マネジメントの壺コラム
第5回: ITのサービス化の流れの中で、サービスマネジメントは最先端をゆく
執筆:鈴木 寿夫
古くからあるサービス業、例えばホテルや金融サービスでは、サービス提供における品質改善の取り組みがなされ、顧客満足度をいかに向上するかを常に意識したサービス改善が行われてきました。一方、IT業界ではどうしてもサービスという観点ではなく、システム開発といったモノ作りであったりシステム管理や技術管理という観点であったり、目の前にあるインフラストラクチャやアプリケーション、テクノロジに大きな関心があったように思います。確かに技術の進化のスピードは速く、ITテクノロジは大変興味深いですね。
しかし、時代はクラウドサービスに代表されるようにIT業界にもサービス化の流れの勢いが増しており、この大きな流れは止めることはできないと思います。クラウドサービスにおいては、ハードウェアのようなモノの所有が移るのではなく、サービスを利用するという考えになりますので、有形のモノではなく無形の価値が提供されることにフォーカスしており、まさにサービスの考えがそこにあるのです。
といっても、クラウドサービスがメジャーになるずっと以前からITIL®はITサービスマネジメントのベストプラクティスと言われていました。特にITIL® v1の前身となったプラクティスはサービスレベルマネジメントについて執筆されたもので、v1が発行された1980年代後半より前から"サービス"という言葉が使われ、ITシステムにおいてもサービスレベルマネジメントについて考える必要があると言っていたわけです。
そんな古くからITにおいてシステムの観点ではなくサービスの観点で考えなければいけないという発想をしていたことには、ほんとうに驚かされます。 では、サービスの観点とは何でしょうか?簡単に言ってしまえばサービスの観点とは、顧客フォーカス、ユーザの立場にたって考えることをいいます。IT内部の視点ではシステムの観点になりますが、ITをユーザ側からの外部の視点でみたらサービスという側面が見えてきます。
そして、IT業界においては他のサービス業であるホテルや金融サービスよりもサービスマネジメントの考え方が入ってくるのが比較的遅かったため、サービスの観点や、サービスマネジメントについてはかなり遅れているように思います。ITIL® v2が日本で普及し始めたのが2003年になりますが、本当にそのITSMの本質を理解している人は少なかったのではないでしょうか?
なぜならば、「システム運用管理のフレームワーク」というメッセージが伝えられ広く認知されたのですが、ITサービスマネジメントというITはサービスであるという本質的なことがあまりクローズアップされなかったからです。それが、ITIL® v3になりサービスライフサイクルの観点が鮮明になるとともに、設計/開発、移行、運用という全体を、横串を通してサービスとして管理しなければいけないということが明確にされたことで、ITIL® v3は真のITサービスマネジメント(ITSM)、もしくはビジネスサービスマネジメント(BSM)のベストプラクティスとして認知され始め、価値を感じてもらえるようになったのではないかと思います。
そして、IT業界においてはサービスマネジメントの取り組みが遅れている分、またグローバリゼーションとクラウド化の流れも加速し、世界中でサービスマネジメントに対する研究開発投資が多くなってきているようです。さらに、サービスサイエンスとして、さらなる発展が見込めるこの分野は、まさに時代の最先端であると言っても過言ではないと思います。 ITIL® v3は、サービスマネジメントの考えと合致しており、今後のサービス化の時代においては、必須の知識になることは間違いないのではないでしょうか。
鈴木 寿夫 (すずき としお)
DIG2ソリューションズ株式会社 代表取締役
itSMF Japan SLM分科会 副座長
ITIL® Expert / ITIL® Service Manager, ITIL® Intermediate SOA/PPO/RCV/OSA/MALC, ITIL® Practitioner IPRC, COBIT Foundation, PMP®
1993年日本ディジタル イクイップメント コーポレーション(現日本HP)入社。フィールドエンジニアから、教育研修ビジネスの立上げ、運用アウトーソーシング、ITサービスマネジメント認定教育ビジネスのリードを行う。
2008年12月DIG2ソリューションズを設立し、ITサービスマネジメントの教育およびコンサルティングを行い、お客様のITサービスマネジメントの実践を支援している。
[ITIL(R)][2011年2月28日配信]


ITIL(R)






