Global Knowledge Japan

マネジメントの壺コラム
【ホワイトペーパー-4】 ITIL® V3とPMBOK® - 異なるが補完しあうもの

米国グローバルナレッジが発表しているホワイトペーパーの翻訳版をご紹介します。
ホワイトペーパーはPDF形式でもご覧になれます。「資料ダウンロード」ページよりご覧ください。



はじめに
本書では、ITインフラストラクチャライブラリ バージョン3(ITIL® V3) とプロジェクトマネジメント知識体系(Project Management Body of Knowledge、PMBOK)を検証する。 ITIL® V2とPMBOK® に関する先の白書(http://www.globalknowledge.com/training/whitepaperdetail.asp?pageid=502&wpid=222&country=United+States)は、それぞれの知識体系をレビューした後、ITIL®を導入するためにどのようにPMBOK®を活用したらいいのかを説明した。今回は知識体系の比較に加え、ポートフォリオ管理とサービスポートフォリオに注目し、これらがビジネスIT統合(Business IT Integration、BITI)を進めるサービスやプロジェクトのためのIT投資をいかに効果あるものにするのかを説明したい。


 

プロジェクトマネジメント知識体系
(Project Management Body of Knowledge, PMBOK®)

 

要点
世の中に数多くのプロジェクト管理方法論がある中で、北米市場で中心になっているプロジェクト管理方法論はProject management Institute (PMI)がまとめているPMBOK® である。一般にプロジェクト管理は、リソース(時間、お金、人、材料、エネルギー、場所、等)を最適に使いながら管理し、ターゲット目標を定義し達成するための規律である。プロジェクト管理プラクティスを活用することは、ビジネスが価値やサービスを提供するのに重要である。PMBOK® は「プロジェクト管理とは知識、スキル、ツールやテクニックを利害関係者のニーズや期待値に合致するあるいは超えるためのプロジェクト活動である」と定義している。プロジェクトはユニークな製品やサービスを創造するために実行する有期的な努力である、ということに重点が置かれている。
PMBOK® には9つの知識領域と44のプロセスがある(図1. PMBOK® 知識とプロセス領域、を参照)。これらの知識領域は業界やプロジェクトに特定されないベストプラクティスを提供している。PMBOK® のプロジェクト管理プロセスは5つのプロセスグループやフェーズに分けられる。
•立ち上げ
•計画
•実行
•監視コントロール
•終結
プロジェクトの主な特徴は、成果物に注力しているということである。成果物を製作するための作業の定義は、まず作業分解図(Work Breakdown Structure、WBS)を作成し、その作業を達成するのに必要なタイミングやリソースをスケジュールし、最後にそのスケジュールを実行することで達成できる。

 


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                 (図1 PMBOK® 知識とプロセス領域)

各PMBOK®ガイドの知識領域はいくつかのプロセスを抱合し、各プロセスは実際のプロジェクトにどう適用すべきかのガイダンスを提供すべく設計されている。例えば、プロジェクトスコープマネージメント(図1の5)は、プロジェクトのスコープをどう定義すべきか、スコープをどう成果物に展開するべきか、それらの成果物(WBS)を製作するために必要な作業をどう定義するか、またコントロールを検証を通じてスコープをどう変更すべきか(過小でも過大でもないように)、に関するガイダンスを提供する。

 

プロジェクトポートフォリオ管理
プロジェクト管理の世界ではポートフォリオ管理は決して新しい用語ではない。むしろ、PMIがポートフォリオ管理のためにOPM3フレームワークを開発したときから認識されていた。
その名の通り、プロジェクトポートフォリオ管理(PPM)では、投資管理会社が金融資産をあなたに代わってポートフォリオに分けて管理するように、プロジェクトがポートフォリオ単位で管理できるようにグループ化する。金融ポートフォリオ管理は1950年代にシカゴ大学の経済学者Harry Markowitzが、個別の投資案件を持つよりもリスクを低減して利益を増やすための手段として投資案件をいくつか性質の異なる投資をまとめポートフォリオとして表現したことから始まった。

 

この概念は1990年代にIT分野にも適用が始まり、2000年代初頭に急速に浸透した。PPMの主な利点はITおよびビジネス担当の管理者に鳥瞰図的な視点を提供し、冗長な点を見つけたり適切な資源配分をしたり進捗を詳細に監視したりできるようにする。PPMは特定のプロジェクトのコストに関する洞察だけではなく、ポートフォリオ内の他のプロジェクトとの相対的な観点でリスクや利益に関しての洞察も提供するため、プロジェクト間での比較ができるようになる。
プロセスとしてのPPMは、組織が全てのプロジェクトに関する情報を獲得し観察することを支援するように設計されており、定義された基準(例えば戦略的価値、リソース要求、コスト、等)に従って各プロジェクトの優先順位付けを行う。他のPPMの目的は:
• ポートフォリオ内の全ての個別のプロジェクトについて把握する
• 各プロジェクトの「概観図」を作り、ポートフォリオにさらなる洞察を全体として提供する
•新しく何を追加すべきかまたはどの既存プロジェクトを変更すべきか、ビジネスや市場環境の変化に合わせてどのプロジェクトをキャンセルすべきか、といったポートフォリオと個別のプロジェクトのアセスメントに利する
• 組織の有限なリソースやキャパシティを効果的・効率的に活用する
通常、組織がITプロジェクトの数が増えたためにプロジェクトを定義・選択・追跡することをより公式に行う必要が生じたときにPPMを開始する。PPMの最初のステップは通常、各プロジェクトを分析し比較するために十分な情報を集めて、現状の全プロジェクトを棚卸しするところから始める。この段階の情報には、プロジェクト名、予定の期間とコスト、ビジネス目標、組織の全体戦略をそのプロジェクトがどのように支援するか、といったことが含まれる。そのためにPPMのツールが有効なのは言うまでもない。
プロジェクトの棚卸しの次は、設定した基準に基づいてプロジェクトの優先順位を付け、バランスの取れた、支援可能なプロジェクトのリストを作るために、ITおよびビジネスの管理者が各プロジェクトを検証する。さらに組織の有限なリソースやキャパシティを最大限に活用できるように優先順位付けする。この工程でいくつかのプロジェクトが生き残れず、キャンセルされることがあるのは極めて一般的である。
その後、ポートフォリオに追加すべき新プロジェクトは、基準を満たすことを示すためのビジネスケースを準備するのが典型的である。PPMプロセスを継続的に実施するにあたり、ポートフォリオ内のプロジェクトは、ポートフォリオ管理チームが定期的に評価して、プロジェクトがゴールに合致するか、さらなる支援が必要か、支援を縮小するか、完全にポートフォリオからはずすか、といった判断が下される。各プロジェクトを取り巻く状況やビジネス環境は急速に変化するため、ポートフォリオがITおよびビジネスチームによって頻繁にかつ積極的に確認され更新される場合に、PPMは最も効果を発揮する。
大規模組織では、プロジェクト(またはポートフォリオ)マネジメントオフィス(PMO)を設立して、数多くのプロジェクトを管理し共通のプロセスを提供するのがよいかもしれない。
結局、ポートフォリオ管理とITIL®との関係は何か?と聞きたくなるだろう。いろいろな点で関係しているが、まずはITIL® V3に着目し、PMBOK®とITIL® V3の比較を更新しよう。

 

ITインフラストラクチャライブラリ(ITIL®)


高品質なITサービスマネジメントのベストプラクティスのフレームワークで、5巻の書籍にまとめられているITインフラストラクチャライブラリ(ITIL®)とは、後にイギリス商務局(OGC)に統合された中央電算通信委員会(CCTA)により1980年代後期に開発された。
爾来、ITIL®はITサービスマネジメントのフレームワークとして世界規模で導入・受容されてきた。
これらの手順は供給者に依存せず、ITインフラストラクチャの全領域に適用可能である。

ITIL® V3の構造
ITIL®フレームワークは、V2のときのプロセス中心の観点から、V3では戦略的観点に進化してきた。図2に示すように、V2時代の全ての要素がV3にも引き継がれているが、内容と構造は大幅に変更されている。10のプロセスと1つの機能に代わって、現在では25以上のプロセスと4つの機能が直接的に定義され、どのような導入にも適用できるようになっている。


図4-2.jpg
                        (図2 ITIL® V3)
 
ITIL® ライブラリには2つの主要な構成要素がある。
• ITIL®コア: 内向け・外向けに関わらずビジネスに対してサービスを提供するあらゆる組織に適用可能なベストプラクティスへのガイダンス。5巻のITIL® V3書籍にまとめられている。
• ITIL®補完ガイダンス: 業界や組織タイプ、オペーレーションモデル、技術アーキテクチャに特化した補完的なガイダンス
5巻の書籍に定義されるITIL®コアはさらに以下(図3も参照)に説明する3つのライフサイクルとしてさらに定義される。

戦略開発
戦略開発: 組織のキャパシティとしてだけでなく、資産としてサービスマネジメントをどう設計し、開発し、導入するのかを説明する。財務管理、サービスポートフォリオ管理、需要管理プロセスを含む。

戦略導入
サービス設計: サービスとサービスマネジメントプロセスの設計・開発を説明する。サービスカタログ管理、サービスレベル管理(SLM)、可用性管理、キャパシティ管理、ITサービス継続性管理(ITSCM)、情報セキュリティ管理、サプライヤ管理プロセスを含む。
サービス移行: 新規のまたは変更されたサービスを運用段階に移行するための能力開発や向上を説明する。変更管理、サービス資産管理および構成管理、リリース管理および展開管理、サービスの妥当性確認およびテスト、ナレッジ管理を含む。
サービス運用: サービス運用の管理を具体化する。アプリケーション管理、技術管理、IT運用管理、サービスデスク機能を含む。また要求実現、アクセス管理、イベント管理プロセスも含む。

測定と評価
継続的サービス改善 (CSI):サービス戦略、設計、移行、運用を改善するための努力と連携したよりよい設計、移行、サービス運用を通じて顧客の価値を維持することを説明する。CSIはまた、品質管理(例えばSixSigma)の原理、プラクティス、方法論や、変更管理、ISO/IEC 20000で定義されるPDCAに基づく閉ループのフィードバックシステムを通じた能力向上を結び付ける。

図4-3.jpg
            (図3 ITIL® V3は計画とコントロールの閉ループである)


 

プロジェクト管理とITIL® V3~知識体系の比較~

 

では更新されたITIL® V3知識体系とPMBOK®を見てみよう。ご覧の通り、ITIL® V2との違いは驚くほどで(詳細はhttp://images.globalknowledge.com/wwwimages/whitepaperpdf/ WP_Cooper_PM_ITIL.pdfを参照のこと) 、かつてないほど、プロジェクトとポートフォリオ管理をよりよく理解するためにITIL®を適用することを組織に求めている。既にポートフォリオ管理や、プロジェクトやアプリケーション・ポートフォリオにどう適用するかの経験がある組織にとって、ITIL® V3は古き友人のように感じることになるだろう。
両者の主な違いは、これまで同様、プロジェクト管理はどのような業種にも適用できるのに対し、ITIL®はIT関連業にのみ適用できるということである。また、PMBOK®ガイドは倫理規定も含み、これに反した場合には適格性認定を保留されたり取り消されたりすることがあるのに対し、ITIL®にはそれがない。
PMBOK® ガイドがより広い領域に対して影響力があり、プロジェクト管理者のための資格がIT業界で広く認識されているのは事実だが、ここ数年、ITコミュニティでITIL®資格が注目されるようになってきているのも明らかである。
下掲の表はPMBOK®のフェーズとV3サービスライフサイクルのフェーズがどのように対応するかをまとめたものである。

 

PMBOK®

ITIL® V3

立ち上げと計画

サービスストラテジ

実行

サービスデザイン

サービストランジッション

サービスオペレーション

監視コントロール

継続的サービス改善

終結

 

 

ITIL® V3 にはPMBOK® の終結フェーズに直接対応するフェーズがない。これはITIL®がサービスのライフサイクルと常に監視され測定され改善される必要なプロセスに適合するようになっているからである。最も終結フェーズに近いITIL® V3のフェーズはサービスの廃止であろう。なぜならプロジェクトが「確定した開始と終了時点が明確な有期的な努力」と定義されるのに対し、ITIL®は継続する運用であり終ることのないものだからである。

 

