Trainocate Japan, Ltd.

わくわくヒューマンスキルコラム
第122回:ある日突然「講師」を頼まれたら
執筆:田中 淳子

最近、研修は「双方向に進める」「参加型で学ぶ」のが当たり前になってきました。
これは、プロの講師による研修に限った話ではなく、以下の例のような場面で一時的に講師役を務める方でも同じです。

  • 社内の研修や勉強会
  • 社外向けの講演やセミナー
  • 朝活やアフターファイブでの私的な勉強会

ここで問題なのは、そうした研修(あるいは勉強会やセミナー)の設計と運営です。

これまで講師役の人に必要なのは講義力でしたが、双方向、参加型にするためには現場での対応力=ファシリテーション力も鍛えておかなければ難しくなります。

本番での振る舞いなどがそれなりに予想できる「講義」と違って、双方向の体験や演習が中心になると参加者の発言や振舞いなど、予想外の事態も多くなるためです。


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研修や勉強会でファシリテーションが必要とされる場面をディスカッション形式の演習を例に考えてみましょう。

1)ディスカッション中
<起こりうること>
  • 講師が「さあ始めましょう」と声を掛けても、参加者がすぐ動けない
  • 議論が迷走し、方向性がおかしくなっていく
  • 役割分担のあみだくじを作るのに時間がかかり、議論が進まない
<考えられる対応>
  • 講師はその場で起こっていることをよく観察する
  • タイムリーに支援する
  • 場の流れを見守り、どこで介入するのか判断する

2)成果の発表
<起こりうること>
  • 誰かの意見に集約した成果物ができている
  • グループごとに発表て終了する
  • 何らかの新しい学びや気づきが得られない

<考えられる対応>
  • コラボレーションがうまく機能しているか声を掛けてみる
  • 参加者から感想やフィードバックを引き出す
  • 講師ならではの視点でコメントし、新たな気づきを得られるよう刺する

このように、その場をきちんと見守り、リードし、時に活動を支援し、期待される成果へと導くこと、すなわち「ファシリテーション力」がイマドキの研修や勉強会を実現するために重要なスキルなのです。



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【新規コースのご案内】


1991年からもう25年以上も開催し、多くのトレーナーをスキルアップをお手伝いしてきた「トレイン・ザ・トレーナー」の上位コースを開始します。


ワークショップ・ファシリテーション実践

2017年10月リリースです。

研修講師や勉強会の運営をしているすべての方にお薦めのコースです。オープニングをどうするか、参加型の研修や勉強会をどう進めるか、どのようにまとめ、終わるか、といったことを知識とスキル両面から体験的に学習します。


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田中 淳子 (たなか じゅんこ) 

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いできたが、2016年国家資格キャリアコンサルタントを取得したことから「働く大人のキャリア開発支援」にも積極的に取り組んでいる。


【ブログ】  ・アイティメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!

【著書】
『ITエンジニアが生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)※同僚の都川信和との共著です  
『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
など

【現在連載中】  
社会保険出版社 『四季のけんこう』にて「コミュニケーションの小箱」連載中  


[ファシリテーション人材開発][2017年5月18日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第120回:前に進むために振り返る
執筆:田中 淳子

「自分のキャリアの棚卸しをしたことありますか?」と尋ねると、「この前振り返ったのは、何年か前の節目研修だったかなぁ」「転職しようか迷ったとき、職務経歴書を書いたかな」という人もいますが、たいていの方は、キャリアを振り返る機会がなく、日々仕事に懸命にまい進し、気づけば、5年、10年、15年と経ってしまうようです。


キャリアコンサルタントの資格取得を目指して、スクールに通っていた2年前のこと。
「職務経歴書を書く」というワークで衝撃を受けました。「過去をこれほど思い出せないものなのか」と驚き、「自分がどういう能力を身につけたかを客観的に書けない」とペンが止まったのです。なんとか思い出して、職務経歴と身につけた能力を書いたものの、演習でパートナーとなったある企業の人事の方には、「田中さん、●●ができると書いてありますけど、これ、人事から見ると、別に売りじゃないですよね」などと突っ込まれてしまいました。私が書いたのは、単に「やってきたこと」「できること」であって、企業側から客観的に評価される「強み」として表現できていなかったのです。

