Global Knowledge Japan

わくわくヒューマンスキルコラム
第3回 慣れないうちは、「筋肉痛」になる
執筆:田中淳子

  コミュニケーション・スキルの1つに、「アクティブ・リスニング」(*)があります。アクティブ・リスニングは、積極的かつ能動的に相手の話を聞くことを指します。コミュニケーションの土台を支えるスキルです。
  スキルそのものは簡単です。まず、話し手から見て「話しやすい」態度をとって聞くことから始めます。たとえば、相手のほうに体を向けたり、相槌を打ったりうなずいたりする。そうやって「話しやすい聞き手」を聞き手自らが演出するのです。


  研修では、多くのロールプレイを取り入れています。頭では理解できても、実践するのは難しいため、とにかく体験することで少しずつスキルを身につけていこう、と考えているからです。


  アクティブ・リスニングの「聞く態度の体験」というロールプレイ演習では、話し手と聞き手とに分かれ、「自分自身の"聞く態度"に気をつけて、相手の話をよく聞く」練習をします。ロールプレイが終わった後に感想をお尋ねすると、聞き手役だった方からこんな感想が返ってくることがあります。


  「こんなに自分の態度や質問の種類を気にしていたら、そこにばかり意識が行ってしまい、かえって相手の話が聞けなくなります。」
「聞くだけでこれほど疲れるのでは、毎回毎回"アクティブ・リスニング"を意識するのはシンドイです。」


  こんな時、私はこう解説します。


  「それは、コミュニケーションの"筋肉痛"ですよ。」と。


  スポーツでも最初は型や方法を学んで練習します。水泳を習う場合、バタ足はどうすればよいか、息継ぎにはどんなコツがあるかを一つずつ習っていきます。ところが、最初は慣れないことをするので、筋肉痛にはなるし、水泳を楽しむ余裕などありません。
  ただし、筋肉痛になっても、あきらめずに練習を重ねていけば、そのうち身体が型を覚え、必要な筋肉も作られます。あれこれと型やコツや意識しなくても、自然に泳げるようになってきます。そうなれば、水泳を楽しむ余裕も生まれてくるわけです。
  コミュニケーション・スキルも同じです。最初は、色々意識することが多くて、身体も精神も疲れてしまいます。スキルに意識が行き過ぎると、話の内容を把握するほうには気が回らない、というのも事実でしょう。でも、そこで諦めるのではなく、しばらく意識的にスキルを使っていくとどうなるでしょう。そのうち、実践しているスキルが少しずつ自分のものとなり、そのスキルは、自然にできる領域にまで進化させていくことができるはずです。
  意識しなければできなかったことが、無意識のうちに行っている状態になるまで、諦めずに実践あるのみです。


  最近読んだ本でこんな一節を見つけました。
  (聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏 『生きるのが楽しくなる15の習慣』(講談社+α文庫))


******************************
  「身につける」という行為は、どれもこうした習慣の繰り返しです。最初は努力して行うのですが、そのうち自然に出るようになり、それがその人の能力になります。」
******************************


  日野原氏が子供のころにピアノを習っていたときのことを例に挙げ、人は何事も繰り返すことで身につけ、さらに自分の能力を高められるのだ、と説いています。「努力して行う」ことが「自然に出る」ような状態を作り出し、最後は「自分に能力として備わる」まで進化させる。何事もこのステップを踏めば、自分の能力は何歳になっても、いくらでも高められると言うのです。


  「コミュニケーション」などヒューマン・スキルの研修は、ヒューマン・スキルの"筋肉"をつけるための素となるスキルやテクニックをできるだけ多く持ち帰っていただくためのものです。その後は、参加されたお一人お一人が日々、意識的に実践し続けてくだされば、きっといつか効果が表われることでしょう。


*アクティブ・リスニングは、積極的傾聴法とも呼ばれる、「聞くためのスキル」です。
  「
効果的コミュニケーション・スキル」(ON306)で学ぶことができます。

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[アクティブリスニング][2005年12月20日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第2回 ヒューマンスキルは学習できる
執筆:田中淳子