ITサービスポートフォリオ

ITIL® V3の主な変更点はサービスの定義「サービスとは、顧客が達成したい成果を挙げることに、特定のコストやリスクに関するオーナーシップを持たずに、寄与することによって、顧客に価値を提供する手段」の中にある。
ITILは価値を有用性(目的に適合するか)と保証(使用に適合するか)との観点で定義する。有用性は「支援された成果」と「除外した制約事項」の数で測定される。保証は可用性、キャパシティ、継続性とセキュリティの観点で測定される。
ビジネスは成果を提供するときのリスクやコストを、ニーズを満たすサービスを購入することでITに転嫁する、という考えがあるからである。図4に示すように、ビジネス変更ライフサイクルとITサービスライフサイクルは縒り合わさっていて、ビジネスニーズはITサービスによって満たされるようになっている。これらの変化するビジネスニーズを満たすように始められたプロジェクトはITとビジネスプロジェクトポートフォリオを形成することになる。

 

                                PMBOK®とITIL® V3の知識体系比較

 

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問題は要求を満たすためにどのITサービスを加えたり変更したりしなければならないか、ということになる。必要とされた時点にそのサービスがそこにあること(タイムリであること)、ビジネス要求に合致していること(効果的かどうか)、効率的な方法でそうできていること(測定可能か)をいかに保証するのか。そこにこそサービスポートフォリオが重要になる。

 

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                    (図4 ビジネス変更ライフサイクル)

 

サービスポートフォリオを適切に理解するために、ITへの要求事項をどこで聞き取るのかを理解しなければならない。そのためには、ITのサプライチェーンを理解しなければならない。

 

ITサプライチェーン
ITサービスポートフォリオを定義する前に、ITサプライチェーンを理解することが有益である。どのサービスがどのような様式で提供されなければならないか、ビジネスの視点から知ることになる。
ITIL® V2がビジネスとITの連携に焦点を当てることになっていたにもかかわらず、現実には極度にITの技術プロセス、特にサービスサポート内のITオペレーションに注力していた。サービスカタログは、議論されることはあっても、注目の中心ではなかった。一方ITIL® V3では、ビジネスとITの統合に焦点が当てられ、両者の統合の戦略的視点が強調される。プロセスは依然として重要だとは認識されているが、2次的である。下掲の表ではプロセス中心視点のITIL® V2と要求中心のITIL® V3との違いを整理している。


 

プロセス中心のIT

要求中心のIT

技術と技術プロセスに注目

顧客の成果と戦略価値に注目

火消しモード(放火犯は誰?

要求中心

組織の「サイロ」。時にはサービスマネージメント内でも。

エンタープライズサービスとプロセス

未知のコスト

財務的な透明性

技術的基準

ビジネス価値

 

ITは提供するサービスの妥当性、即ちどのように定義されているか(有用性)どのレベルで提供し測定されるか(保証)を顧客(ビジネス)から入手することになる。図5に示すように、企業戦略や計画は最初に事業部門に翻訳され、次に機能戦略と計画に展開され、いずれ実行可能なオペレーション戦略と計画になるが、全てにITとビジネスの視点が含まれる。 ITサービス運営グループ(ISG)は、各層に戦略と計画が翻訳されていく過程を監視し、サービスポートフォリオが新規のあるいは更新されたビジネス要求に合致するサービスを含んでいることを保証する。もし不要なサービスがあればその廃止を決断しなければならない。

 

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                     (図5 IT運営グループ)

 

金額に見合った価値を保証するためにシームレスな品質を提供するためのものである」。これは他業界で数十年に渡って存在するサプライチェーン管理の概念に(特にハードウェア側で)とてもよく似ている。機器の外側に記載されている社名のサプライヤから提供される部品だけで成り立っている機器がどれほどあるか。インテルはあなたのコンピュータの「内側にある」という大掛かりな宣伝を行ったが、コンピュータの外側にインテルの名前はない。IT業界では既に、多くの外部サプライヤを使っている。例えば、ハードウェア、サードパーティ・ソフトウェア、テレコミュニケーション、ハードウェア・メインテナンス、等。ITIL® V3は、実際のITオペレーションですでに行われているこの重要な側面に着目したに過ぎない。
下掲はITのサプライチェーンを単純化して表現した図である。
• ITは顧客とサービスレベルアグリーメント(SLA)を交わす
• SLAはIT内部ではオペレーショナルレベルアグリーメント(OLA)に展開される
• OLAはハードウェア/ソフトウェア・メインテナンスベンダとの外部委託契約(UC)によって支えられる
図6はITサプライチェーンの概念を表現したもので、ITサプライヤ(この場合はテレコム・プロバイダ)がどのように彼ら自身の内部OLAとUCを彼らのサプライヤと交わすのかを示している。

図4-6.jpg
                  (図6 ITサプライチェーン概略)

 

サプライチェーンとは何か?
サプライチェーン、またはロジスティクス・ネットワークとは、組織、人、技術、行動、情報、リソースなどをサプライヤから顧客へ移動する際に関連するシステムである。サプライチェーンの活動によって、自然素材や資源、部品などがエンド顧客に提供される最終製品に変換される。洗練されたサプライチェーンシステムでは、使用済みの製品も残存価値が再利用可能になった時点でサプライチェーンに戻ってくる。
典型的なサプライチェーンは環境上または生物学上の天然資源に関する規則から始まり、いくつかの生産リンクを含む、人間による資源の採取がこれに続く。例えば、完成製品がより辺境の倉庫や地理的に離れた場所に運ばれる、最終的に消費者に届く前に、部品製造、組み立てがある。
サプライチェーンの中で発生する交換は異なる会社間のものであり、それぞれの会社が売上の最大化を狙うが、サプライチェーン内の他のプレーヤーには興味すら及ばないことがある。最近では、製品やサービスを提供するために緩く結合した、自発的に組織化されたビジネスのネットワークのことを拡張企業と呼ぶことがある。
出展:Wikipedia

 

全体でITを提供すること

 

ITIL® V3のサービスポートフォリオはビジネス向けに提供する最適な組み合わせのサービスをいかに作り管理できるかに言及する。サービスポートフォリオは「全サービスのライフサイクルを管理するために使う」「サービスプロバイダによって管理されるサービスの一覧」と定義される。サービスポートフォリオには3つのカテゴリがある。
• パイプライン(提案されるまたは開発中のサービス)
• サービスカタログ(提供可能または導入可能)
• 廃止サービス
サービスプロバイダとは、1件以上の内部または外部顧客に対し、サービスを提供する組織のことである。サービスポートフォリオ管理は「企業横断的にサービスに対する投資を管理し、価値を生み出すために管理する動的な方式である。従って、投資管理の観念がまず最初に来て、中心になる。しかしサービスマネジメントには検討すべき、ITIL® V3で傑出する2つの側面がある。
• ビジネスサービスマネージメント
• 内部・外部のビジネス顧客の要求に合致するために必要な全てのプロセスとインフラストラクチャを管理する
• ITとビジネスサービスを統合されたバリュー・ネットワークに統合する
• ITとビジネス双方に正しい活動を導く明確な評価基準を提供する
• ITサービスマネジメント
• ITIL® V3とは「サービスという形で顧客に価値を提供する特別の組織的な能力」である
• この定義により、ITとビジネスが技術とコストについて議論することから、サービスと価値について議論するようにシフトすることになる
初めてサービスポートフォリオを作るのはITポートフォリオをどう確立するかに似ていて、以下のような質問に答えることになる。
• なぜ顧客はこれらのサービスを購入するのか?
• なぜ顧客は私たちからこれらのサービスを購入するのか?
• 価格設定モデルや課金モデルは何か?
• 私たちの強み、弱み、優先度、リスクは何か?
• リソースと能力をどう割り当てるか?
これらの質問に答えることは、ITが提供するサービスの焦点を技術やコストからサービスの価値に変更することにも役立つ。図7に示すように、サービスポートフォリオの基本プロセスは、サービスポートフォリオを作るときのプロセスと同様である。

 

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     (図7 サービスポートフォリオプロセス)

 

そこでは棚卸しを行ってサービスを価値と課題に基づいて優先順位付けする。
サービスポートフォリオ(パイプラインとサービスカタログ)内のサービスの構成は定義されたビジネス要求に合致するときのサービスが提供する価値に基づく。ビジネスまたはIT内の新規の投資の理由は3つの分野のいずれかによる(図8)。
• ビジネスを実行する:サービスレベルの維持が中心
• ビジネスを成長させる:提供するサービスのスコープを膨らませる
• ビジネスを転換する:ビジネスを新市場に移行する
従来のIT部門は「ビジネスを実施する」分野に注力しがちであるが、そこが彼らが最も心地よく感じ経験豊富な分野だからである。より将来を見据えたIT組織は、他のビジネス組織が同様に行わなければいけないように、ビジネスを実施するだけでは市場でのポジションを維持できず、成長の機会を探して彼ら自身が変わる必要があることに気付いている。


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              (図8 サービス投資分野)

 


プロジェクトポートフォリオ管理がITプロジェクトをより顧客に密接なものにしたように、サービスポートフォリオ管理はITのサービス提供全体をより顧客に関連したものにする。サービスポートフォリオの観点からプロジェクトポートフォリオ管理の目的を再確認しよう。
• ITサービスポートフォリオのすべてのサービスを把握する
• 各サービスの「大きな絵」を描き、全体としてのポートフォリオに新たな洞察を得る
• 変化するビジネスや市場の状況に応じて、どのサービスを追加すべきか、変更すべきか、キャンセルすべきかを検討することを支援する
• 組織の有限なリソースと能力を効率的かつ効果的に活用する
サービスポートフォリオのサブセットであるサービスカタログは、提供中または提供予定のサービス(例えば販売可能であるがまだ販売実績がない)について記載している。パイプラインのサービスは、開発中か開発を意図したか、つまり組織に通達してリソースを割り当てたかしたものである。あらたに提供を決めたサービスはサービス設計フェーズに移行する。既存サービスはサービスカタログ内で更新され、廃止が決まったサービスはサービス移行を開始する。

 

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    (図9 サービスポートフォリオとサービスカタログ)

 


サービスポートフォリオ管理は、ITのプロジェクトポートフォリオ管理と合わせて、実際の環境で提供可能なまたは導入可能なサービス、これから投入を予定しているサービスが、今日のまたは将来のビジネスニーズに合致することをどのように保証できるか、ということである。サービスポートフォリオを常にレビューし更新することは、ITプロジェクトポートフォリオにあるプロジェクトをビジネスにサービスを提供する際のコストをレビューするのと同様に重要である。
図10に示すITシステムライフサイクの全体は、プロジェクトとサービスだけでなく、それらのライフサイクルを描いている。サービスポートフォリオはプロジェクトライフサイクルに重なるように描かれているが、プロジェクトの開始時点は、適用の準備が整った後、実環境に適用される前の段階に既存のITサービス要求が再評価されるように設定されている。こうすることで、変更や新規サービスが適用前に認識できるようになる。
プロジェクトでのPMOのように、大きな組織ではサービスポートフォリオオフィス(SPO)を設立し、そこにはITおよびサービスを提供する顧客の双方から代表を入れてサービスポートフォリオを管理することには意味があるかもしれない。

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        (図10 ITシステムライフサイクル)

 

結論


ITプロジェクトポートフォリオはITとビジネスがIT運営委員会を通じて、新しいまたは変化するビジネス要求に合致するプロジェクトの混合を決定するためのフレームワークを提供する。その意思決定の中で、より高い優先度を与えられるプロジェクトもあれば、もはや不要と判断してキャンセルされるプロジェクトもある。ITサプライチェーンは内外の相互関係が複雑な世界でITが効果を発揮するように確立された。それらの関係を管理するためにまたビジネスに提供するサービスが今日的な意味を有しながらタイムリで測定可能であることを保証し、またITは、定義されたビジネス要求に対して提供される複数のプロジェクトに言及することが必要である。ビジネス戦略と目的に緋づいた適切なプロジェクトとサービスに投資することは、ビジネスとITを統合するために重要である。さらに、ビジネスおよびIT双方の代表から構成されるサービスポートフォリオオフィスは、ITサービスポートフォリオが今日的意味を持つように保証するために全体を俯瞰することになる。

 

さらに知りたい方は

 

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著者について

Larry CooperはGPLIの共同経営者である。GPLI は高品質で費用対効果の高いソリューションをITガバナンスおよびサービス管理の領域で提供している。Cooper氏は30年以上、私企業または政府関連機関でソフトウェア開発者またはプログラマアナリスト、オペレーションマネージャ、ビジネスプロセスリエンジニアリング担当、1億ドル規模のプロジェクト管理、ビジネス・技術のディレクタなどの役職を歴任している。さまざまな技術やITサービス管理、プロジェクト管理に関する著作も多い。氏はPMPを含む3つのプロジェクト管理の資格と、ITサービスマネージメント資格、EXIN/ISEBマスタートレーナー、ISO20000コンサルタント資格、itSMF認定トレーナー資格を保持している。
氏はカナダのオタワに妻と2人の子供と伴に居住している。

 