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転職するしないに関係なく、自分はこれまでどういう道をどう歩み、何ができて、これからどういう道を歩んでいきたくて、そのためにどんな能力を身につけるべきなのかを定期的に考えることは大事だとしみじみ思いました。

「自分がこれまで何をしてきたのか」という経験だけではなく、「その結果、どんな能力を身につけたのか」を明確にするためには、じっくりと落ち着いて考えてみる時間が必要です。一人で考えても限界があるため、ふりかえりには他者の力も借りることも重要です。


上記の例で、私はパートナーとなった人事の方に「それはこういう風に表現すると客観的な表現になるのでは?」とフィードバックをしてもらいながら、最後は、少しはましな職務経歴書を仕上げることができました。

過去を振り返ると、強みもわかりますが、弱みや足りない点も見つかります。


「この部分が弱いから強化しよう」
「こういう経験が少ないので、こんな経験を積んでいこう」


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職業人生はどんどん伸びています。今や70代まで働くような時代がやってきています。働く期間が長くなるほど、一度決めた通りに、あるいは、熟達した一つの領域だけで仕事を続けることは難しくなります。世界が変わるスピードのほうが速いからです。


私たちは、何度も自分のキャリアを見直し、「変えないこと」と「変えるべきこと」を見極め、「新しく身につけるべき能力」を整理し、常に学び、変化しなければならない時代を生きています。学び変化すること。それが、楽しく長く働くための唯一の道のようにも思えます。


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【関連コース情報】

【PDU対象】自分のキャリアを考える ~原点回帰し、「自分軸」を見つけるワークショップ~

自分のキャリアを振り返り、今後の環境変化に備えて、何に取り組むべきかを考える研修です。入社5年目以降くらいの方から50代まで幅広くご受講いただいています。

【PDU対象】マネージャのためのチームビルディング ~マネージャの役割とビジョンに基づく運営~

チームを運営するためには、マネージャ自身のキャリアビジョンが明確になっている必要があります。この研修には、チームのビジョンを考える過程で、マネージャ自身のキャリアを振り返り、今後のキャリアビジョンを明確にする演習があります


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田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール
グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いできたが、2016年国家資格キャリアコンサルタントを取得したことから「働く大人のキャリア開発支援」にも積極的に取り組んでいる。


【ブログ】  ・アイティメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!

【著書】
『ITエンジニアが生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)※同僚の都川信和との共著です  
『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
など

【現在連載中】  
社会保険出版社 『四季のけんこう』にて「コミュニケーションの小箱」連載中  
産労総合研究所 『企業と人材』にて『OJT指導員制度の構築と運用』連載中

[キャリアリーダーシップ人材開発][2017年2月20日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第117回:人材開発担当者の"クレド"を作成しました!
執筆:田中 淳子

クレド(Credo)ラテン語で「信条」や「志」と言った意味を持つ言葉です。組織や団体のメンバが、行動のよりどころにするものが「クレド」です。企業の「クレド」として有名なのがザ・リッツ・カールトンのそれではないかと思います。


「ザ・リッツ・カールトンの従業員は、常に"クレド"を持ち歩いているので、『見せてほしい』言えばすぐに見せてもらえますよ」と言われたことがあります。ある日、ザ・リッツ・カールトンでセミナーを受講する機会がありました。「これはチャンスだ!」とばかりに「クレド、見せてください」と近くにいた方に声をかけたところ、すぐに「印刷したクレド」を1枚下さいました。


その時受け取ったものは、このサイトにも掲載されていて、社内外にクレドを発信し、浸透するよう徹底しているのだなぁと関心したものです。


どういう組織に所属し、どういう仕事に就いていても、その組織や仕事で大切にしたい「信条」や「志」はあった方がよい。皆で作って、皆が合意しているものだったらなおよい。自分たちで作れば、行動に反映されやすいからです。


弊社では、2011年から各企業の人材開発担当者をメンバとするコミュニティ活動を行っております。発足当時は、企業の新入社員を育てるOJT事例を学び合うことが目的だったため、「OJT茶話会」と呼ぶようになりました。数か月に1回、弊社オフィスに集まっていただき、企業の人材開発の取り組み事例を学び、自社にその内容を持ち帰り、自社の施策に反映し、次の会合で成果を報告するといった有機的な活動を5年間続けてまいりました。最近では、新卒採用、内定者フォロー、新入社員研修、次世代リーダー養成など扱うテーマも広がっています。この「OJT茶話会」の会合が20回を迎える記念に「人材教育担当者のクレド」を作ってみることになりました。


