語を使って応対しているのにお客さまとよいリレーションが築けなかったり、クレームに発展してしまったりしてしまうこともあるそうです。
しかし、このことは相手の顔が直接見えたとしても、同じことではないでしょうか?コールセンター業務に限らず、どの仕事も相手とのコミュニケーションによって成り立っています。だからこそ、私たちは、自分の思いや考えを、そのまま相手に伝えるのではなく、相手がそれをどう感じるのか、どう受け止めるのかをもっと考えて行く必要があるのです。そのために、相手に伝える際は、次のことを自問自答することをおすすめします。
『自分の伝え方によって、相手の権利やプライド、モチベーション、相手との関係をそこねてしまわないだろうか?』
もし、上の問いかけに『YES』と思ったならば、相手の立場に一度立ってみることをお薦めします。自分が相手だったらどのように伝えてくれたら嬉しいか、受け入れやすいかを考えてみてください。自分の側だけでものを言うのではなく、相手の立場や状況を考慮したものの伝え方に気をつければ、相手とさらによいコミュニケーションを取ることができます。
余談ですが、冒頭の洋菓子店。どちらのお店も味に定評があり有名なのですが、2つ目のB店は1つ目のA店よりも美味しかった記憶があります。店員さんの対応の差でしょうか?しかし、ちょっとした差かもしれませんが、この差の積み重ねが、「また行きたい、あそこで購入したい、あの人からサービスを受けたい」という気持ちにつながっているのかもしれません。
* 「効果的コミュニケーション・スキル」(ON306)
コールセンターに携わる方を対象に、効果的コミュニケーションをアレンジして実施することもできます。『相手の話を正しくより深く聴くためのスキル』や、『自分の伝えたいことを主張的に伝える』、『相手を説得するために必要なスキル』などを中心にご提供します。ご要望に応じて、さらにアレンジすることが出来ますので、お気軽にご相談下さい。
高橋 俊樹(たかはし としき)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。
1991年、自動車メーカーに就職し、営業担当者向けの教育の企画・実施を担当。その後、テレマーケティング会社を経て、2001年より現職。プレゼンテーション、ネゴシエーション、コーチングなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
[コミュニケーション][2006年11月27日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第2回 ヒューマンスキルは学習できる
執筆:田中淳子
グローバルナレッジ で考えるヒューマン・スキルには、コミュニケーション、プレゼンテーション、ネゴシエーション、リーダーシップ、教え育てる技術などが含まれます。
こういったヒューマン・スキルを、「生来のもの」と思ってはいませんか?「性格に依存する」「生まれつき向いている、向いていないがはっきりしている」と。
確かに、多少はそういった面もあるでしょう。外交的だとか内向的だとか、人と話すが好きとか苦手だとか...。
でも全てが性格に依存するものでもないですし、性格とは別に「学べるスキルだ」という捉え方もしていただきたいと思っています。
たとえば、皆さんが何かのスポーツを始めるとします。最初は、何をどうしたらいいかもわからないでしょう。そんな時、コーチについて、「やり方」を学ぶという方法を取ることはありませんか?スクールに通い、基本の型や動作を教えてもらう、それをやってみる、最初は難しいけれど、少しずつできるようになる...。そんな経験をしたことはないでしょうか?
スポーツに取り組む時、「性格上向いていない」などとあまり考えず、単に「挑戦してみたい」という興味に支えられて人は行動を起こすものでしょう。「習ったばかりで、なかなかできないけど、やっているうちに少しずつうまくなるかなあ」と期待を持って取り組む方が多いのではないかと思います。
ヒューマン・スキルにも同じことが言えます。性格や資質のことは一旦脇に置いておいて、ちょっと興味を持って、習い、使ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
こんな例があります。上司との関係がギクシャクしている人がいました。少しだけ勝気な彼女は、上司のノンビリした仕事の指示に、いつもいらいらしていました。忙しい時間に些細な仕事を指示されたある時のこと、思わず「もう少し私の様子も把握してから、指示を出してもらえませんか?」と言ってしまったのです。こんな風に攻撃的な表現をされると、いくらノンビリした上司でもむっとするのは言うまでもありません。その一言がきっかけとなり、上司と部下は険悪なムードになってしまいました。それから1週間ほどほとんど口も聞かずに過ごす羽目に...。上司も部下も共に「おもしろくない気分」を抱えて過ごさなければなりませんでした。
しばらくしてから、上司は再び彼女にノンビリと仕事の指示をしました。彼女は、その時、たまたまコミュニケーション・スキルの勉強をした直後でした。コミュニケーション・スキルのひとつに「アサーション(相手に配慮しつつも、言いたいことを相手に伝えるスキル)」があります。この"アサーション"を使ってみようと思ったのでした。そこで、上司に対して、このように言いました。「○○さん(上司の名前)、今私は出かけるところで、落ち着いてお話を伺うことができません。2時間後には戻りますので、その際に改めて仕事内容をお聞きしてもよろしいですか?そうすれば、私もきちんと対応できると思います。」すると、上司は、「あ、ごめん、ごめん。出かけるところだったのだね。戻ってきてからでいいよ。」と素直に謝り、彼女が外出先から戻るのを待つことになりました。