参考文献

1. A Guide to the Project Management Body of Knowledge, pg 6.
2. Ibid. 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ホワイトペーパー][2011年3月 9日配信]

マネジメントの壺コラム
第5回: ITのサービス化の流れの中で、サービスマネジメントは最先端をゆく
執筆:鈴木 寿夫 

古くからあるサービス業、例えばホテルや金融サービスでは、サービス提供における品質改善の取り組みがなされ、顧客満足度をいかに向上するかを常に意識したサービス改善が行われてきました。一方、IT業界ではどうしてもサービスという観点ではなく、システム開発といったモノ作りであったりシステム管理や技術管理という観点であったり、目の前にあるインフラストラクチャやアプリケーション、テクノロジに大きな関心があったように思います。確かに技術の進化のスピードは速く、ITテクノロジは大変興味深いですね。

しかし、時代はクラウドサービスに代表されるようにIT業界にもサービス化の流れの勢いが増しており、この大きな流れは止めることはできないと思います。クラウドサービスにおいては、ハードウェアのようなモノの所有が移るのではなく、サービスを利用するという考えになりますので、有形のモノではなく無形の価値が提供されることにフォーカスしており、まさにサービスの考えがそこにあるのです。

 

といっても、クラウドサービスがメジャーになるずっと以前からITIL®はITサービスマネジメントのベストプラクティスと言われていました。特にITIL® v1の前身となったプラクティスはサービスレベルマネジメントについて執筆されたもので、v1が発行された1980年代後半より前から"サービス"という言葉が使われ、ITシステムにおいてもサービスレベルマネジメントについて考える必要があると言っていたわけです。

 

そんな古くからITにおいてシステムの観点ではなくサービスの観点で考えなければいけないという発想をしていたことには、ほんとうに驚かされます。 では、サービスの観点とは何でしょうか?簡単に言ってしまえばサービスの観点とは、顧客フォーカス、ユーザの立場にたって考えることをいいます。IT内部の視点ではシステムの観点になりますが、ITをユーザ側からの外部の視点でみたらサービスという側面が見えてきます。

 

そして、IT業界においては他のサービス業であるホテルや金融サービスよりもサービスマネジメントの考え方が入ってくるのが比較的遅かったため、サービスの観点や、サービスマネジメントについてはかなり遅れているように思います。ITIL® v2が日本で普及し始めたのが2003年になりますが、本当にそのITSMの本質を理解している人は少なかったのではないでしょうか?

 

なぜならば、「システム運用管理のフレームワーク」というメッセージが伝えられ広く認知されたのですが、ITサービスマネジメントというITはサービスであるという本質的なことがあまりクローズアップされなかったからです。それが、ITIL® v3になりサービスライフサイクルの観点が鮮明になるとともに、設計/開発、移行、運用という全体を、横串を通してサービスとして管理しなければいけないということが明確にされたことで、ITIL® v3は真のITサービスマネジメント(ITSM)、もしくはビジネスサービスマネジメント(BSM)のベストプラクティスとして認知され始め、価値を感じてもらえるようになったのではないかと思います。

 

そして、IT業界においてはサービスマネジメントの取り組みが遅れている分、またグローバリゼーションとクラウド化の流れも加速し、世界中でサービスマネジメントに対する研究開発投資が多くなってきているようです。さらに、サービスサイエンスとして、さらなる発展が見込めるこの分野は、まさに時代の最先端であると言っても過言ではないと思います。 ITIL® v3は、サービスマネジメントの考えと合致しており、今後のサービス化の時代においては、必須の知識になることは間違いないのではないでしょうか。

 

 


 

鈴木 寿夫 (すずき としお)

DIG2ソリューションズ株式会社 代表取締役
itSMF Japan SLM分科会 副座長


ITIL® Expert / ITIL® Service Manager, ITIL® Intermediate SOA/PPO/RCV/OSA/MALC, ITIL® Practitioner IPRC, COBIT Foundation, PMP®

1993年日本ディジタル イクイップメント コーポレーション(現日本HP)入社。フィールドエンジニアから、教育研修ビジネスの立上げ、運用アウトーソーシング、ITサービスマネジメント認定教育ビジネスのリードを行う。
2008年12月DIG2ソリューションズを設立し、ITサービスマネジメントの教育およびコンサルティングを行い、お客様のITサービスマネジメントの実践を支援している。



[ITIL(R)][2011年2月28日配信]

マネジメントの壺コラム
【ホワイトペーパー-3】 ビジネスにとってのITIL®の利点

米国グローバルナレッジが発表しているホワイトペーパーの翻訳版をご紹介します。

ホワイトペーパーはPDF形式でもご覧になれます。「資料ダウンロード」ページよりご覧ください。

 


 ビジネスにとってのITIL®の利点

 

グローバルナレッジとHDIによる共同調査

 

調査分析:

Hank Marquis, 元ビジネスサービスマネージメント・ディレクタ/グローバルナレッジ

Cinda Daly, 業務内容ディレクタ/HDI

Greg Timpany, マーケティング調査上級マネージャ/グローバルナレッジ

 

調査設計:

Greg Timpany

Jenny Rains, 調査分析担当/HDI

 

要旨

IT業界には、ITインフラストラクチャライブリ(ITIL®) の実践度合いや重要度が下がっていると信じる人がいる。しかし毎月20,000名もの人がITIL®資格を取得している(IT資格試験を提供するEXINによる)ことを鑑みるとITIL®の重要度は継続しているというのは明らかである。グローバルナレッジとHDIITIL®がビジネスにもたらす利点を探るための調査プロジェクトを実施した。

 

この調査の結果、これまでITILの利点と認識されていたことに対する反論や、成功に対する新しいパラダイムを示唆することになった。以下のような問いに対し、米国や他国の人々がどのように回答したかを説明することになる。

ITIL®を活用したITSMの成功のためにCレベルのマネージメントのコミットが必要でしたか?

ITIL®の活用はサービス/ヘルプデスクだけで使われていますか?

多くのベンダやコンサルティング会社が喧伝するように、ITIL®の主要な利点はコスト削減ですか?

業界には数多くのITIL®の利点に関する調査報告が出回っており、過剰な情報量に感覚が麻痺しているかもしれない。本調査が他の調査と異なるのは、調査結果が実際にITIL®を活用してITSMを実践している人々からの回答の上に成り立っていることである。本調査は特定のツールに対する偏見はなく、特定のコンサルティング会社に言及するものでもない。IT技術者により報告された、ITIL®を活用したITSM実践により期待できることの客観的な検証結果を本調査は提示している。

 

 

調査結果について

この調査の回答者群は、ITIL®を活用したITSM実践者のサンプルである。回答者は(米国)国内または海外企業に勤務する人達であり、40%は従業員数10,000人以上の企業に勤務している。約半数(52%)ITサービスマネージメント(ITSM)分野を主要業務としており、60%IT部門のマネージメントまたは監督する立場に着いている。全員がIT関連サービスを提供しており、50%以上はより規制が厳しい分野(政府、教育、医薬、法務、金融)関連に勤務している。

 

52%もの回答者が自身の役割または部門を「ITサービスマネージメント」である、と選択していることは興味深い。これはITSMが企業のIT組織構造に統合されていることを示している。調査結果によれば、ITSMはすでにメインストリームになっていて、単なるプロジェクト(12%はこう回答している)やサービス/ヘルプデスク業務(18%)ではなくなってきている。

ITSMIITL®が成熟していることを示す別の指標として、導入され、または計画されているプロセスに関連した調査結果がある。ITIL®は未成熟なため、インシデント管理および変更管理がITSMでもっとも伸展する分野と捕らえるのが一般的だった。しかし、調査結果を見ると、インシデント管理については63%、変更管理については53%が既にプロセスを確立していると回答している。下掲の図1に示すように、上位3つのITIL®プロセスの中で、問題管理(組織の成熟とコミットメントが必要なプロセス)は最も多くの企業が導入中(24%)または導入を計画中(24%)である。さらに43%が現在ITIL®問題管理プロセスを導入済みという数字を加えると、回答者の91%は導入済みまたはすぐに導入予定、ということになる。


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                       (図1)


上位3つの導入されたITIL
®プロセスの中では問題管理が最も伸展する分野である、ということ以上に興味深いのは、要求実現(27%)とサービスカタログ管理(26%)という、顧客満足やITサービス提供に関連する分野が伸展していることである(図8参照)。ITIL®のインシデント管理、変更管理、問題管理が上位に来る一方、各ITIL®プロセスは全ての回答者に利用されている。 企業のITITIL®が以下に認知され統合されつつあるかということを示す別の指標として、可用性管理とキャパシティ管理が次に計画フェーズに入るという回答が多いことが挙げられる。回答者の38%は可用性管理を導入しようとしており、37%はキャパシティ管理を導入しようとしている。これらのプロセスは非常に成熟した一握りの組織にしか導入されないといっている評論家もいる中で、この結果はとても面白い。ITIL®が「成熟した」証左かもしれない。明確でないのは、ITIL®インシデント管理や変更管理が成し遂げられたということは、問題管理・可用性管理・キャパシティ管理のための準備が成し遂げられたということなのかという点である。企業がITサービス提供を安定化するとき、実行し反応する状態から創造し変化する状態にシフトできる。

これまでの通説

ITIL®/ITSMの導入では、Cレベルのマネージメントのコミットメントがなければ成功しえない、というのが通説であった。この見識はおそらく、コンサルタントが6桁規模(日本円で1千万円以上)のソフトウェア・ソリューションや長期のコンサル契約を獲得するときのものを持ち越しているからかもしれない。しかし調査によれば、Cレベルのマネージメントのコミットメントがなくても成功した回答者は多い。実際、CIOCTOの関与があったと答えたのはわずか39%であった。

もしCレベルのマネージメントのコミットメントがあった場合には、ITSMプログラムの焦点が変わることも調査結果は示している。例えば、コミットメントがあった集団は「リソース配分のバランスをとる」ことが、コミットメントがなかった集団に比較して「大変重要」と回答している(47%33%)。さらに、コミットメントがあった集団は、プロセスを定義するのに他のグループを巻き込む傾向や、成功の判定基準を活用する傾向が強い。

Cレベルのマネージメントのコミットメントは、全員にとって必須のものではないが、一方で回答者の71%が管理職の全般的な支援が必須であると回答している。換言すれば、管理職のコミットメントは必要だが、Cレベルのコミットメントは必要ではない、ということである。

他の従来からの見識として、重要性の順番で、ビジネス/売上拡大→コスト管理・削減→品質向上→敏捷性・反応性改善がITIL®/ITSMの主要な利点とされていた。しかし、この調査によれば、顧客満足、敏捷性、作業負荷のバランスが利点の上位に位置づけられ、コスト削減や品質向上は上位に来ていない。

2は管理職のコミットメントが利点に関する期待値を変えるかを示している。上位2つのITIL®の利点は、IT反応性の改善とエンド顧客の満足度である。支点の位置にあるのがIT作業負荷改善であり、3番目の最も共通する利点となる。Cレベルのエンゲージメントの有無によって、コスト削減が4番目または5番目に来ていることに注目して欲しい。

これらの結果を見ると、多くのITIL®/ITSMベンダがコスト削減が主要な利点である、として売込みを掛けていることが面白く見える。5年以下といった短期間では、コスト削減は主要な利点になり得ない。しかし長期間では、投資を回収した後に効率向上によりコスト削減効果が得られることは当然期待できる。いずれの場合であっても、上位2つの利点は、IT部門を顧客への反応性が高い組織-真のサービスプロバイダ‐に転換することをもたらす。

 

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(図2)
 

主な調査結果

どのような支援が助かったのか、実践した人達が選んだ結果が貢献成功要因に現れている。これらはITSM導入を成功裡に行うために開始時に求められるもの、と考えて欲しい。様々な要因の重要度順に並べると上位6位までは以下のようになる。

貢献成功要因の上位6

1. 上位管理者の支援

2. 現場レベルのチームワーク

3. ITIL®や他のベストプラクティスのトレーニング

4. 組織内のコミュニケーション

5. 組織的な賛同

6. プロセスのオーナー

ITIL®は測定可能な利点を提供する。しかしどのような利点を提供するかを約束する際には、利点が管理層のコミットメントに基づいて変わることに注意した方がよい。Cレベルの支援がなくてもITIL®で成功することは可能だが、どの利点に焦点を置くかは変わってくる。賢く選択すべきである。調査によれば、Cレベルの支援がある組織では、ITサービスの反応性向上が主要な成功度合いになる。