2016年11月某日。約15人のメンバが集まり、全員の力を結集してクレドを作成しました。


できるだけ、業界や業種にとらわれることなく、「誰が聴いても、人材開発に携わる人間にとってはこの信条が大切だよね」と思えるような、普遍的な内容にすべく、表現を工夫しました。


たくさんのクレド候補が挙がった中で、
「これとこれは同じことじゃないか」
「この言葉の中には、こっちの意味も含まれているよね」
「あ、これには、こういう気持ちを盛り込んだつもりなんです」
と侃々諤々の議論をしました。


多くの意見が出た後、最後に、「この3つがいいんじゃない?」と全員が合意する瞬間がやってきました。「人材開発担当者のクレド」が決まったのです。


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少し解説します。


先導者と伴走者
人材開発担当者は、学ぶ全ての人にとって先導者でありながらも、伴走者でもありたいという気持ちが込められています。


個人の成長を社会の笑顔につなげる
個人が成長することは、個々の幸せと幸せな社会の実現に繋がります。笑顔は幸せの象徴だろうと考え、皆が笑顔でいられる社会を作り出すため一人ひとりの成長を支援したい。これが2番目のクレドの意味するところです。

仕事を楽しみ、人生を楽しむ
人の学びや成長には終わりがありませんが、人材開発担当者は、人材開発という仕事のプロフェッショナルとして、自らの仕事をうんと楽しみたい。それが人生を楽しむことにもつながる。そんな気持ちをこの3つ目のクレドで表しました。


何度も何度も読み返してみれば、しみじみといいクレドです。


「OJT茶話会」という小さなコミュニティで考えた「クレド」ではありますが、どの業界、どの企業であっても、人材開発担当者に通じる想いが表現できているように思います。


人材開発担当者というのは、経営のとても大切な部分を担う大切な仕事です。誇りを持って前進し続けられるよう、ぜひこのクレドをご活用ください。


人材開発部門以外の方には、人材開発担当者の仕事に込められた想いをご理解いただければ嬉しいことです。


これからの世界は、どんどん変化していきます。いつでもその変化に対応できる人や組織であるためには、学び、成長し続けるしかありません。
このクレドが、学びに関わる多くの方の「よりどころ」となりますよう。


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人材開発に携わる方向けの研修を2つ作りました。人材開発部門の方だけではなく、現場(事業部)で人材開発に携わる方、部下や後輩指導に関わるマネージャやリーダーの方も受講されています。学び成長するための支援をする際、何をどう考えればよいか、人材開発にまつわる様々な考え方を紹介しながら、自社の人材開発について演習を通じて考えることができる研修です。


人材開発の基礎知識(OFF-JT編)

人材開発の基礎知識(OJT編)




田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント

1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いでいる。

【ブログ】
 ・アイティメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!

【著書】
 ・(NEW) 『ITエンジニアが生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)※同僚の都川信和との共著です
 ・『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
 ・『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
 ・『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
 ・『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
 ・『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

【連載】
 ・@IT自分戦略研究所 「田中淳子の"言葉のチカラ"
 ・社会保険出版社 『四季のけんこう』にて「コミュニケーションの小箱」連載中
 ・産労総合研究所 『企業と人材』にて『OJT指導員制度の構築と運用』連載中


[人材開発][2016年12月 6日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第114回:「ゆとり世代」だから育たないのではないんです。環境が大きく変化したのです。
執筆:田中 淳子

「ゆとり世代だから育たない」「ゆとり世代だから細かく教えないとできない」などと若手が育ちにくいことの「原因」を「世代」に求める人がいます。「世代」の違いは、いつの世にもあって、たとえば、40年くらい前の小説を読むと、「採用したばかりの新人が、午後からいなくなって、そのまま退職してしまった。イマドキの若者は何を考えているんだ?」などと嘆くようなシーンが出てきたりもします(※1)。年長者にとって、いつだって若者は「何かが不足」していて、どこか「非常識」に見えるものなのです。