  グローバルナレッジ で考えるヒューマン・スキルには、コミュニケーション、プレゼンテーション、ネゴシエーション、リーダーシップ、教え育てる技術などが含まれます。
  こういったヒューマン・スキルを、「生来のもの」と思ってはいませんか?「性格に依存する」「生まれつき向いている、向いていないがはっきりしている」と。
  確かに、多少はそういった面もあるでしょう。外交的だとか内向的だとか、人と話すが好きとか苦手だとか...。
  でも全てが性格に依存するものでもないですし、性格とは別に「学べるスキルだ」という捉え方もしていただきたいと思っています。


  たとえば、皆さんが何かのスポーツを始めるとします。最初は、何をどうしたらいいかもわからないでしょう。そんな時、コーチについて、「やり方」を学ぶという方法を取ることはありませんか?スクールに通い、基本の型や動作を教えてもらう、それをやってみる、最初は難しいけれど、少しずつできるようになる...。そんな経験をしたことはないでしょうか?
  スポーツに取り組む時、「性格上向いていない」などとあまり考えず、単に「挑戦してみたい」という興味に支えられて人は行動を起こすものでしょう。「習ったばかりで、なかなかできないけど、やっているうちに少しずつうまくなるかなあ」と期待を持って取り組む方が多いのではないかと思います。


  ヒューマン・スキルにも同じことが言えます。性格や資質のことは一旦脇に置いておいて、ちょっと興味を持って、習い、使ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。


  こんな例があります。上司との関係がギクシャクしている人がいました。少しだけ勝気な彼女は、上司のノンビリした仕事の指示に、いつもいらいらしていました。忙しい時間に些細な仕事を指示されたある時のこと、思わず「もう少し私の様子も把握してから、指示を出してもらえませんか?」と言ってしまったのです。こんな風に攻撃的な表現をされると、いくらノンビリした上司でもむっとするのは言うまでもありません。その一言がきっかけとなり、上司と部下は険悪なムードになってしまいました。それから1週間ほどほとんど口も聞かずに過ごす羽目に...。上司も部下も共に「おもしろくない気分」を抱えて過ごさなければなりませんでした。


  しばらくしてから、上司は再び彼女にノンビリと仕事の指示をしました。彼女は、その時、たまたまコミュニケーション・スキルの勉強をした直後でした。コミュニケーション・スキルのひとつに「アサーション(相手に配慮しつつも、言いたいことを相手に伝えるスキル)」があります。この"アサーション"を使ってみようと思ったのでした。そこで、上司に対して、このように言いました。「○○さん(上司の名前)、今私は出かけるところで、落ち着いてお話を伺うことができません。2時間後には戻りますので、その際に改めて仕事内容をお聞きしてもよろしいですか?そうすれば、私もきちんと対応できると思います。」すると、上司は、「あ、ごめん、ごめん。出かけるところだったのだね。戻ってきてからでいいよ。」と素直に謝り、彼女が外出先から戻るのを待つことになりました。


  この話を聞いて、皆さんはどのように感じるでしょうか?たった1週間です。部下の彼女の性格が変わったわけではないはずです。変わったのは、たった一つ、「表現の仕方」です。「いい加減にしてくれませんか?今私が忙しいこと、見ていてわからないのですか?」から「2時間後にお話を聞いてもいいですか?」と変えただけです。


  彼女の行動が変わりました。というよりも、彼女が意識的に行動を変えました。結果として、上司の反応が変わりました。
  人は、他人を変えることはできませんが、自分を変える、自分が変わることはできます。自分が変わることで相手への影響を変えることができます。すると、間接的に相手が変わる可能性があるのです。


  この例のように、ヒューマン・スキルは、学んで使うことができます。性格を変えなくてもよいのです。まずは、スキルとして使ってみると、仕事の環境がほんの少し変化するかもしれません。


*「アサーション」は「効果的コミュニケーション・スキル」(ON306)で学ぶことができます。

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[コミュニケーション][2005年10月31日配信]

わくわくヒューマンスキルコラム
第1回 フィードバックの思い出
執筆:田中淳子

  私、田中淳子は、1990年にアメリカで「インストラクター・スキル」という研修を受講したことがきっかけとなり、現在のような"ヒューマンスキル"分野の研修を本格的に手がけるようになりました。