ITIL®ガイダンスを使ってITサービスマネージメントを実践することと、ITの課題を解決するためにソフトウェアを使うこととは異なる。ツールを使うことでもたらされる利点と、ITSMを実践することによってもたらされる利点とは異なるということを理解することが重要である。ソフトウェア単体では戦略にはならない。むしろソフトウェアは戦略とチームがタスクを完了することを支援する。予想したとおり、回答者はITIL®に倣ったソフトウェアや支援ツールが重要であると思っており、51%がソフトウェアに言及すると(インシデント、ナレッジ、CMBD等)が成功要因であると回答している。興味深いことに、外部のコンサルティングが成功要因と回答しているのは19%に過ぎない。

ITIL®に基づくITSMIT部門を顧客中心のサービス部門に転換するようだ。ビジネスに対するITIL®の利点は以下のように順位付けられる。

実践により実現したITIL®の利点上位11

1. ITサービス反応性の向上

2. エンド顧客の満足度

3. IT作業負荷に関する改善

4. ITサービス提供のコスト低減

5. サービスインシデントの減少

6. サービスのばらつき低減

7. ITサービスに対する要求の測定

8. ITプロジェクト成功率の向上

9. ITサービスカタログ利用の増加

10. ITフォーキャストの精度向上

11. ビジネスの利益率や売上

 

回答者のプロフィール

調査参加者の大半はITサービスマネージメント(52%)またはサービスデスク(18%)を主担当としており、マネージャまたはディレクタの肩書きを持つ。組織のITSM導入に際して上位階層として参加して直近18ヶ月はそのことに大半の時間を割いている。回答者の多くはITIL®資格を保有している。

回答者とITIL®資格の関係

回答者の80%以上はITIL®資格を保有している。さらに三分の一は同様にITIL®資格を保有する部下がいる。ITIL®資格を保有する回答者の三分の二はひとつのレベルのITIL®資格を保有している。71%は追加のIITL®資格取得を目指している、と回答している。ファンデーション・レベルの資格保有が最も多く、30%V2を、72%V3またはV2-V3ブリッジ資格を保有している。中級・上級資格に関しては、保有者数が格段に少ない。回答者が所属する組織の58%が、何らかの形でITIL®資格を保有すること(最低でも一部の現場社員に)課している。(図34参照)。

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(図3)

 

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(図4)

ITIL®への取り組みレベル

調査では、5つの主要なITIL®カテゴリ毎(設計/調達、戦略/サービス定義、運用、プロジェクト管理、移行/導入)に、ITIL®への取り組みレベルをリードしている、関わっている、まったく関わっていない、のいずれかで回答させている(図5参照)。運用では37%もの回答者がリーダーシップを発揮している。一方で、設計/調達ではリーダーの役割を果たしたのは4人に一人に過ぎない。しかし、全般的には、全てのITIL®プロセスで回答者の80%以上がリードしているかまたは関わっているレベルでITIL®に取り組んでいる(但し、設計/調達は例外で72%に留まる)。

資格を保有している部下がいれば、設計の大半を部下に任せている。同様の傾向は戦略/サービス定義、運用でも見られる。

 

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(図5)


組織内での立場・役割

回答者の半分以上(52%)がITサービスマネージメントを主要な業務とし、マネージャまたはディレクタの立場にある。ITサービスマネージメントに従事する人はV3の資格を保有している人が多く、戦略/サービス定義、運用、移行/導入の分野でリーダーシップを発揮している(図6-7参照)。


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(図6)

 

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(図7)

重点分野とオーナーシップ

ITサポート部門がITIL®プロセスのどの部分にどの程度関与したか、にも回答してもらっている。またどのグループがITサービスマネージメント戦略の全体を司っているか、ITIL®に関与する人達の中で最も職位が高いのは誰か、にも回答してもらっている。

 

ITIL®プロセス導入

インシデント管理、変更管理が回答者の50%以上が実践しているただ2つのプロセスである。インシデント管理は調査参加組織の63%に実践されている。実践率が低いのはサービカタログ管理/サービスポートフォリオ管理、可用性管理、キャパシティ管理、財務管理、ITサービス継続性管理であり、25%未満の実践しかない。16全てのプロセスを導入しているのは10%未満しかいない。

いくつかのプロセス(要求実現、サービスカタログ管理/サービスポートフォリオ管理、構成管理、ナレッジ管理)は導入の段階で平均20%以上の進捗率である。一方、計画の段階では、可用性管理・キャパシティ管理の導入を検討している、という段階である(図8参照)。

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(図8)

 

 

誰がITIL®戦略を司っているか?

組織のヘルプデスクやサービスデスクはITSM戦略の開発で主要な役割を果たしており、回答者の68%が戦略開発の役割を担っている。これは「全体としての運用」に続いている。全般的に、サービスマネージャは組織内の他のどの部門よりも、ITサービス戦略に多くの組織を巻き込んでいる(図9参照)。

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(図9)

 

Cレベルの支援

ほぼ半数の回答者が、ITSM導入プロジェクトに関してCレベルの支援があったと回答しており、そこではCIOCTOがプロジェクトのチャンピオンとしての役割を果たしている(10参照)。経営層のコミットメントは成功のための必須条件ではないが、回答者に拠れば、成功への道のりを容易にする効果がある。経営層のコミットメントがあるとITIL®の利点を達成するのがより容易だが、利点自体が変化することになる。Cレベルのコミットメントがあるということは、サービスパフォーマンスの向上やエンド顧客の満足度、ITサービス提供のコスト削減、ITプロジェクトの成功確度の向上により重きを置くことになる。

 

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(図10)

成功要因と得られる利点

ITSM導入にとってどの要素が最も重要か、どの要素が成功に貢献しているか、結果として組織が得た利点は何か、といった質問にも回答を得ている。

重点分野

ITSM導入プロジェクトでは、サービス品質を向上させられることと顧客の期待値をいかに上回るかが主要な焦点である。10人中7人の回答者がこの分野を「大変重要」としている。他の4つの分野は回答者の半分以上が「大変重要」と回答している(図11参照)。

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(図11)

 

成功貢献要因

経営層の支援がITSM導入プロジェクトにとって最も重要な要素であるとされ、71%が「大変重要」と回答している。上級職位の者が実際に手を下すことがなくても導入が成功することはあるが、支援があることによってより円滑な進捗が期待できる、と回答している。他の要素として、組織内のコミュニケーション、現場のチームワーク、ITIL®ベストプラクティスに関するトレーニング、が挙げられる(図12参照)。

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(図12)
 

成功管理

ITSM導入プロジェクトにCレベルの支援が得られた場合、ITサービス反応性の向上を見せることができたかどうかが、成功したかどうかを評価する重要な要素になっている。上級職位の支援を得られた場合には84%の回答者がそう答え、得られなかった場合には68%がそう答えている。さらにエンド顧客の満足度とIT部門の負荷バランスの向上を測定できることがスコアカードにとって重要である(図13参照)。

図13.jpg (図13)

 

第三者サービス期間の役割

使用可能にするプロセスで第三者ベンダが重要と答えたのは半分以下である。28%ITSM導入にとってこれらのベンダが大変重要と回答している。ただこのような感想が全てのサブグループで統一されているわけではない。例えば、V3資格取得者は非取得者の2倍、これらのベンダが重要と回答している(32%に対し16%、図14-15参照)。


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(図14)


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(図15)

 

サービスマネージャ職の回答者は、第三者ベンダの活用に関して他の役割を担う回答者と異なる見方はしていない。Cレベルの関与の有無もベンダの価値に関する回答には無関係で、組織の規模もベンダの重要性に関する見方に関係はない。

ビジネス上の、または顧客とのコミュニケーションを支援するためにベンダを活用するのは対して意味がないと回答した人達に対し、ベンダは重要と思っている人たちはベンダを利用する確率が2倍ほどになっている(22%10%)。ITIL®コンサルテーションの利用にも同様の関係が見られる。ベンダが重要と思っている人はそうでない人よりITIL®コンサルタントを活用する確率が2倍である(43%20%)。ベンダを高く評価している人ほどプロフェッショナルサービス(監査や導入)、システムインテグレーション、SaaSやヘルプデスク監視を含むアウトソースサービスを採用する確率が高い。

ITSM導入プロジェクトでは、ITIL®ファンデーショントレーニングが最も活用されている第三者サービスである。回答者の71%の組織で活用されており、次に活用されているITIL®コンサルテーションの31%に比べて、2倍以上を占めている(図16参照)。



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(図16) 

最後に、ITIL®プロセスに合致したサポートツールの重要性については、大部分が重要、と回答している(図17参照)。

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(図17)

回答者の特徴

回答者が勤める組織またはIT部門の規模は大から小まで様々である。回答者が属する業界も多岐に渡る。

組織規模

回答者の60%は従業員数10,000人未満の組織に勤務している。大規模な組織(従業員数10,000人以上)では、小規模な組織よりもITIL®プロセスに従う傾向がある。これは大組織の方が専任のサービスマネージャ職を置くことが多いからかもしれない(図18参照)。

 

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(図18)

IT部門の規模

回答者の40%は従業員数175名以下のIT部門に勤務している。大規模IT部門(従業員数3,001名以上)に勤務する回答者は19%である(図19参照)

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(図19)

 

ITサービス提供コストの削減は大規模組織(3,000人以上のIT業務従事者)で重要視されているのはすぐにわかるが、中規模組織(176-500人のIT業務従事者)でも同様の傾向が見られる(図20参照)。

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(図20) 

主な業界

6つの業界で全体の52%を占める。具体的にはIT関連業界(14%)、健康関連サービス(14%)、連邦政府機関(9%)、州または地方政府機関(8%)、教育(8%)、保険・不動産・法務(6%)、である。政府関連を除く、回答者の組織の売上規模は年間1億ドルから10億ドルである(図21参照)。

 

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(図21)


グローバルナレッジについて

グローバルナレッジは世界のIT/ビジネストレーニングのリーダーで、基本から資格取得や上級向けのコースなど1,200コースを提供している。特にCiscoMicrosoftAvayaVMwareRed Hat、ビジネスプロセス改善、リーダーシップ開発などの分野に力を入れている。トレーニングはトレーニングセンターや顧客先、インターネットで提供しており、いつ・どこで・どのようにトレーニングに参加するか、顧客が選べるようになっている。

1995年の設立以来、全世界に1,300名以上の従業員を擁し、ノースカロライナ州ケアリに本社を構える。会社はニューヨークの投資会社、Welsh, Carson, Anderson, and Stoweに所有されている。詳細は以下を参照されたい。

www.globalknowledge.com

 

HDIについて

HDIITサービスおよび技術サポートに関する会員制のグローバルな組織で、業界では著名な資格認定/トレーニング機関でもある。国際的な業界の有識者や実践家の指導の下、ITサービスや新技術の技術支援、べストプラクティスのリソースを提供している。HDIは会員に対して広範なリソースのリポジトリやネットワーキングの機会を提供し、業界最大のイベントであるHDIアニュアルコンファレンスアンドエキスポを開催している。コロラド州コロラドスプリングスに本部を置き、複数言語、複数の国でトレーニングを提供している。詳細は以下を参照するか、+1 719.268.0174に電話をいただきたい。

www.ThinkHDI.com

HDIUnited Business Media LLC.の一部門であるUBM TechWebの一事業部である。

 

回答者ソース

回答者のソースはグローバルナレッジおよびHDIのハウスファイルである。そのファイルにはHDIの顧客データベース(総数55,000件)またはグローバルナレッジまたはその関連会社のITILトレーニング受講者(総数5,665件)のITプロフェッショナルが含まれる。

データは2010815日から910日までの間に収集された。この間に358名がオンライン調査に参加した。

回答者は種々のバックグランドを持つが、必ずしもITILを活用している組織を全般的に代表しているとは言えない。

358人の回答者があったが、+/- 5.18%の誤差を想定し、95%の精度とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



[ホワイトペーパー][2011年2月22日配信]

マネジメントの壺コラム
【ホワイトペーパー-2】 ITインフラストラクチャライブラリ(ITIL®)を使ったITサービスマネジメント概要

米国グローバルナレッジが発表しているホワイトペーパーの翻訳版をご紹介します。
ホワイトペーパーはPDF形式でもご覧になれます。「資料ダウンロード」ページよりご覧ください。

ITインフラストラクチャライブラリ(ITIL®)を使ったITサービスマネジメント概要

 

 

はじめに

IS部門のマネージャならITインフラストラクチャライブラリまたはITIL®という言葉を耳にしたことがあるだろう。IT技術への投資は、正しく管理されていればこそ、企業の競争力を高める可能性がある。最新版のITIL®では、事業マネージャにもITマネージャにも、IT投資によって価値を生み出すための具体的なガイダンスを提供している。日々の企業活動にとってITサービスの重要性が増すにつれ、ITIL®はITマネージャが少なくとも考慮すべきものになっている。

 

