わくわくヒューマンスキルコラム
第25回 靴と一緒に自分を磨く
執筆:森 美緒
週末の楽しみの一つに、靴磨きがあります。
初めて靴磨きをしたのは、小学生の頃でした。お小遣い欲しさで父親の革靴に汚れ落としもせず靴墨を塗りたくりました。ピカピカになればいいだろうとサービスのつもりで靴底にまで靴墨を塗って、父親の足跡が魚拓のようにくっきりと玄関から自宅前の道まで付いてしまったこともありました。今思えば、よく叱られなかったものです。
ところが就職して自分自身が革靴を履くようになると靴磨きは面倒くさい作業でしかありませんでした。ビジネスマナー研修で「靴は磨いておきましょう。」と教えられましたが靴をきれいにしておく事と仕事には何のつながりも感じませんでした。自分がよければそれでよいと考え、ビジネスマナーとして強要されるのは納得ができない気持ちにもなりました。就職してしばらくは、塗るだけで艶が出るクリームを外出前にささっと塗るだけで済ませていたものです。
そんな私が靴磨きを楽しめるようになったのは、6年ほど前に、ある靴メーカーと出会ってからのことです。そのメーカーの靴はとても歩きやすく、形もきれいで長く履き続けたいと思うものでした。とはいえ、それまできちんとした靴磨きなどしたことがなかったので、メンテナンスの仕方が分かりません。そこで、恥を承知で購入した店へ行き店員さんに教えを請いました。どうしたら長持ちさせられるのか、革を手入れするにはどうしたらよいのか、店員さんは靴磨きに必要なグッズを一緒に選んでくれながら丁寧にレクチャーしてくれました。
それから試行錯誤をし、自分なりに靴磨きを研究しました。
クリームは塗ればよいというものでもないこと。ブラッシングをしないと革はどんどん痛んでいくこと。靴全体を靴墨で磨くとパンツスーツの裾が黒ずんでしまうので臨機応変な塗り方が大切であること。
靴磨きのコツ以外にも踵の減り方で歩き方の癖が分かること、靴が足に合っていないと歩き方がおかしくなり腰痛がおきること、緊張する会議の時には自分がいつも同じ靴を履いていることなど、自分自身と靴の関係に新しい発見がありました。
半年後、踵直しのために靴を持っていくと、私に靴磨きをレクチャーしてくれた店員さんが嬉しそうに「大切に履いてくださってありがとうございます。」と言ってくれたのを今でも覚えています。靴を見ただけで、私が靴を大切にしようと磨いていたことを見通し、私の「靴に対する気持ち」を受け取ってくださったように感じました。
社会人の義務のように思っていた靴磨きが自分の楽しみになったり自分自身の仕事へのゆとりにつながったりすることは嬉しい発見でした。
今考えてみれば、その発見をする前はマナーを相手主体ばかりで考えていたのだと思います。すべてマナーは相手のため、相手からの見栄えをよくするため、相手に好感を持ってもらうためと、相手にだけ焦点をあててマナーを考えていたのです。自分が気分良く仕事をするため、自分と相手が円滑な関係を築くため、相手が気づいてくれた時嬉しいからと、自分に焦点をあてて考えてみた時、靴磨きだけでなくすべてのビジネスマナーは自分の仕事への心構えや姿勢となり楽しめるものだと気づきました。そう気づいて初めて、本気でビジネスマナーの大切さを感じ、勉強をしなおしました。
現在、ビジネスマナー研修を担当する時には、マナーとは相手と自分両方のためになるものだと受講者にお伝えしています。自分自身のあり方と相手への配慮、その両面から考えて最適な対応を選ぶことが結果的には自分本来の能力や個性を発揮することになると思うからです。マナーは相手への配慮であると同時に仕事と自分の関係の潤滑油になります。
『相手のために。そして巡りめぐって自分のために。』
そんなことを思いながら靴を磨く時間は、翌週の自分を輝かせるための大切な時間です。
グローバルナレッジでは、ビジネスマナー研修として、フライングカーコーポレーションとIT化時代のビジネスマナーの2種類をご用意し、カスタマイズも承っております。
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森 美緒 (もり みお)
グローバル ナレッジ ネットワーク 人材教育コンサルタント。 産業カウンセラー。
1999年、教育出版社に就職し、営業および営業担当者向け研修を担当。商社での秘書業務を経て、2005年、グローバル ナレッジ ネットワークに入社。
2006年より現職。プレゼンテーション、コミュニケーション、ファシリテーションなどヒューマン・スキル研修の実施に当たっている。
[ビジネスマナー][2007年10月30日配信]


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