確かに若手は、以前(20年以上前と比べて)育ちにくくなっています。「育てにくい」のではなく、「育ちにくい」と言う方が正しいでしょう。その理由は、彼ら・彼女らが「ゆとり世代」だからではありません。私たちを取り巻く職場の環境が大きく変わってしまったことにより、若手が「育ちにくく」なったのです。これは、多くの研究者や実務家が指摘していることでもあり(※2、3)、私自身も一会社員として実感していることでもあります。

20年以上前の新入社員は、今と比べて「育ちやすい」環境に置かれていました。職場にまだまだ余裕がありましたから、上司や先輩が何くれとなく声を掛けたり、手を貸したりしてくれました。頑張って入手しなくても、仕事に関わる情報が周りにあふれていました。隣で先輩が電話応対をしているのを聴きながら、後輩は、電話の取り方、電話での会話方法、取り次ぎ方、謝り方、電話の切り方など多くを学んでいました。報連相は口頭で行うことが多かった時代、先輩の報告の仕方を見ては、「ああいう風に報告すればいいのだな」「こんな相談の仕方は、上司に叱られるのか」と組織で振る舞うための知識や作法を自然に学んでいたものです。「門前の小僧習わぬ経を読む」という状況でした。


今はどうでしょう。職場の環境は大きく変化してしまいました。
例を挙げてみます。


・職場の直接の会話はかなり減っています。「仕事の指示や依頼も報連相も電子メールでやりとりする」、「稟議書回付、申請書提出などはワークフローに入力する」などほとんどのコミュニケーションが電子化されています。


・情報に触れる機会が減りました。クリーンデスク、セキュリティの強化等の理由により、「自席に様々な資料などを置きっぱなしにしている」という光景も見られなくなりました。自分のIDカードで入室できるエリアも限られています。


・「あなたの仕事はここからここまで。これ以外は、協力会社に依頼しているから」「この部分は派遣社員の方にお願いするので・・」と役割分担が細分化され、仕事の全体像を把握するのも難しくなっています。


・コンプライアンスなどの関係で、一人ひとりが注意しなければならないことが増え、何かするためにも申請を出したり、承認を得たり、資格を持っていることが必須だったりと、物事はそう簡単には動かなくなっています。


こういう一つひとつの変化は、それぞれ必然があってのことですが、若手にとっては、「成長」の阻害要因になってしまうという面があります。情報が目に入らない、情報が耳に入らない。「その場にいるだけでなんとなく聞いていた、なんとなく見ていた」といった情報からかつての若手は学んでいたという部分があったはずなのに、そういう成長機会は激減したわけです。


もはや「放っておいても新入社員が育つ時代」ではなくなってしまいました。


そこで、企業は、若手の育成に関して、「OJT」を制度化し始めました。2000年ごろからのトレンドです。OJTという言葉自体は、昔からあるものですが、以前のそれは「現場任せの育成」だったように思います。近年のOJTは、「制度化」されている点が特徴です。一人の新入社員に対して一人のOJT担当者を割り当て、1年から3年間、みっちり育てていくという形式を取り、人事部や人材開発部(以下、人事部と統一します)がOJT全体の運営を見ているというものです。OJTを始めるにあたり、若手社員に対して「期待する人材像」を明確にしたり、「指導計画書」を作成したりと制度面を整えるだけではなく、進捗確認のための面談やOJT成果発表会といったイベントを企画、運営したりする役割も人事部が担います。


働く人を取り巻く環境が大きく変化した現代は、人を育てるための仕組みが必要です。「ゆとり世代だから育たなくなった」のではなく、「環境変化の大きさが育ちにくさを助長している」ということをきちんと理解し、誰もが自分の職場の若手の成長を支援しようという姿勢を持つことが職場全体の能力向上のためには重要な要素となっています。


<注>

※1 昭和40年代発行の佐藤愛子さんの小説にそういう一説が出てきて、笑ってしまったことがあります。タイトルは失念しました。


※2 柴田昌治 『なぜ会社は変われないのか―危機突破の企業風土改革』(日本経済新聞社、1998年)では、「オヤジ文化が消滅した」といった表現で、例えば飲みに行って漏れ聞いて様々な情報を得るといった機会がなくなったなどと、近年の若手を取り巻く環境変化について述べています。


※3 中原淳 『経営学習論 人材育成を科学する』(東京大学出版会、2012年)では、人が育ちにくい環境の変化について「人材育成・学習」の機能不全の主因として以下の3つがあるのではないかと仮説を提示しています。