本書は、IT技術に興味のあるマネージャにITIL®を紹介することである。本書を読むことによって、ITIL®プロセスを知り、組織のどこにITIL®を適用できるかがわかるようになる。ITIL®の利点を特定し、組織のどこにITIL®を適用したらどのような効果があるか、ビジネスケースを想定することができるようになる。その目的を達成するために本書はITIL®とは何か、どのような効果があるかを説明し、ITIL®を適用することで他者が達成した成果を紹介する。読み進むにつれITマネージャや事業部門が直面する課題を知り、ITのコモディティ化がもたらす優れた運用のための戦略的な効果を学ぶことになる。

ITIL® V3の歴史 


ITIL®(ITインフラストラクチャライブラリ)は書籍の集合である。最新版(バージョン3)は5巻からなり、2007年にリリースされた。

その前のバージョン(バージョン2)は2001年にリリースされたが、7巻構成であった。さらにそのまえのバージョンは1980年代後半まで遡る。どのバージョンかに関わらず、ITIL®はITサービスを管理するための進化し続ける統合的なアプローチを提供してきた。サービス毎に管理するという概念は比較的単純なものであり、ITサービスプロバイダが企業や消費者に付加価値を提供するために、ITサービスプロバイダはサービス提供の最初から最後まで注力し続けなければならない。そのためにITサービスプロバイダはサービスを提供する消費者がサービスを享受する市場についてよく理解しておかなければならない。通常の企業の視点で言うと、IT部門は顧客やユーザについて理解するだけではなく、企業が製品を提供している市場についても理解しなければならない、ということである。 ITの価値は企業と市場との境界で生まれる。ITサービスは間接的な価値をもたらす、即ちITサービスがあることでビジネス顧客や消費者と企業内のエンドユーザーとの対話が促進される。ITサービスマネジメントの導入の理由はたくさんあるが、主要な動機はITのコモディティ化にある。ITのコモディティ化とは、今日のビジネスがよりITサービスに依存するようになっている、ということである。ハードウェアやソフトウェアのコストが下がるにつれ、相互接続の容易性は飛躍的に拡大する。従来のIT組織にとっては、多様な選択肢が登場している、ということになる。多くのビジネスが、かつてはIT部門に依頼していたようなシステムを、自力で調達しインストールすることが可能になっていることを意味する。多くの組織ではそういった臨時のシステムは従来のビジネスITシステムに接続されることになる。その結果、複雑さが増すだけの、非常に複雑な環境ができてしまうことになる。

 

多くの場合、ビジネスはITサービスプロバイダが引き受けるだけでなく、ビジネスのIT部門や技術に対する要求は増加する一方である。変動性と称されるように、ビジネスがIT技術とより絡みあうようになると、サービスの品質と提供の組み合わせがより限定される。IT部門にとっては、これらの要素の組み合わせが「ITのパーフェクトストーム(究極の嵐)」を意味する。簡単に言うと、今日のITマネージャは複雑さの増加と、低い品質に対する許容値を減らすことで、絶えず増加する複雑さに立ち向かうことになる。IT予算や人員の削減と結びついて、ビジネスにとってもIT部門にとっても勝者がいないという結果になる。

 

よく機能しているITサービスプロバイダがそのビジネスを調整し市場を理解し、効率的にリソースのバランスをとっているかについて、ITIL®は説明している。これらの理由から、ITIL®はITサービスの提供を管理するためのベストプラクティスとしてデファクト・スタンダードになりつつある。ITIL®はさらに ISO/IEC 20000またはISO20Kといった国際標準規格によってもサポートされている。両者の組み合わせには、ITマネージャがビジネスを調整しITのコストを管理しITサービスの質を改善しつつリソース配置のバランスをとることに対し、事実上、全てを提供している。ビジネスはITシステムやIT部門と無縁では成り立たないので、技術系・非技術系両マネージャにとって両者が協力しあわなければならないと理解することは重要である。ITIL®はそのようなロードマップを提供する。

今日のITの状況


歴史の岐路に立っている今日、ITIL
®の重要性について異を唱えるものはいない。ITサービスの利用者(ビジネス顧客やユーザ)と提供者(IT部門)との断絶は顕著である。最近の調査でも、両者の間には深い溝があることが明らかになっている。2008・9年の調査ではITサービスに関するビジネス顧客やユーザの声が、以下のような結果になって表れている:

• 組織の21%がITを「高価な間接費」と見ている

• 45%がITを「必要」と見ている

• 32%だけがITを「価値ある戦略パートナー」と見ている

• 37%は「ビジネスがITによって阻害されている」と見ている

• 14%は「ITがビジネス進歩の一部とは思わない」と答えている

当惑するような現実であろう。しかし、利点がないわけではない。

 

別の調査によれば、多くの場合IT部門は機能していないという結果が出ている:

• ITに$1使うごとに60¢はインフラストラクチャに費やされている

- 20%未満しか要員や社員のパフォーマンスを管理していない

• 10件の停止のうち8件は誤った交換による

- 問い合わせ電話の70%は「自ら招いた結果」である

• 全ITプロジェクトのうちたった20%しか成功しない

- 30%は大きな損失を出して、または予定の効果をもたらさぬままキャンセルされる

• 25%のハードウェア・ソフトウェアは決してインストールされない

- 67%のIT部門はソフトウェア資産を管理していない

• 90%の中規模IT部門は手動のプロセスを使っている

- ほとんどのIT部門は平均6つのスタンドアロンのITソフトウェアツールを使っており、それぞれが相互作用することはない

本書は懸命に仕事をしているIT部門の専任者を非難することを目的にはしていない。また、これらのIT部門を支えている事業部門の投資判断に疑問を呈することが目的でもない。しかし、今日のIT部門には明らかなコミュニケーション不足と誤解が存在していることは明らかにしたい。

 

ITIL®の目的は、このギャップを埋めるソリューションを提供することになる。ITIL®は、IT部門がビジネスニーズを理解するために、事業部門と手を取り合うことを求めている。逆に言うと、事業部門は、IT部門を適正に導き、刺激しIT活動に投資するためにIT部門とより密接な関係を築くことをITIL®は求めている。アウトソーシングこそが解決策と考える事業部門は多いが、それは誤りである。アウトソーシングはIT部門全体または、部分を別のプロバイダに移管するに過ぎない。課題は依然として残る。ITIL®はITサービスプロバイダが事業部門を支援することも、企業全体をサポートすることも、ITサービスをプロバイダにアウトソースしたとしても、同様に効果を発揮する。

 

 

競争力を追い求めることで「良い」から「最良」へ:ITSMからBSM


IT
サービスマネジメント(ITSM)とはIT組織内でワークフローと活動を管理することを表す用語である。ITIL®は世界的にデファクト・スタンダードとなっているITSMソリューションである。ビジネスサービスマネジメント(BSM)は、ITSMが成功するための戦略的方向性を示す用語である。BSMITSMも、アプリケーションを管理することでITリソースを管理することから、ワークフローの管理、ビジネスの成果の管理へと繋がる連続した管理のことである。

 

技術マネジメント

通常、技術マネジメントはIT組織の成熟のための最初のフェーズである。技術マネジメントは通常、技術サイロ、組織の自由度と特別なタイプの技術(例えばネットワーク、ソフトウェア開発)を管理するために必要なリソースに基づくバイアスを含む。技術マネジメントは技術に焦点を当てる。断絶した技術者の性質に起因する散在するマネジメントビューとなって現れることが多い。そのためITの技術的な問題解決が強調されることになる。さらに不要な投資という結果になることがある。この技術マネジメントステージで行われるITに対する投資の価値は、一般的にはビジネスへの価値としては最小限にしか顕在化せず、IT組織への価値だけが顕在化しやすい。

 

 

アプリケーションマネジメント

アプリケーションマネジメントは、IT組織が技術視点からアプリケーション視点に進化するときの自然の流れである。この観点から、ITプロバイダの成熟はビジネス顧客やユーザにアプリケーションを提供することを検討するところから始まる。これらのアプリケーションはやがて企業に価値を提供することになる。アプリケーションマネジメントは技術マネジメントの進化形である。個別の技術サイロと組織を、もう少し縫合するアプリケーションサイロで置き換えることになる。一般に、アプリケーションサイロは複数の技術サイロやときにはIT組織の境界を越えることになる。マネジメント設計の焦点はアプリケーションの要求仕様に当てられる。マネジメントビューを限定的に統合し、アプリケーションの課題解決が中心になる。このフェーズのIT投資の主要な価値は、アプリケーションのビジネス顧客やユーザに顕在化する。

 

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ビジネスマネジメント

ビジネスマネジメントはITIL®が主に注力する分野である。簡単に言うと、ゴールはIT投資を企業と市場の成功に直結するように管理することである。ビジネスマネジメントはITサービスとビジネスプロセスから成り、全ての技術と組織の境界を越える。プロセスの統合と自動化に焦点を置くITサービスマネジメントは、マネジメントと設計を先導する。ビジネスが直面するサービス上の課題にIT組織は注力することになる。この時点のIT投資は市場に対して明確で企業にとって競争力として顕在化する。

 

ITIL®の構造がどのように企業の成功に貢献するのか


ライフサイクルという意味で、ITIL
®は全ての共通のIT活動を表現するための体系を示す。ライフサイクルという比喩を使うのは、ITIL®の様々なプロセスと機能がどのように使われるべきなのかを理解することをたやすくするためである。体系として、ITIL®には5つのコアトピック、サービスオペレーション、継続的サービス改善、サービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジッションがある。これら5つのコンピテンシ領域(ITIL®の各巻に対応している)の目的は、ITサービスマネジメントをカプセル化し、アプローチし易くし、さらに利益を達成し易くすることにある。

 

サービスオペレーション
サービスオペレーションにはIT組織とIT組織が提供するサービスを継続的に管理・サポートするために必要な全ての活動が含まれる。サービスオペレーションには良く知られたIT活動(例えば、サービスデスクまたはヘルプデスク)が含まれる。またイベント管理、インシデント管理、アクセス管理、問題管理プロセスなども含まれる。これはITIL
®
ライフサイクルのアプローチの好例である。イベントとはIT組織が注目すべきインフラストラクチャ上で発生する事象(例えば、システムからの通知など)のことである。イベントがインシデントになることがある。インシデントはITサービスを中断させてしまうような計画していない中断と定義される。アクセス管理では顧客やユーザの権限管理といったトピックを検討する。問題管理は根本原因を取り除くことで障害を解決することに注力する。併せて中心となるプロセスはイベントの管理から問題解決まで広がり、ライフサイクルを表現することになる。ビジネスにとっての価値は、よりプロアクティブなIT組織である。加えて、IT組織内で起こる活動についてのコミュニケーションと情報が、ビジネスに生じる。全てのITサービスについてひとつだけのコンタクトポイントに集約することによって、サービスオペレーションはビジネス顧客やユーザの生産性を劇的に向上することができる。ライフサイクルという観点でのサービスオペレーションの成果物は、サービスパフォーマンス報告である。

 

継続的サービス改善
継続的サービス改善CSI (Continual Service Improvement)では、ITサービスのサポートおよび提供の効率、効果、経済性、価値を向上するための方法を検討するためにサービスオペレーションによるオペレーション評価基準を使う。ビジネス顧客やユーザと協働する中で、ITマネジメントはオペレーション評価基準や洞察を向上するための提案に転換される。CSIはビジネスから、またはビジネスへの入力を提供したり収集したりして、その情報をサービスストラテジに供給する。この非常に重要な機能によって、ビジネス顧客やユーザはIT組織からの提案を検証することができる。IT提案が相当なリソースを消費する前に、まずビジネスによって吟味される。もしビジネス上の価値を生み出さなければ、改善提案はそこで終わる。この重要な評価によって無駄がなくなりITプロジェクト管理の効率を向上することに貢献できる。またビジネスとITが同調することになり、ITの透明性も増す。ライフサイクルの観点からは、CSIの成果物はサービス改善計画SIP (Service Improvement Plan)と呼ばれる。SIPはやがてサービスストラテジに移行する。

 

サービスストラテジ

サービスストラテジはCSI提案を分析するのに必要な全ての戦略的思考を抱合する。財務管理および需要管理の根本的な概念やポートフォリオとしてのITへのビジネス投資への焦点を含む。サービスポートフォリオ管理の概念はビジネスでよく用いられるバランススコアカードのアプローチとよく親和する。サービスストラテジでは投資対効果といったトピックを検討する。

サービスストラテジの目的は、企業にとって最大の価値をもたらすように限られたリソースをIT組織が使用することを保証することである。サービスストラテジの成果物はサービスレベルパッケージSLP (Service Level Package)と呼ばれ、要求されたサービスの機能や有用性、サービスがビジネスの要求仕様に合致することの保証を含む。

