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わくわくヒューマンスキルコラム
第114回:「ゆとり世代」だから育たないのではないんです。環境が大きく変化したのです。
執筆:田中 淳子

「ゆとり世代だから育たない」「ゆとり世代だから細かく教えないとできない」などと若手が育ちにくいことの「原因」を「世代」に求める人がいます。「世代」の違いは、いつの世にもあって、たとえば、40年くらい前の小説を読むと、「採用したばかりの新人が、午後からいなくなって、そのまま退職してしまった。イマドキの若者は何を考えているんだ?」などと嘆くようなシーンが出てきたりもします(※1)。年長者にとって、いつだって若者は「何かが不足」していて、どこか「非常識」に見えるものなのです。


確かに若手は、以前(20年以上前と比べて)育ちにくくなっています。「育てにくい」のではなく、「育ちにくい」と言う方が正しいでしょう。その理由は、彼ら・彼女らが「ゆとり世代」だからではありません。私たちを取り巻く職場の環境が大きく変わってしまったことにより、若手が「育ちにくく」なったのです。これは、多くの研究者や実務家が指摘していることでもあり(※2、3)、私自身も一会社員として実感していることでもあります。

20年以上前の新入社員は、今と比べて「育ちやすい」環境に置かれていました。職場にまだまだ余裕がありましたから、上司や先輩が何くれとなく声を掛けたり、手を貸したりしてくれました。頑張って入手しなくても、仕事に関わる情報が周りにあふれていました。隣で先輩が電話応対をしているのを聴きながら、後輩は、電話の取り方、電話での会話方法、取り次ぎ方、謝り方、電話の切り方など多くを学んでいました。報連相は口頭で行うことが多かった時代、先輩の報告の仕方を見ては、「ああいう風に報告すればいいのだな」「こんな相談の仕方は、上司に叱られるのか」と組織で振る舞うための知識や作法を自然に学んでいたものです。「門前の小僧習わぬ経を読む」という状況でした。


今はどうでしょう。職場の環境は大きく変化してしまいました。
例を挙げてみます。


・職場の直接の会話はかなり減っています。「仕事の指示や依頼も報連相も電子メールでやりとりする」、「稟議書回付、申請書提出などはワークフローに入力する」などほとんどのコミュニケーションが電子化されています。


・情報に触れる機会が減りました。クリーンデスク、セキュリティの強化等の理由により、「自席に様々な資料などを置きっぱなしにしている」という光景も見られなくなりました。自分のIDカードで入室できるエリアも限られています。


・「あなたの仕事はここからここまで。これ以外は、協力会社に依頼しているから」「この部分は派遣社員の方にお願いするので・・」と役割分担が細分化され、仕事の全体像を把握するのも難しくなっています。


・コンプライアンスなどの関係で、一人ひとりが注意しなければならないことが増え、何かするためにも申請を出したり、承認を得たり、資格を持っていることが必須だったりと、物事はそう簡単には動かなくなっています。


こういう一つひとつの変化は、それぞれ必然があってのことですが、若手にとっては、「成長」の阻害要因になってしまうという面があります。情報が目に入らない、情報が耳に入らない。「その場にいるだけでなんとなく聞いていた、なんとなく見ていた」といった情報からかつての若手は学んでいたという部分があったはずなのに、そういう成長機会は激減したわけです。


もはや「放っておいても新入社員が育つ時代」ではなくなってしまいました。


そこで、企業は、若手の育成に関して、「OJT」を制度化し始めました。2000年ごろからのトレンドです。OJTという言葉自体は、昔からあるものですが、以前のそれは「現場任せの育成」だったように思います。近年のOJTは、「制度化」されている点が特徴です。一人の新入社員に対して一人のOJT担当者を割り当て、1年から3年間、みっちり育てていくという形式を取り、人事部や人材開発部(以下、人事部と統一します)がOJT全体の運営を見ているというものです。OJTを始めるにあたり、若手社員に対して「期待する人材像」を明確にしたり、「指導計画書」を作成したりと制度面を整えるだけではなく、進捗確認のための面談やOJT成果発表会といったイベントを企画、運営したりする役割も人事部が担います。


働く人を取り巻く環境が大きく変化した現代は、人を育てるための仕組みが必要です。「ゆとり世代だから育たなくなった」のではなく、「環境変化の大きさが育ちにくさを助長している」ということをきちんと理解し、誰もが自分の職場の若手の成長を支援しようという姿勢を持つことが職場全体の能力向上のためには重要な要素となっています。


<注>

※1 昭和40年代発行の佐藤愛子さんの小説にそういう一説が出てきて、笑ってしまったことがあります。タイトルは失念しました。


※2 柴田昌治 『なぜ会社は変われないのか―危機突破の企業風土改革』(日本経済新聞社、1998年)では、「オヤジ文化が消滅した」といった表現で、例えば飲みに行って漏れ聞いて様々な情報を得るといった機会がなくなったなどと、近年の若手を取り巻く環境変化について述べています。


※3 中原淳 『経営学習論 人材育成を科学する』(東京大学出版会、2012年)では、人が育ちにくい環境の変化について「人材育成・学習」の機能不全の主因として以下の3つがあるのではないかと仮説を提示しています。

1. 職場の社会的関係の消失
2. 仕事の私事化、業務経験付与の偏り
3. 高度情報管理による学習機会喪失


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新規コースのご案内です。


・「人材開発の基礎知識 ~OJT編~」    (HSC0157G)

・「人材開発の基礎知識 ~OFF-JT編~」   (HSC0149G)


2016年9月より、「人材開発の基礎知識 ~OJT編~」を開講します。


この研修では、OJTの制度化に必要な基礎知識やOJTを制度化している企業の様々な取り組みを紹介します。OJT制度は、ラインの関係でトレーナーと若手が結びつきますが、それだけでは、若手の成長支援に不足があるということで、最近は、「斜めの関係」のメンター制度も広がりつつあります。メンター制度とは、企業によって定義が異なりますが、よく耳にするのは、「新入社員とは異なる部署の先輩がキャリアや日常生活について相談に乗ったり、アドバイスをしたりするもの」です。縦の関係のOJT制度と斜めの関係のメンター制度。この2つの「制度設計」と「運営上の工夫」を研修では紹介します。人事部、人材開発部、事業部門の育成担当者が対象の研修です。


2015年開講しました「人材開発の基礎知識 ~OFF-JT編~」も合わせてご受講ください。


こちらは、「従業員のための研修を企画、運営する担当者」が知っておくべき、人材開発の基本理論や学習者の動機づけ理論、人事部・人材開発部と現場の橋渡しの工夫など、研修を行う上の基本を全て盛り込んでいます。


2コースとも、参加者同士のネットワーキングの機会にもなり、その場で他社事例を共有する機会も得られます。




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田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント

1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いでいる。

【ブログ】
 ・アイティメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!

【著書】
 ・(NEW) 『ITエンジニアが生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)※同僚の都川信和との共著です
 ・『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
 ・『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
 ・『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
 ・『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
 ・『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
 ・『田中淳子の人間関係に効く"サプリ"-職場で役立つ30のコミュニケーション術』(アイティメディア)(廃版)
 ・『コミュニケーションのびっくり箱』(日経BP電子書籍)(廃版)

【連載】
 ・@IT自分戦略研究所 「田中淳子の"言葉のチカラ"
 ・社会保険出版社 「四季のけんこう
 ・ITpro 「田中淳子の若手育成ワンポイントレッスン

[人材開発大人の学び後輩指導・OJT][2016年7月28日配信]

 

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