1. 職場の社会的関係の消失
2. 仕事の私事化、業務経験付与の偏り
3. 高度情報管理による学習機会喪失


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新規コースのご案内です。


・「人材開発の基礎知識 ~OJT編~」    (HSC0157G)

・「人材開発の基礎知識 ~OFF-JT編~」   (HSC0149G)


2016年9月より、「人材開発の基礎知識 ~OJT編~」を開講します。


この研修では、OJTの制度化に必要な基礎知識やOJTを制度化している企業の様々な取り組みを紹介します。OJT制度は、ラインの関係でトレーナーと若手が結びつきますが、それだけでは、若手の成長支援に不足があるということで、最近は、「斜めの関係」のメンター制度も広がりつつあります。メンター制度とは、企業によって定義が異なりますが、よく耳にするのは、「新入社員とは異なる部署の先輩がキャリアや日常生活について相談に乗ったり、アドバイスをしたりするもの」です。縦の関係のOJT制度と斜めの関係のメンター制度。この2つの「制度設計」と「運営上の工夫」を研修では紹介します。人事部、人材開発部、事業部門の育成担当者が対象の研修です。


2015年開講しました「人材開発の基礎知識 ~OFF-JT編~」も合わせてご受講ください。


こちらは、「従業員のための研修を企画、運営する担当者」が知っておくべき、人材開発の基本理論や学習者の動機づけ理論、人事部・人材開発部と現場の橋渡しの工夫など、研修を行う上の基本を全て盛り込んでいます。


2コースとも、参加者同士のネットワーキングの機会にもなり、その場で他社事例を共有する機会も得られます。




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田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント

1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いでいる。

【ブログ】
 ・アイティメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!

【著書】
 ・(NEW) 『ITエンジニアが生き残るための「対人力」の高め方』(日経BP社)※同僚の都川信和との共著です
 ・『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
 ・『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
 ・『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
 ・『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
 ・『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
 ・『田中淳子の人間関係に効く"サプリ"-職場で役立つ30のコミュニケーション術』(アイティメディア)(廃版)
 ・『コミュニケーションのびっくり箱』(日経BP電子書籍)(廃版)

【連載】
 ・@IT自分戦略研究所 「田中淳子の"言葉のチカラ"
 ・社会保険出版社 「四季のけんこう
 ・ITpro 「田中淳子の若手育成ワンポイントレッスン

[人材開発大人の学び後輩指導・OJT][2016年7月28日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第112回:「理論」と「実践」を組み合わせて、人材開発の「持論」を作る
執筆:田中 淳子

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「お客様から『新入社員のOJT担当者の文章添削力を高める研修はないか』と言われたのですが、何を提案したらよいでしょうか?」


ある時、弊社の若手営業からこんな相談を受けました。


聴けば、新入社員が書く日報の添削をしているのだけれど、添削が上手ではないため、新入社員の文章力がなかなか上がらない。OJT担当者がどのように添削指導すればよいか、ノウハウを学べる研修を提供したいというのです。


「そこなのかな?」と私は、ヒアリングしてきた若手営業に尋ねました。


「OJT担当者の添削力の向上ではなくて、新入社員そのものの文章力を向上させれば、OJT担当者が添削する時間も節約できるのではないのかな?そもそも鍛えたいのは、新入社員の文章力のはずだよね?」


「あ、そういえばそうですよね」と彼は言い、お客様と再度お話した上で、新入社員研修の一部に「文章力を基本から学ぶ」プログラムを2日間組み込むことになったのです。




ある企業からはこんな相談もありました。


「失敗プロジェクトの分析をしてみたら、あちこちの部署で同じトラブルを起こしていて、経験したことが社内で共有されていないことが原因だとわかった。社内のコミュニケーションを活性化したいので、階層別のコミュニケーション研修を実施してほしい」


「社内のコミュニケーションの課題を解決したいのであれば、階層別に研修するよりも、階層も部署もとっぱらって、全階層全部署をまぜこぜにした研修を行ってみるのはいかがですか?互いを良く知ることができ、何らかの成果を出せるようなコミュニケーションゲームをやってみるといった内容であれば、部署を超えて交流ができ、人間関係の構築に役立つと思うのですが、いかがでしょう?」