 

サービスデザイン

サービスデザインでは、SLPで定義された新サービスが、新規開発が必要なのか、既存の資産を組みあせて提供できるのかを決定するために、サービスカタログの中に示される能力や、サービスレベルアグリーメント、サプライヤのレビューを含む。これは重複を防ぎコストを大幅に削減するために、非常に重要で貴重な手法である。サービスデザインでは、SLPはサービスデザインパッケージSDP (Service Design Package)となる。SDPには、CSIやサービスストラテジに基づいて開発された有用性と保証を満たすべきキャパシティ、可用性、継続性、セキュリティを含む。SDPはまた、サービストランジッションチームへの指示を含む。サービストランジッションチームは新しく変更されたITサービスへの移行と、コントロールとマネジメントをサービスオペレーションに渡すことに責任を持つ。

 

サービストランジッション

サービストランジッションは組織の機動性を高めるような方法で変更管理を公式なものにする。サービストランジッションの目的はできるかぎりビジネスを中断することなく新しいあるいは変更されたITサービスへすばやく効率的に移行することである。これを確かなものにする主な活動は、インフラストラクチャに変更をリリースするのを管理することと、最終的にITサービスの構成に必要な資産を管理することである。サービストランジッションチームはサービスオペレーションへの円滑な導入と引き渡しを行うことを保証する計画やテストを作成する。

 

ITIL®の利点


ITIL
®を使ったアプローチの成功例は数多ある。以下に、ITIL®を選択した企業からのコメントや引用の一部である。

 

セントリカ(Centrica):「年間2千万ドルのITサービスデリバリコストの削減を達成できた」

オスロ証券取引所(Oslo Stock Exchange):「1999年以降、稼働率100%を維持している」

• DHL:「ITSMの主要プロセスを11ヶ月で導入、20%のコスト削減を達成した」

アバヤ(Avaya):「IT要素ではなくビジネスサービスをマネージするようになった。ITコストは30%削減」

ロシュ(Roche):「検証要件を満たす、統一したグローバルサービスマネジメントを導入できた」

ITオペレーションの観点からITIL®の利点を挙げると以下のようになる。

複雑性の減少

プロジェクトの最適化

• IT資産の効率的管理

迅速性の向上

サービスと組織の標準化

• IT活動とプロジェクトの優先順位付け

重複するプロセスや技術、システムの統合

• IT出費の最適化とコスト管理

規則や法令への準拠

• ITビジネスの生産性向上

• ITサービス品質の改善

サービスチームアプローチ、ベンダー管理、顧客・ユーザ・IT部門とのコミュニケーションの展開

ガバナンスと報告の管理

 

IT組織内で優れたオペレーションの実践に注力することで、またビジネスに与える影響が大きいことに注力することで、結果はWin-Winなものになる。市場でビジネスは伸展し、IT部門はその成功の一部であり有益な貢献者ということになる。

ITIL®ライフサイクルアプローチの組み合わせは、ビジネスとIT4つの主要な利益をもたらす。

 

1. ビジネス環境からの変化への要求に対応できる

2. 調整と価値の具体的な証拠を提供する

3. ITはコストセンターというイメージを打破する

4. ITを改革者、ビジネスを実現する人にする

 

BSMの概念と合わせてうまく構築されたITサービスマネジメントのプロジェクトは、多くの企業が市場で成功することを可能にしてきた。最近の最も素晴らしい実績は、北米の保険会社、リバティミューチュアルグループ(LMG, Liberty Mutual Group)である。24ヶ月間でLMG ITは顧客ロイヤルティ度と顧客離れの問題を調査した。ITSMBSMを通じて、「営業時間外」に実施していたITメインテナンス活動が投資家に悪影響を与えていたことがわかった。より詳細な調査で、多くの投資家はLMG ITが提供するサービスを使って、週末にWebでポートフォリオ管理を行いたがっていた。LMG ITはエンド顧客に利するように活動を再編成したところ、満足度は劇的に向上した。短期間にもかかわらず結果は驚くべきものだった。2006年第2四半期、LMG477百万ドルの四半期売上増加を発表した。この驚嘆の成長を2006331日に発表する際、会長兼社長兼CEOのエドモンド・ケリー(Edmund F. Kelly)は「この財務結果に非常に満足している。売上増は既存顧客の保持と新ビジネスの成長によってもたらされた」と述べた。明らかに、技術分野ではなく市場と顧客満足に注力したITLMGの成功をもたらした。

 

ITIL®で成功するための簡易ガイド


ITIL
®を使ったアプローチの成功例は数多ある。以下に、ITIL®を選択した企業からのコメントや引用の一部である。

セントリカ(Centrica):「年間2千万ドルのITサービスデリバリコストの削減を達成できた」

オスロ証券取引所(Oslo Stock Exchange):「1999年以降、稼働率100%を維持している」

• DHL:「ITSMの主要プロセスを11ヶ月で導入、20%のコスト削減を達成した」

アバヤ(Avaya):「IT要素ではなくビジネスサービスをマネージするようになった。ITコストは30%削減」

ロシュ(Roche):「検証要件を満たす、統一したグローバルサービスマネジメントを導入できた」

ITオペレーションの観点からITIL®の利点を挙げると以下のようになる。

複雑性の減少

プロジェクトの最適化

• IT資産の効率的管理

迅速性の向上

サービスと組織の標準化

• IT活動とプロジェクトの優先順位付け

重複するプロセスや技術、システムの統合

• IT出費の最適化とコスト管理

規則や法令への準拠

• ITビジネスの生産性向上

• ITサービス品質の改善

サービスチームアプローチ、ベンダー管理、顧客・ユーザ・IT部門とのコミュニケーションの展開

ガバナンスと報告の管理

 

IT組織内で優れたオペレーションの実践に注力することで、またビジネスに与える影響が大きいことに注力することで、結果はWin-Winなものになる。市場でビジネスは伸展し、IT部門はその成功の一部であり有益な貢献者ということになる。

ITIL®ライフサイクルアプローチの組み合わせは、ビジネスとIT4つの主要な利益をもたらす。

 

1. ビジネス環境からの変化への要求に対応できる

2. 調整と価値の具体的な証拠を提供する

3. ITはコストセンターというイメージを打破する

4. ITを改革者、ビジネスを実現する人にする

 

BSMの概念と合わせてうまく構築されたITサービスマネジメントのプロジェクトは、多くの企業が市場で成功することを可能にしてきた。最近の最も素晴らしい実績は、北米の保険会社、リバティミューチュアルグループ(LMG, Liberty Mutual Group)である。24ヶ月間でLMG ITは顧客ロイヤルティ度と顧客離れの問題を調査した。ITSMBSMを通じて、「営業時間外」に実施していたITメインテナンス活動が投資家に悪影響を与えていたことがわかった。より詳細な調査で、多くの投資家はLMG ITが提供するサービスを使って、週末にWebでポートフォリオ管理を行いたがっていた。LMG ITはエンド顧客に利するように活動を再編成したところ、満足度は劇的に向上した。短期間にもかかわらず結果は驚くべきものだった。2006年第2四半期、LMG477百万ドルの四半期売上増加を発表した。この驚嘆の成長を2006331日に発表する際、会長兼社長兼CEOのエドモンド・ケリー(Edmund F. Kelly)は「この財務結果に非常に満足している。売上増は既存顧客の保持と新ビジネスの成長によってもたらされた」と述べた。明らかに、技術分野ではなく市場と顧客満足に注力したITLMGの成功をもたらした。

 

ステージ1:ビジネス上重要なITサービスを定義する

基本概念は単純である。サービスによってマネージするためには、サービスを定義しなければならないということである。エンタープライズ製品からITハードウェア・ソフトウェアに至る全てのサービス一覧を作るということではなく、主要なビジネスプロセス、ビジネス顧客と顧客層、それらを支える主要なITサービスを理解せよ、ということである。これらは顧客対面サービスと呼ばれ、企業にとって重要なビジネスアプリケーションを代表する。完璧に定義する必要はないが、IT組織がその価値を図るために最初に定義されなければならない。

 

ステージ2:企業リスクに基づいてITサービスを評価する
ITサービスの評価は次の重要なステップである。上位レベルでITサービスの定義をすることは、相対的な重要度を決めるために必要である。あるITサービスが組織にとっての利益だけでなく義務やリスクに関係する場合、ITサービス評価は本質的にはリスク管理ということになる。企業リスクに基づくITサービスの評価により、ビジネスと協働することで達成される客観的価値を生み出す。この評価はIT視点のサービスのランク付けに使われる。一般的にこの時点で、最も重要なサービスが周知され、全員が納得することになる。

 

ステージ3:ITサービス品質とIT組織機能を測定する
定義と評価に続き、ITサービスの品質を測定することになる。ITサービス品質はIT組織内では測定できない。内部測定でせいぜい予測できるのはキャパシティや可用性などユーザや顧客が経験するであろうことである。しかし、本当のITサービス品質は顧客満足度に基づいて主観的に測定するしかない。外部から組織に対して品質を測定するということは要求通りに提供されていないサービスを示すことになる。そのときにITマネージャは組織がそのサービスを提供する能力があるのかどうかを理解することに注意を向ける。この測定フェーズの成果物は何が求められていて何を提供しているのかのギャップ分析である。無論このギャップは改善すべき箇所を示す。ビジネスによって定義され、同意され、企業の成功に最も貢献する。

 

ステージ4:最大限の成功のためにビジネスの中でITサービス改善プロジェクトを正当化する

最後のフェーズはビジネスの中で改善プロジェクトを正当化することである。すべてのITサービス改善プログラムは正式なプロジェクトとして裏付けられなければならない。プロジェクト管理のためのオーバーヘッドやインフラストラクチャが必要ということではなく、ビジネスケースに注力する必要がある。定義・評価・測定フェーズで明らかになるビジネスのステークホルダーによって提供される関係ドキュメントやビジネス条件によって定義されるビジネスケースは重要である。このプロセスでは、わかりやすく記述されたドキュメントによって、求められている改善はなぜ重要なのか、もしその改善を行わなければ何が起こるのかが、ビジネス条件に則って説明される。ゴールや目的を明確にし、開始と終了を明記することによって、これまでのIT提案よりずっと強力なビジネスケースになる。

 

まとめ


ビジネスやITマネージャが克服すべき重要な障害に対し、ITIL
®はガイダンスを提供する。ITIL®は単独では存在できず、品質・プロジェクト管理・リスク・フレームワークのガバナンスなど多くの要素を必要とし、成功が証明された、これまでにない新しい方法でそれらの要素を結びつける。

ITIL®への投資は通常、本書を含む教育とトレーニングから始まる。経営陣のコミットに続き、ITIL®トレーニングは主要マネージャに対して行われ、彼らに求められる、戦略に対する理解と協力を得ることになる。戦略が開発され、現場のメンバのほとんどと主なビジネスパーソンに対してトレーニングが進められる。その成果は、組織全体の、何をいっしょに達成しなければならないのかについての共通理解となって現れる。

ITIL®の成功には、ツールに対する大きな投資は通常必要ない。しかし、機能やサイロ間のコミュニケーションを高めるためのツールへの投資は必要である。小さな組織を除き、包括的なまたは統合的なITサービスマネジメントのためのツールは必要である。

本書で説明したように、利点は69週間で実現される。長期的な利点は蓄積され続ける。

ITIL®の利点は数多くあり、書籍も多い。ITIL®を採用しようとすることは、企業がIT投資から競争優位を獲得する機会を与えることになる。IT組織の観点から言うと、ITIL®はより楽しく、かつビジネスへの貢献ができる職場環境を創り出す。

 

もっと詳細を知りたい方は


生産性を高め、効率を上げ、競争力を向上
する方法を知りたい方は、グローバルナレッジが提供する以下のトレーニングコースを検討いただきたい。

1
日でわかる!サービスレベルマネジメント入門

http://www.globalknowledge.co.jp/reference/course_details.aspx?Code=MGC0016G

 

ITIL(R) V3 Foundation BOOTCAMP (試験付)

http://www.globalknowledge.co.jp/reference/course_details.aspx?Code=MGC0017G

 

ゲームで体感・数値で実感 ITサービスマネジメントのツボ! ~ITSMシミュレーション~

http://www.globalknowledge.co.jp/reference/course_details.aspx?Code=MGC0018G

 

さらに詳しい情報をお求めの方は、www.globalknowledge.co.jp を確認いただくか、0120-009686に電話をいただきたい。グローバルナレッジのトレーニングコースは実践的なスキルや演習、現場ですぐに活用できるヒントを提供している。経験豊富なインストラクタが自らの経験に基づき、主要なコンセプトをわかりやすく解説するとともに、様々な状況に適用する方法を説明している。300以上のトレーニングメニューの中から、定期開催コースやオンサイトトレーニングなど、ニーズに適った方法を選択していただきたい。