この話を聞いて、皆さんはどのように感じるでしょうか?たった1週間です。部下の彼女の性格が変わったわけではないはずです。変わったのは、たった一つ、「表現の仕方」です。「いい加減にしてくれませんか?今私が忙しいこと、見ていてわからないのですか?」から「2時間後にお話を聞いてもいいですか?」と変えただけです。
彼女の行動が変わりました。というよりも、彼女が意識的に行動を変えました。結果として、上司の反応が変わりました。
人は、他人を変えることはできませんが、自分を変える、自分が変わることはできます。自分が変わることで相手への影響を変えることができます。すると、間接的に相手が変わる可能性があるのです。
この例のように、ヒューマン・スキルは、学んで使うことができます。性格を変えなくてもよいのです。まずは、スキルとして使ってみると、仕事の環境がほんの少し変化するかもしれません。
*「アサーション」は「効果的コミュニケーション・スキル」(ON306)で学ぶことができます。
田中 淳子
(たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[コミュニケーション][2005年10月31日配信]
わくわくヒューマンスキルコラム
第1回 フィードバックの思い出
執筆:田中淳子
私、田中淳子は、1990年にアメリカで「インストラクター・スキル」という研修を受講したことがきっかけとなり、現在のような"ヒューマンスキル"分野の研修を本格的に手がけるようになりました。
これは、研修インストラクタ向けに「教え方」「プレゼンテーション方法」「教材作り」などを5日間で教えるもので、私はそのクラスに唯一の日本人として参加しました。当然英語は下手で、講義についていくのもやっと。必死に辞書を引き、講義やディスカッションについて行きました。最終日には、一人15分のプレゼンテーション演習があり、ビデオ撮影もありました。「OSのオペレーション」の講義をした私は、文法も完全に無視して、なんとかしゃべり終わったという状態だったのです。
研修の最後に、講師が「この5日間の参加について、ジュンコにフィードバックしよう」と声をかけました。何人かの手が挙がり、私に対するフィードバックが始まりました。
講義中も言葉を調べるのに必死で、辞書にくびっぴきでしたので、発言などほとんどしていませんでした。プレゼンテーションにおいては、英語はめちゃくちゃで、何を言っているのか、アメリカ人の受講者にはわからなかったと思います。なので、フィードバックでも「英語が下手だった」「言葉が通じないので、ディスカッションにも参加していなかった」など、否定的なコメントが多く寄せられるだろうと、身を硬くして構えていました。すると・・。
アメリカ人のクラスメイトは、口々にこう言いました。「ジュンコは、5日間ずーっと辞書を引いていた。」「ジュンコは、なんでもノートに書いていた。」「ジュンコのプレゼンでは、ホワイトボードに沢山書いてくれたので、理解しやすかった。」
5日間の緊張がさーっと解けた瞬間です。
「ああー、フィードバックというのは、"ここが悪い"と指摘するだけではなく、"何をしていた"と感じるままを、それも、ポジティブに表現するものなんだ。」と目からウロコが落ちました。アメリカで苦労した甲斐があったと思い、こういう「気持ちがよくなる」研修を日本の企業人向けに開催したいと強く思いました。
この出張後、私は、いくつかのヒューマンスキル研修を開発し、開催し始めました。研修の基本精神として決めたのは、「決してネガティブなフィードバックをすまい。人は、認めてほしい生き物だし、認めることでその人が伸びるのだ」ということです。
この時、受講したコースは、日本に持ち帰り、「トレイン・ザ・トレーナー」(ON258.4日間)として、今でも実施しています。これ以外でも「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「コーチング」など様々なヒューマンスキルの研修を開講しています。どの講師もすべてのコースにおいて、一貫して、「ポジティブなフィードバック」を心がけています。
人は、「その行為を認められ、褒められる」ことで成長する---。
グローバルナレッジのヒューマンスキル研修の根底には、この精神があります。
ヒューマンスキル研修に参加することを躊躇している方、抵抗を感じる方、心配することなく、是非一度参加してみてください。
田中 淳子
(たなか じゅんこ)
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。
【ブログ】
「ヒューマンスキルの道具箱」
【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
【連載中】
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料)
[コミュニケーションコーチングプレゼンテーションリーダーシップ][2005年9月27日配信]