お客様は、「階層別のほうが会話のレベルが合うかなと思っていましたが、そもそも年代間や部署間の交流が課題なのだから、部署役職関係なく一緒に何かするほうがよさそうですね」とおっしゃり、「全階層/全部署の壁とっぱらいで行う研修」を10回ほどに分けて行うことになりました。一つのクラスに新入社員から事業部長までが混在している非常に面白い研修になりました。「こんな人が社内にいたんだ」とお互い驚いていて、研修後、知り合った者同士でメールも交換するようにしかけましたので、研修以前よりは社内のコミュニケーションが、活性化したようです。




人材開発担当者は、「人材開発」という側面から経営に関わる立場にあります。何らかの策を考え、役立つ研修を企画し、運営することで、社内で起こっている様々な問題を解決しようと日々奮闘しています。様々な課題の解決策を検討する際、自分の経験や他社事例を参照することも役立ちますが、企画したり運営したりする際に「よりどころ」となるものがあればより説得力のある人材開発策を社内に展開できるはずです。その「よりどころ」となるのが、「人材開発に関する基本的な理論」です。


 たとえば、「研修」で解決できることと、「研修」以外で解決すべきことは何か。
 たとえば、研修と実務の線引きはどうすればよいのか。
 たとえば、どうやって実務(経験)と研修での学びを融合させるのか。
 たとえば、学習者はどうやって動機づけすればよいのか。
 たとえば、研修の効果はどのように測ることができるのか。


これらには、すべて理論があります。


この10年ほどで働く大人の学びと成長に関しては様々な研究がなされ、多くの書籍も出版されています。人材開発に携わる人は、そういう本を読み、理論をきちんと押さえておけば、研修や人材開発の仕組みなどの企画・提案・運営に自信を持って臨むことができます。もちろん、書籍から得た知識を自社の人材開発の現場で実践し、試行錯誤していくことも大事です。


リーダーシップ研究でも著名な神戸大学の金井壽宏氏は、「リーダーシップ」について「理論だけでも実践だけでもなく、理論と実践をセットにした、私なりの"リーダーシップ"持論を作っていくことが大事だ」と常々おっしゃっています。人材開発に関しても、理論と実践を組み合わせた、私なりの"人材開発"持論を形成することで、人材開発の担当者は、経営や各事業部、従業員など様々な利害関係者と自信を持って対話することが可能となります。




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働く大人の学びと成長に関する書籍は、研究者が著したものだけでも何十冊にもなります。人材開発に携わる方にはそういう本を読むことをお薦めしますが、本を読んでもなかなか意味が理解できない、自社での適用の仕方がイメージしづらいといった声も数多く耳にします。


グローバルナレッジでは、人材開発の基本を学びたい方のために「人材開発の基礎知識」というコースを開始します。1日で「人材開発」の基礎を広く学ぶ内容です。書籍を読むのも大変という方も、この研修に参加した後であれば、専門の書籍はうんと読みやすくなることでしょう。


この研修には、多くの人材開発に携わる方が集まります。同じような立場にある方と情報交換をしながら、内省を深め、自社で活かせる「理論」を学んでみてはいかがでしょうか?


人材開発の基礎知識 ~理論を活用し、効果的な研修を企画・運営する~


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田中 淳子 (たなか じゅんこ) プロフィール

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント。

1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、インストラクショナルデザイン、トレーナー養成などヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。2003年からは、企業の「OJT支援」に力を注いでいる。


【ブログ】

 ・ITメディア オルタナティブブログ「田中淳子の"大人の学び"支援隊"!


【著書】

 ・(NEW) 『「上司はツラいよ」なんて言わせない』 (アイティメディア)
 ・『ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)
 ・『本物の自信を手に入れる! セルフファシリテーション』(ダイヤモンド社、共著)
 ・『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』(日経BP社)
 ・『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BPストア)
 ・『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)
 ・『田中淳子の人間関係に効く"サプリ"-職場で役立つ30のコミュニケーション術』
   (アイティメディア)
 ・『コミュニケーションのびっくり箱』(日経BP電子書籍)


【連載】

 ・@IT自分戦略研究所 「田中淳子の"言葉のチカラ"
 ・社会保険出版社 「四季のけんこう」
 ・ITpro 「田中淳子の若手育成ワンポイントレッスン



[人材開発大人の学び][2016年1月20日配信]

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