 

著者について


Hank Marquis, Ph.D., FBCS CITP
は現役のITプロフェッショナルであり認定ITサービスマネージャであり、英国コンピュータ協会会員、アメリカ品質協会の上級会員でもある。Marquis博士は著名な実践家であり、講師である。グローバルナレッジにおいてMarquis博士は、グローバル顧客に対しビジネスと整合性のあるITマネジメントソリューションを開発するための業界のベストプラクティスを使う戦略策定の責任者を務める。著作も多数あり、国際会議やワークショップで講師を務める機会も多い。Marquis博士は大小IT組織での経験も豊富で、CIOCTO、上級アナリスト、ITSMコンサルティング・ディレクタ、ネットワーク技術者、などの役職を歴任している。APMG試験官、EXIN試験官、OGC/ITIL Qualifications Board ATO subgroup会員、ASQ Service Quality Body of Knowledge会員を務め, ITIL資格、ISO-20000資格、Six Sigma資格、COBIT資格、Project Management資格を保持している。

 

 

[ホワイトペーパー][2011年2月22日配信]

マネジメントの壺コラム
【ホワイトペーパー-1】 ITIL®ベストプラクティスを適用するための5つの挑戦

 

米国グローバルナレッジが発表しているホワイトペーパーの翻訳版をご紹介します。
ホワイトペーパーはPDF形式でもご覧になれます。「資料ダウンロード」ページよりご覧ください。

 

ITIL®ベストプラクティスを適用するための5つの挑戦

 

はじめに

 

IT Infrastructure Library (ITIL®) V3に記載されているベストプラクティスは、ITサービスマネジメントのデファクト・スタンダードがITIL®になっていること、また過去数年の間にIT組織の中で広まっていることで象徴されている。ITIL®のベストプラクティスに従うことの主な利点は、ITとビジネスをよりよく連携させ、ビジネスの達成目標を支援するためにより一貫したITサービスを提供し、コストを低減しエラーを防ぐことができる、という点にある。実際、ITIL®が提案することはみごとにシンプルである。

 

ITIL®の重要な部分は非常に基礎的ではあるが、複雑さを除外できないのも事実である。組織がITIL®のベストプラクティスを適用しようとするときには幾多の困難にぶつかり、結果として複雑さを増すことになるかもしれない。その複雑さをうまくコントロールできないと、コストの増大や導入期間の延長といった結果をもたらしかねない。その挑戦とは以下のようなものである。

 

経営陣のコミットメントの欠如

非効果的なスタート地点の選択

不必要な複雑さ

過剰な測定

非効果的なトレーニング

 

このホワイトペーパでは上記の挑戦それぞれについて説明し、実際の具体例を紹介し、克服するための現実的な方法を提示する。

 

 

挑戦その1:経営陣のコミットメントの欠如

 

経営陣のコミットメントの欠如がプロジェクト失敗の主な原因になる、とはよく言われることである。ITIL®のベストプラクティスの適用においても、経営陣のコミットメント無くしては何も始まらない。

 

経営陣のコミットメントはいろいろな形で示される。最も端的に示されるのは、時間やお金などリソースが割り当てられているかどうかである。特に大規模なITIL®ベストプラクティスの適用においては、経営陣のコミットメントは別の意味を持つ。

 

ITIL®を適用する場合には、急激な組織文化の変更が求められる場合が多い。従って、経営陣がそのことを理解し、単に時間とお金を割り当てる以上に、責任を持ってITサービスマネジメントの導入を進める過程に取り組むことが必要になる。時間とお金を割いただけではITサービスマネジメントの導入の成功は保証されない。

 

最も効果的なITIL®の適用は、時間とお金以上のことが必要であることをよく理解している経営陣によってリードされることが多い。組織内の全ての階層間で重要事項をよくコミュニケートできていることが肝要である。重要事項とは:

 

ITIL®とは何か?

なぜITIL®を適用しようとしているのか?

どのような効果が期待できるのか?

どのようにビジネスに貢献するのか?

 

これらの質問に答えるのは簡単である。組織内のあらゆる階層からの、これらの質問に繰り返し答える経営陣は、ITIL®の適用によって最も利する人達であり、自らの最終目標を達成できる人達だからである。

 

経営陣のコミットメントを示し維持するためには、いくつかの方法がある。

まず、ITIL®の適用に際しては適切な人員と予算を確保することである。能力があって創造的で効果的な人員が現場にいないことには、達成できるものは少ない。ある程度の初期予算を確保できなければ、ITIL®の適用を開始することも難しい。

 

次にその経営陣は、上記4つの質問が組織にとってどのような意味を持つかを考えなければならない。「ITIL®とは何か」という質問に対してITIL®の定義を示す、ということではなく、組織の中でITIL®がどのような意味を持つのかを明確にできなければならない。経営陣はさらに、なぜITIL®を推進するのかの理由について正直でなければならない。ITサービスマネジメントの導入の利点を、現実に即して考えておかなければならない。

 

例えば、組織は、変化によって引き起こされるビジネスの混乱を減らそうとしているのか?もしそうなら、変化によって生じる混乱は現実的に計測され明確にされなければならず、最終目標は達成可能なものが設定されなければならない。最後に、経営陣が行おうとすることが、ビジネスの達成目標を成し遂げるために、最終的にどのように貢献するのかを考えなければならない。

 

3つ目に、これら全てを組織のあらゆる階層に、複数の手段を使って伝達しなければならない。例えば、電子メールを使ったキャンペーンという形だったり、重要な項目については定例のミーティングの場を使って強調する、という形だったりする。ITサービスマネジメントの導入に成功した組織の多くは、何を行っているのか、なぜ行っているのか、どういう効果があるのかを伝達できている。伝達を成功させるためにはいくつかのテクニックがあり、成功した組織は、効果的な伝達を確実にするためのいくつかのテクニックを採用する必要性を認識している。そのテクニックとは、定例ミーティングで目的と進捗を議論することだったり、プロジェクトとその目的を効果的に「宣伝」することだったり、時には一対一のセッションでITIL®適用の目的と利点を再確認することだったりする。階層が異なれば最適な伝達方法も異なり、どの階層にどの伝達方法を用いるのが効果的かを決めることは経営陣に委ねられている。

 

 

挑戦その2:非効果的なスタート地点の選択

 

ITサービスマネジメントの導入に際し、組織がどこから手をつけるべきかということは、ITIL®コンサルタントのコミュニティでいつも白熱した議論になる。そのような議論はばかげており時間の無駄である。

 

現実には、どこからITIL®のベストプラクティスを実践するかは組織によって異なる。もし組織がITIL®のベストプラクティスを実践する適切な箇所を選んだなら、その初期投資効果によって、追加の改善に投資する余力が生まれる。

 

一般的な「知恵」によれば、「サービスカタログ」から始める組織が多い。しかし、ITIL®のベストプラクティスを実践するのに「サービスカタログ」から始めるのは多くの場合最悪であり、画期的な突破口にはならい。突破口とは、どのような選択肢があるかを吟味し、その選択肢に基づいて改善、コスト削減、売上増大などの効果を発揮するものを選ぶことである。

 

通常、サービスカタログを作る、というのは正しいスタート地点ではない。これにはいくつかの理由があるが、まず、ほとんどの組織は既に、ビジネスに対して提供しているサービスについて、あまり外れない程度に理解している、ということがある。この理解は様々な形態をとるが、組織内にこの理解がまったく存在しないということはあり得ない。次に、ITIL®ベストプラクティスの実践の初期段階でサービスカタログを作ろうとするのは早すぎるということがままある。というのもIT部門は自分たちをサービス提供する存在としてではなく、支援する存在として捉えがちだからである。3つ目に、サービスカタログを作成するだけでは投資に見合った納得感のあるような効果は得らないが、他のベストプラクティス分野には明確な投資対効果がある。

 

ではいったい、組織はどこからITサービスマネジメントを導入したらいいのだろうか。ITIL®ベストプラクティスの実践は、組織が重大な問題を経験したことのあるところ、またはコストをコントロールしたいところから始めるのがよい。

例えば、重要なITシステムやアプリケーションの停止といった問題を抱えている場合には、インシデント管理または可用性管理から始めるのがよい。サプライに支払う費用をコントロールしたいのであれば、サプライヤコントロールから始めるのがよい。

もし顧客やユーザーの要求を処理するのに過大な費用を払っているのであれば、要求実現から始めるべきである。重要なのは、ITIL®というのは道具箱のようなものであり、問題解決のためのさまざまな道具を提供してくれるもの、と考えることである。賢明な組織は最も重要な課題は何かを見極め、ITIL®ベストプラクティスの実践を検討するものである。言い換えれば、最大の投資対効果をもたらすベストプラクティスの導入を決めるべきである。

 

ITIL®ベストプラクティスを実践するときに最も大きな利益をもたらすスタート地点はギャップ分析である。

ギャップ分析では、その組織のプロセスや活動が、ITIL®で定義するそれと比較することになる。ギャップ分析は以下3つを導く。

 

ITIL®ベストプラクティスを凌駕している分野

ITIL®ベストプラクティスより劣っている分野

ITIL®ベストプラクティスに合わせることができる事項のリスト

 

ギャップ分析が重要な理由はいくつかある。まず、既に組織がベストプラクティスの要件を満たしている分野を認識することで、効果の薄い無駄な作業を避けることができる。次にITIL®ベストプラクティスの実践で組織が最も利する分野が明確になることである。3つ目はITIL®ベストプラクティスの実践のために、ギャップ分析で明確になった事項に優先順位をつけることができることである。

ITIL®ベストプラクティスを実践するための唯一のレシピなどは存在せず、それを求めるのは時間の無駄である。

 

挑戦その3:不必要な複雑さ

 

「難解な言葉で無知を隠す」とはRobert Heinleinの言である。ITIL®が手引きを示す多くのプロセスのうちのひとつがキャパシティ管理である。キャパシティ管理は、現在および詳細のビジネスニーズに対し費用を正当化できるキャパシティが十分に存在するかどうかに関わる。キャパシティはいろいろな形態をとる。巨大なコンピュータシステムのキャパシティだったり、市場ニーズに対応するキャパシティだったり、ユーザー個々のデスクトップPCのキャパシティだったりする。様々なレベルのそれぞれでキャパシティを測定したり、管理したりするのは有益かもしれないし、無益かもしれない。

 

ITIL®ベストプラクティスを比較的大規模に実践した例では、その組織はあるサービスを「社員デスクトップ」と名づけた。社員デスクトップには、この組織が管理する40000台の個人用デスクトップのような当たり前のものを含んでいた。ITIL®ベストプラクティスの実践のためにこの組織に雇われたコンサルタントの一人は、「社員デストップ」では全ての40000台のデスクトップのキャパシティを測定・管理する必要があることを組織に納得させるために苦労した。説得の理由として、ITIL®によればサービスプロバイダは提供するサービスとそれを可能にする技術を測定・管理することになっているから、というものだった。この組織はコンサルタントの言ったとおりに、達成不可能で無駄な作業を喜んで進めたが、最後には測定するためのコストが、得られる利益を大きく上回ることに気付いて途中で止めた。

 

上記は、ITIL®ベストプラクティスの実践に対する理解不足と、常識を取り入れることに失敗した例である。この例で取り上げたコンサルタントは不適切だったと言わざるを得ない。自分が適任でないことを隠蔽するために、組織を無駄な方向に向かわせた。まさに難解な言葉で無知を隠したばかりでなく、無能ぶりも隠したのである。40000台のデスクトップPCのキャパシティを測定することは、いつくかの理由でまったくくだらないことである。1つ目の理由は、測定すること自体がデスクトップPCの性能を阻害することであり、ひいてはビジネスに多大な影響を与えるということである。2つ目は、その測定結果を集めたところで、組織がITサービスを効果的に提供することについて、何の価値ももたらさないということである。

 

ITIL®を適用するに際しては、不要な複雑さや難解さをなんとしても排除すべきである。ITIL®は常識を壊すようなことを求めてはいないことを認識すべきである。むしろ、ITIL®は常識を抱合すべきである。

通常、最もシンプルなソリューションが最良のソリューションである。もし何か過剰に複雑に見えるようなら、おそらくそのまま続けることを再検討すべきである。ITサービスマネジメントの実践を成功裡に、有益なものとして完了するために、不必要な複雑さを避けるべきである。そこでITIL®では、スコープと複雑さをコントロールする方法として、デミングサイクルを常に推奨している。