  これは、研修インストラクタ向けに「教え方」「プレゼンテーション方法」「教材作り」などを5日間で教えるもので、私はそのクラスに唯一の日本人として参加しました。当然英語は下手で、講義についていくのもやっと。必死に辞書を引き、講義やディスカッションについて行きました。最終日には、一人15分のプレゼンテーション演習があり、ビデオ撮影もありました。「OSのオペレーション」の講義をした私は、文法も完全に無視して、なんとかしゃべり終わったという状態だったのです。


  研修の最後に、講師が「この5日間の参加について、ジュンコにフィードバックしよう」と声をかけました。何人かの手が挙がり、私に対するフィードバックが始まりました。


  講義中も言葉を調べるのに必死で、辞書にくびっぴきでしたので、発言などほとんどしていませんでした。プレゼンテーションにおいては、英語はめちゃくちゃで、何を言っているのか、アメリカ人の受講者にはわからなかったと思います。なので、フィードバックでも「英語が下手だった」「言葉が通じないので、ディスカッションにも参加していなかった」など、否定的なコメントが多く寄せられるだろうと、身を硬くして構えていました。すると・・。


  アメリカ人のクラスメイトは、口々にこう言いました。「ジュンコは、5日間ずーっと辞書を引いていた。」「ジュンコは、なんでもノートに書いていた。」「ジュンコのプレゼンでは、ホワイトボードに沢山書いてくれたので、理解しやすかった。」
  5日間の緊張がさーっと解けた瞬間です。


  「ああー、フィードバックというのは、"ここが悪い"と指摘するだけではなく、"何をしていた"と感じるままを、それも、ポジティブに表現するものなんだ。」と目からウロコが落ちました。アメリカで苦労した甲斐があったと思い、こういう「気持ちがよくなる」研修を日本の企業人向けに開催したいと強く思いました。


  この出張後、私は、いくつかのヒューマンスキル研修を開発し、開催し始めました。研修の基本精神として決めたのは、「決してネガティブなフィードバックをすまい。人は、認めてほしい生き物だし、認めることでその人が伸びるのだ」ということです。


  この時、受講したコースは、日本に持ち帰り、「トレイン・ザ・トレーナー」(ON258.4日間)として、今でも実施しています。これ以外でも「プレゼンテーション」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「コーチング」など様々なヒューマンスキルの研修を開講しています。どの講師もすべてのコースにおいて、一貫して、「ポジティブなフィードバック」を心がけています。


  人は、「その行為を認められ、褒められる」ことで成長する---。


  グローバルナレッジのヒューマンスキル研修の根底には、この精神があります。


  ヒューマンスキル研修に参加することを躊躇している方、抵抗を感じる方、心配することなく、是非一度参加してみてください。

 


田中 淳子 (たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク 人材教育コンサルタント。産業カウンセラー。1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタルイクイップメントを経て、現職。コミュニケーション、リーダーシップなどヒューマン・スキル研修の企画、開発、実施に当たっている。

 

【ブログ】 
「ヒューマンスキルの道具箱」
 

【著書】
『速効!SEのためのコミュニケーション実践塾』『速効!SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』(日経BP社)
『はじめての後輩指導~知っておきたい30のルール~』(日本経団連出版)

 

【連載中】 
日経BP朝イチメール「コミュニケーションのびっくり箱」(月曜日配信、無料) 

 


[コミュニケーションコーチングプレゼンテーションリーダーシップ][2005年9月27日配信]

※Microsoft、Windowsは、米国Microsoft社の登録商標です。
※Oracleは、米国オラクル・コーポレーションおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。
※PMI、PMP、PMBOKは、プロジェクトマネジメント協会(Project Management Institute, Inc.)の登録商標です。
※ITIL®はAXELOS Limited の登録商標です。
※American Management Association は、米国アメリカン マネジメント アソシエーションの登録商標です。
※BOOT CAMP、NEW TRAIN、Glovalueはグローバルナレッジネットワーク株式会社の登録商標です。
※その他このサイトに掲載された社名、製品名は、各社の商標、または登録商標です。

© Global Knowledge Network Japan, Ltd. 2008-2016, All Rights Reserved.
  • Get ADOBE READER