さらに複雑なソリューションを提案することが、ビジネスの観点からITを賢いものとは見えなくしてしまう。良く言えばITが手の届かないもの、と思わせるかもしれないし、悪く言えばITが独善的なまでに複雑だと思わせるかもしれない。もっともシンプルで伝えやすいソリューションが、最も測定可能で望まれる結果を生むことになる。ITIL®の適用もこの経験則に従うことができるし、従うべきである。

 

 

挑戦その4:過剰な測定

 

ITIL®のようなベストプラクティスは、組織のプロセスがうまく回っているか、いかにサービスが提供されているかのデータを集め定期的にレビューすることに重きを置きがちである。組織がどの位置にありどこに向かっているのか、これまで何を達成したのか、ということを理解するために測定しなければならない、と言うのである。

 

測定が必要なのは確かだが、過剰な測定を行う傾向があるのも確かである。われわれはこの傾向を何度も目にしてきた。ときに組織は、ビジネスを支援するためのITサービスが向かうべきところとは無関係で無駄な事柄の測定に無秩序なまでに時間と費用をかけることがある。

良い知らせは、日々の生活の中で効果的な測定の実例を多々見ている、ということである。成功の条件である測定が、プロセスや活動の成功を保証するために毎日行われていることに気付かないことが多い。最もわかりやすいのは、自動車における測定結果収集の例である。

自動車では、A地点からB地点へ移動することを定期的に保証するために測定する項目はいくつもあるわけではない。どれくらい早く移動しているかを知るスピードメータや、どれくらいの距離を移動できるかを知る燃料計など、数少ない。

しかし、各ディスクブレーキの温度を測定することはない。なぜか?そのようなありふれた詳細を測定することは、成功するための重要な要素ではないからである。言い換えれば、意味がないのである。

 

自動車の運転は複雑な活動ではあるが、一つかみ程度の測定でも十分遂行できるのである。

組織がサービスマネジメントプロセスについて、自動車と同様のことができない理由は何もない。

言いかえれば、誰も気にしないような複雑な測定結果を集めるべき理由はどこにもない。ITIL®も無駄で無益な測定を推奨しない。

過剰な測定という危険は、時間や費用の不足という結果になって表れやすい。組織は測定や報告のツールを高額な料金を支払って購入するが、既に組織内に同様のツールがあることは見落としがちである。さらに多大な人員を投入してうつくしい魅力的なダッシュボードを作るが、その価値はすぐに忘れ去られる。このような行動は何の価値も生み出さないので、避けるべきソリューションである。

ITIL®はプロセスのパフォーマンスを理解することを支援するような測定だけが必要であることを明確にしている。最良の測定基準は、SMARTと呼ぶ至極単純な経験則に従うことが多い。

 

SMARTは以下の頭文字から成る略語である。

Specific(具体的) - 測定基準は組織が測定しようとすることと関係している

Measurable(測定可能) - データを収集できる

Actionable(行動に移すことができる) - 明確で明瞭で理解しやすい

Relevant(関係がある) - 測定基準自体が重要である

Timely(時宜にかなった)- 測定基準には何かしら、時間に関連した要素がある

 

優れた測定基準はSMARTの定義の大部分に適う。

過剰な測定の誘惑に抵抗せよ。不必要なことを測定することには何の価値もなく、組織に対して提供する価値以上に大きなコストを発生させることになる。

 

 

挑戦その5:非効果的なトレーニング

 

ITサービスマネジメントとITIL®には、他のIT技術同様、様々なトレーニングの機会がある。トレーニングにはピンからキリまである。

 

ITIL®のようなトレーニングに参加するのはITIL®が論じるベストプラクティスについてある程度の知識がり、本質的に理解している人達ではなく、ましてや組織が効果的にITIL®に従うためにどうしたよいかを理解しているような人達でもない。

このため、トレーニングの一部は、組織にとってベストプラクティスが意味を持つ地点まで引き上げ、ベストプラクティスを組織内でどう活用するかを理解させるためのものにならざるを得ない。組織内の多くの人達にとってはベストプラクティスに関する基礎知識があればよく、ITIL®ファンデーションコースに参加することで達成できる。ITILファンデーションコースの目的は、ITIL®プロセスに関する基本情報と、誰もが同じことを同じ用語で語れるように用語の定義を教えることである。

 

組織内の何人かは、より上級のITIL®トレーニングに参加することが必要になる場合がある。ケーパビリティとライフサイクルを含むバージョン3のトレーニングが適当である。上級のトレーニングでは、ベストプラクティスに関するより深い知識と、より現実的にITIL®を適用する方法を教える。

IT業界に長くいる人であれば、トレーニングの効果は多分に変動するため、判断がむずかしいことに気付いているだろう。しかし、よりよいITIL®トレーニングを選択するための経験則というものがある。

 

最初でかつ最重要なのが、インストラクタは単にトレーニングで講義を行うだけではないということである。最良のIITL®インストラクタとはITIL®ベストプラクティスの実践に過去、または現在も関わっている人である。彼らはいろいろな業界でいろいろな形でITIL®ベストプラクティスが実践されてきたのを見て来ている。通常、彼らはITILの実践が状況によることを経験上よく理解しているため、独りよがりなアプローチをとることはない。

こういったインストラクタは、トレーニングコースの中でベストプラクティスの重要な点を有用な実例に即して説明することができる。ITIL®に関する質問に答えることができ、ITIL®が説明する事項が実際の状況ではどう扱われるべきなのか、実例を挙げて説明することができる。

 

2つ目に教材は公式のITIL®書籍から抜粋したPowerPointの寄せ集めのようなものであってはならない。むしろ、そのトレーニングコースでは何を教えるのか、詳細に文章で記載されている教材の方が効果的な場合が多い。そのような教材はインストラクタの経験と合致していることが多く、自身の深い理解に基づいて受講者からの質問に答えることができる。

 

3つ目に、ITIL®トレーニングを提供することを正式に認定されている機関を探すべきである。それらの機関は厳格な基準に合格して質の高いトレーニングを提供できることが保証されているからである。ITIL®の世界ではそのような機関を「認定トレーニング機関」と呼び、提供資格を持つインストラクタを「認定インストラクタ」と呼び、トレーニングコースで使われる教材は基本的な品質要求を満たすものであることが保証されている。簡単に言うと、効果的なITIL®トレーニングの前提は、認定トレーニング機関で認定教材を使って認定インストラクタが提供していること、ということになる。

最後に、本当に真剣にIITL®の利点を伝えようとしているトレーニング機関は多くない。そのようなトレーニング機関では、通常のITIL®カリキュラムを補完するようなトレーニングコースを開発し、ITIL®ベストプラクティスを適用するための実践的な情報を提供しようとしている。コースの内容を熟考して教材を開発し、提供できるインストラクタを厳選している。

 

トレーニングに非常に大きな出費をしながら、その投資に見合わないような肯定的な効果しか得られない、というのはよく聞く話しである。しかし、上述したような選定基準でトレーニング機関を選択することによって、より効果的なトレーニングを採用できる確度が高まる。

 

 

まとめ

 

ITIL®ベストプラクティスを実践するといった重大なプロジェクトには挑戦がつき物である。例えば以下のようなものである。

 

経営陣のコミットメントの欠如

非効果的なスタート地点の選択

不必要な複雑さ

過剰な測定

 

非効果的なトレーニング

これらの挑戦があることを無視するのではなく、よく検討して対処することによって、ITIL®の実践を成功裡に終わらせることができる確率が高まる。

 

ITIL®およびIT Infrastructure Libraryは英国や他国のOffice of Government Commerceの登録商標である。

 

 

もっと詳細を知りたい方は

 

生産性を高め、効率を上げ、競争力を向上する方法を知りたい方は、グローバルナレッジが提供する以下のトレーニングコースを検討いただきたい。

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著者について

 

Michael Scarborough 氏は金融業界を中心にIT関連の業務を20年以上担当してきた。氏はITIL®の専門家であり、ITIL® V2およびV3の認定インストラクタでもある。氏は現在、Resulta Group LLCのマネージング・パートナーを務め, 金融・製造・医薬・教育業界の顧客がITIL®ベストプラクティスを適用し、サービス指向アーキテクチャ技術の導入することを支援している。

 

[ホワイトペーパー][2011年2月22日配信]

マネジメントの壺コラム
第4回: ITIL®で何ができるの? その2(プロセス編)
執筆:鈴木 寿夫

ITIL®で何ができるの? その1(機能編)」では、ITIL® v3のベストプラクティスに書かれている4つの機能(サービスデスク、技術管理、IT運用管理、アプリケーション管理)の解説を交えながら、ITIL®で何ができるのかについて考えました。

 

今回は、機能を支える重要なプロセスについて解説を交えながらITIL®で何ができるのかについて考えていきたいと思います。

 

まず、プロセスとは何でしょうか?プロセスは、過程もしくは活動ですが、その活動を行うきっかけ(トリガ)があります。さらに、プロセスを実行するためには、何らかのインプットが必要であり、そのインプットをもとに活動をすることで、アウトプットが得られます。

 

例えば、料理をするプロセスでは、トリガとしてはお腹が空いて何か食べたいので、料理をすることになります。その料理のプロセスのインプットとしては、レシピがあります。そのレシピに従って、食材を調達し、食材を調理することで、おいしい料理がアウトプットとして得られます。

 

ただし、このプロセスが定義されておらず、いつも行き当たりばったりでアドホックに行われていたらどうなるでしょうか?いつも異なる料理になったり、料理の味や品質にバラつきがあったりすることになります。それは、マネジメントされていないということになります。第1話でもマネジメントとは何かについてお話しましたが、マネジメントには必ず最終目標があり、そこに到達できるように測定して改善をすることを意味します。今回の料理の例でいえば、料理をするときのプロセスをマネジメントして、常にそのプロセスが最終目標である「短時間でリーズナブルな、おいしい料理を作り、空腹を満たす」ということであれば、この目標に向かってどんな料理を作る場合にもいつも一定の品質でおいしい料理を短時間でリーズナブルに作ることを目指します。そして、料理のプロセスを測定することで、何か改善する機会がないかを測定しながら、改善アプローチを行うことがプロセス・マネジメントになります。

 

ITサービスの提供においては、どうでしょうか?前回お話をしたサービスデスクという機能は、お客様に対する窓口機能を提供し、いろいろな問合わせやエラーなどへの対応を専門のチームで行っています。このサービスデスクでは、常にお客様に満足いただけるような対応を行うために、人によって対応が異なったり品質がバラついたりしないように、インシデント管理プロセスというマネジメント・プロセスが実行されることになります。

 

このインシデント管理プロセスでは、お客様からの問合わせやエラーをトリガとして、問合わせ情報やエラーの情報をインプットとして活動を行います。このプロセスでは、どんな問合わせやエラーでも、サービスデスクスタッフの誰が受けても同一の対応ができるように、あらかじめプロセスを定義し文書化しておきます。そして、常にその対応が文書化されているプロセスと差異なく改善する機会がないかどうかを測定しながら、継続的にプロセス改善に取り組みます。それがまさにマネジメントになります。インシデント管理プロセスの最終目標は、「迅速に通常のサービスに回復させる」ことを目標として活動をします。

 

  第4回 図v2.png 

 

その結果、インシデントに対して迅速に対応がなされ、サービス停止や使い方がわからないことにともなうビジネスインパクト(ユーザの仕事の生産性の低下や機会損失)を減らすことができ、ビジネスに価値をもたらすことができます。

このように、ITIL® v3ではインシデント管理プロセス以外にも全部で26プロセスがベストプラクティスとしてあり、それぞれの管理プロセスには最終目標が設定され、ビジネスへの価値が書かれています。

 

では、ITIL®では何かできるのかわかっていただけましたでしょうか?ITIL®では26のプロセス・マネジメントを中心として、常にビジネス環境の変化や変化へのスピードが求められるなかで、いかに顧客が望む価値ある高品質なサービスを提供し続けることができるか、ITサービスプロバイダとしての専門の能力を向上し競争力のあるサービス提供ができるかを継続的な改善を通じてできるようになります。

 

 

 


 

鈴木 寿夫 (すずき としお)

DIG2ソリューションズ株式会社 代表取締役
itSMF Japan SLM分科会 副座長


ITIL® Expert / ITIL® Service Manager, ITIL® Intermediate SOA/PPO/RCV/OSA/MALC, ITIL® Practitioner IPRC, COBIT Foundation, PMP®

1993年日本ディジタル イクイップメント コーポレーション(現日本HP)入社。フィールドエンジニアから、教育研修ビジネスの立上げ、運用アウトーソーシング、ITサービスマネジメント認定教育ビジネスのリードを行う。
2008年12月DIG2ソリューションズを設立し、ITサービスマネジメントの教育およびコンサルティングを行い、お客様のITサービスマネジメントの実践を支援している。



[ITIL(R)][2011年2月21日配信]

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